共同声明を発表したのは、「移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)」、「外国人人権法連絡会」、「人種差別撤廃NGOネットワーク(ERDネット)」、「のりこえねっと」、「反差別国際運動(IMADR)」の5団体。
今回の新型コロナウイルスの影響で困窮する外国人を支援する、緊急支援基金を設置した団体もある。
1:「奨学金と受給との結びつけ」すべきでない
外出自粛で経済活動が停滞し、日本人・外国人関係なく収入減で苦しむ学生が多い中で、まず声明が指摘したのは、この緊急給付金の受給予定人数の「少なさ」だ。
文科省によると、今回の緊急給付金の総額は約530億円。給付金の対象とされている全国の大学と専門学校などの学生総数は約370万人。1人当たりの受給額などから、文科省は受給できるのは43万人程度とみている。これは全体の1割強だ。
生活費などを稼ぐためのバイトのシフトも減少する学生も多い状況で、「非常に少ない」と声明は指摘している。
非留学生用の要件では、自宅外で生活し、家庭から多額の仕送りを受けておらず、生活費・学費に占めるアルバイト収入の割合が多いこと、またコロナの影響で家庭やバイトの収入が減少したことの他、奨学金に関する要件がある。
現在、第一種(無利子)奨学金等を貸与されているか、貸与を受ける予定の学生に限るなどといった要件だ。声明は「新型コロナによる困窮にたいする支援である『給付金』を、従来からの奨学金の受給と結びつけるのは不合理」と指摘し、奨学金に関する要件を削除すべきとした。
2:留学生への成績基準設置は「日本の留学生政策の利用主義」表す
声明は次に、緊急給付金の留学生用の要件に、成績基準が設けられたことについて「留学生のみに限定した要件を撤回」することを求めている。
要件では、留学生に対して「学業成績が優秀な者」などの条件があり、成績評価係数(上限3)で2.30以上という成績基準が明記されている。文科省によると、2.30以上を保持しているのは「上位3割程度」だという。
日本学生支援機構(JASSO)が2018年1月に、私費外国人留学生7千人を対象に実施した調査では、回答者の75.8%がアルバイトで働いていることや、学費・生活費などにあてる収入の半数前後がバイト収入であることなどが明らかになっている。
人手不足に悩んできた飲食業やコンビニをはじめとするサービス業などは、安価な労働力として留学生を積極的に雇い入れてきた現状がある。
声明では、「日本政府は、2008年に『留学生30万人計画』を掲げて留学生を積極的に受け入れる政策をとってきた」一方で、給付金要件に成績基準を設けていることは、「『国際貢献』とは程遠い日本の留学生政策の利用主義」だと批判した。
「留学生の困窮状況と学業成績は関係がない」「明らかな国籍差別」として、撤回を求めている。
3:朝鮮大学校なども対象外「等しく学ぶ権利の保障を」
声明が3つ目に指摘するのは、緊急給付金の対象校についてだ。
今回、文科省によると給付金の対象は、国公私立大学(大学院を含む)・短大・高専・専門学校(留学生・日本語教育機関を含む)の学生。
受給の対象となるのは、国公私立大学と高等専門学校など学校教育法上のいわゆる「一条校」と、専修学校のうち専門課程をおく「専門学校」となっている。
それ以外の、朝鮮大学校などの「各種学校」が対象から外れていることについて「朝鮮大学校、外国大学日本校には、大学院の課程をもつものもあり、やはり対象とすべき」と指摘した。
「外国大学日本校」には、米・テンプル大学日本校、上海大学東京校などが含まれる。声明では、1999年8月には文部省(当時)は、学校教育法施行規則を改正し、各種学校である朝鮮大学校やテンプル大学日本校などの修了者にも「日本の大学の大学院入学への道が開かれた」と説明している。
「日本が加盟している子どもの権利条約、社会権規約、人種差別撤廃条約は、日本に住むすべての子どもたちに国籍、民族などで差別することなく等しく学ぶ権利を保障することを求めている」(声明)