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あなたが想像する「避難」や「避難所」は、コロナ禍で変わるかもしれない。感染予防を考えた避難生活とは

新型コロナウイルスが流行する中でも起こり得る災害。多くの人が集まる避難所でクラスター(集団)感染を生まないために対策を進める自治体や専門家に話を聞きました。

東北地方が6月14日に梅雨入りし、日本列島の大部分に雨の季節がやってきました。

これから秋にかけて、大雨や台風などの災害の発生が予想されます。そして大地震はいつでも起こり得ます。

新型コロナウイルスの影響が続く中でも発生し得る災害に対して、政府や自治体はどのような対策や備えをしているのでしょうか。

多くの人が集まる避難所で「クラスター(集団)感染」を生まないために、準備を進める自治体や専門家に話を聞きました。

水谷嘉浩さん提供

プライバシー空間を保ち、飛沫感染を予防するためのパーティションや簡易ベッドを体育館に設置した様子

「密を避ける避難」。政府の方針は?

大雨や地震などで自宅にとどまることが危なくなった場合、より安全な場所へ「避難」することが命を守りますが、コロナ禍では「密」を避ける避難が重要となってきます。

まず、政府がコロナ禍での災害対策に対して、どのような方針を打ち出し、自治体へ呼びかけをしているのかを見てみましょう。

内閣府や消防庁は4月上旬、全国の自治体の防災担当者らに向けて、コロナ禍での避難・災害対応について、通知を出していました。

通知では、現在、指定避難所とされている学校等以外にも、ホテルや旅館なども活用して「可能な限り多くの避難所を開設すること」や「親戚や友人の家などへの避難を検討すること」が要請されています。

これは、できだけ3密の状態を生まずに、多くの場所に分かれて避難をする「分散避難」を実現するための対策です。

内閣府・いらすとや・BuzzFeed

また、避難所運営においても、感染を広げないために「避難者の健康状態の確認」をすることや、「換気の実施、スペースの確保」などの徹底が呼びかけられています。

これらの政府から自治体への呼びかけなどを経て、内閣府が災害を近年に経験した全国110の自治体(47都道府県・63市町村)にヒアリング調査をしたところ、対象となった全自治体で、ホテル・旅館や学校施設の教室なども活用し、新しく避難所を設けることを予定していることが分かりました。

また、ほとんどの市町村で、飛沫感染などを防ぐための、パーティションや段ボールベッド、マスク、消毒液などを備蓄していたり、今後さらに購入すると答えました。

他にも、コロナの感染症対策を踏まえた避難所運営マニュアルを作成したり、避難所運営の訓練を実施したりした自治体もありました。

時事通信

仕切りテントを導入する自治体も。写真は茨城県水戸市で避難所になった市立飯富中学校

「コロナ禍の災害、事前の対策が全て」岐阜県の対策

BuzzFeed Newsは、コロナ対策を念頭においた避難所運営ガイドラインを作成するなどの対策を進める、岐阜県の危機管理部防災課を取材しました。

岐阜県によると、新型コロナに関する県の専門家会議でも、コロナ禍での災害対応のガイドラインを作るべきとなり、3月下旬ごろから既に対策の検討をはじめたそうです。

5月上旬には、現行の岐阜県避難所運営ガイドラインに加えて、コロナ感染症対策編を公開しました。

BuzzFeed / Via pref.gifu.lg.jp

ガイドラインでは、住民への周知事項や備蓄など災害に備えた事前準備のチェックリストや、感染症対策を考えた避難所のレイアウトや物品支給方法などが詳細に説明されています。

また、発熱など体調不良がある避難者がいた場合に別室や隔離した場所に誘導できるよう、受付では健康状態チェックカードへの書き込みをお願いする仕組みです。

県内に住む、日本語に不慣れな外国人住民用に、チェックカードは英語、中国語、タガログ語、ポルトガル語でも作成され、ウェブ上に掲載されています。

岐阜県 / Via pref.gifu.lg.jp

英語版の避難者カード(左)と中国語版の健康状態チェックカード

危機管理部防災課の担当者はこう語ります。

「避難所はもともと3密・過密な状態です。コロナの状況下ではクラスター感染を招きかねない状態になるということで、ガイドラインを作成することになりました」

「コロナ禍の災害は、事前の対策が全てといってもいいくらい、準備が大切です。住民の方に避難するということはどういうことかなど理解してもらったり、ガイドラインを作成、周知したりしています」

感染症や防災の知識が重要となってくるため、ガイドラインは、防災に取り組むNPOや、感染対策、防災の専門家などの協力を得て作られたといいます。

岐阜県内の市町村は、このガイドラインに沿って感染症対策を考えた災害への備えを行い、また実際に災害時、避難所を運営する際などもガイドラインの情報を活かして感染症対策ができる仕組みです。

岐阜県 / Via pref.gifu.lg.jp

ガイドラインでの避難所のレイアウト例(左)と物品支給のレイアウト例

分散避難では、1つの場所に多くの人が集まることをできる限り避けるべきとしています。そこで、学校での避難所の開設は基本的に体育館のみとなっているところを、教室も利用もできるように教育委員会に協力依頼をしているそうです。

体育館だけでなく教室を利用することで、収容できる人数のキャパシティーも増え、個室での分散した避難ができるようになります。

体育館や教室では、家族ごとに2メートルなどの間隔をあけたり、体調が良くない避難者はパーティションなどで区切ったりし、感染防止の対策をするということです。

新たに間仕切りシステムの備蓄も。神奈川県の対策

避難所での飛沫感染などを防ぐために、神奈川県や新潟県などの自治体は、カーテン状の間仕切りシステムの活用を決めました。

コロナ禍での災害で迅速に対応できるよう、間仕切りシステム50セットを備蓄した神奈川県の災害対策課に話を聞きました。

時事通信 / 神奈川県提供

神奈川県が備蓄した避難所用間仕切りシステム

担当者によると、元々、避難所でのプライベート空間・生活空間の確保は問題とされていたため、2019年12月に、県はNPO法人「ボランタリー・アーキテクツ・ネットワーク(坂茂代表理事)」と、災害時の間仕切りと段ボールベッドの提供について協定を結んでいました。

しかし今回、コロナ禍の災害への備えを考えた時に、飛沫感染などの防止のため、災害時に迅速に配備できるよう、県は間仕切りシステムを計50セット、備蓄したといいます。

「以前から協定を結んでいましたが、災害時でも間仕切りセットなどの搬送に数日かかるため、それまでの緊急用として、コロナ禍での自然災害対策で最低限の備蓄をすることにしました」(担当者)

この間仕切りシステムは、四方と高さが2メートルで紙製パイプと布で、簡単に組み立てることができるといいます。

時事通信

間仕切り・パーティション設置の注意点は?

コロナ対策をした避難所設営については、専門家も注意点などを呼びかけています。

一般社団法人「避難所・避難生活学会」は、コロナ禍での避難所設置について「もはや想定外のリスクではない」と早急な対策を呼びかけ、避難所内の設営についても、注意点を公表しています。

段ボール箱製簡易ベットを用いた場合の避難所のレイアウト例や3密を避けるための注意点などを、学会のウェブサイト上に掲載しています。

避難所・避難生活学会 / Via dsrl.jp

避難所での段ボールベッドを用いたレイアウト例

避難所では、「簡易ベットとパーティションを用いてゾーニング」することで、飛沫感染を防止します。

また、雑魚寝でなく簡易ベッドを使用することで、粉塵による咳を抑制する効果があるといいます。

この団体では、就寝時の飛沫拡散防止には、パーティションの素材は「段ボール等、板状のものを推奨」としています。

水谷嘉浩さん提供

実際、体育館にパーティションや簡易ベッドを設置した様子

パーティションや簡易ベッドの高さや間隔については、このような点を指摘しています。

1:パーティションが、簡易ベッドに座った成人避難者の頭の高さより確実に高いこと(140cm以上。パーティション内で発生した飛沫が、外に拡散するのを防ぐ事が目的)

2:パーティション内の被災者を必要時に観察できる高さであること(150cm以下。避難所運営者や看護師、保健師らが、被災者の健康状態と安全を確認しやすくすることが目的)

3:簡易ベッドが内部に入る長さ、約2メートルであること(必ず簡易ベッドを使用し、雑魚寝を防止することが目的)

4:備蓄したパーティションと同じ規格のものが災害時にも迅速に追加供給できること(現場での運用上の混乱や作業負担増を回避することが目的)

水谷嘉浩さん提供 / Via dsrl.jp

パーティションは被災者を必要時に観察できる高さ

「避難所でのQOLを見直すきっかけに」

避難所・避難生活学会の水谷嘉浩さんはBuzzFeed Newsの取材に対し、これらの注意点についてこう指摘します。

「2メートルの高さなどのパーテションもありますが、高さに関しては、保健師らが被災者の健康状態などを観察できるように150cm以下である必要があります。特に、新型コロナに感染していた場合、急激に状態が悪化する場合もあります」

また、水谷さんは今回コロナの感染予防のために自治体がパーティションなどを揃えていることについて、「避難所でのQOL(生活の質)を見直すきっかけになる」とも話しました。

これまでも、避難所となった体育館での雑魚寝や、パーティションなど間仕切りがないプライバシー問題など、様々な課題が指摘されてきました。

AFP=時事

2018年発生の豪雨の避難所。雑魚寝状態になっている。(資料写真・写真はぼかし加工をしています)

水谷さんは段ボールメーカー・Jパックス(本社・大阪府八尾市)の経営者でもあります。2011年の東日本大震災で、避難所で低体温症で亡くなる人がいることにショックを受け、段ボールベッドを考案しました。

水谷さんは、パートナーシップを結んだ他メーカーに設計図を無償で提供し、さらに各地の自治体と防災協定を結んで、災害時には迅速に避難所に納入する仕組みを整えてきました。

コロナ禍での災害対策で各自治体は、感染防止対策として簡易ベッドやパーティションを導入しています。

水谷嘉浩さん提供

一方、前述の内閣府による自治体への調査では、大半の自治体が、新しい避難所の設置を検討したり、パーティションなどの備蓄を購入したりしていると回答していましたが、水谷さんは「進んではいるけども、手放しでは喜べない」とも話します。

水谷さんがそう話す理由は、各自治体の資機材の「格差」にありました。

「資機材の標準化がされていないので、自治体によって質も種類もバラバラで、運用に障害がでます。災害発生時、特にコロナ禍では(感染防止のパーティション設置なども)一刻を争う事態ですが、同じものを揃えられないと、組み立てなどにも時間がかかります」

「簡易ベッドなどでも予算の関係で安い物を買う自治体もあり、現場で使い物にならないという声もありました。国で統一するべきですが出来ておらず、質もバラバラで、格差が開いてきています」

自治体の資機材など防災対策の格差を生まないためにも、国として、パーティションなども揃えて配備すべきだと指摘しました。


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