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「恐れていたことが起きた」警察署に駆けつけた弁護士がそう話す理由。日本は五輪期間中の難民申請に正しく対応できるか

ウガンダの重量挙げ選手、セチトレコ氏が難民申請の意向を示していましたが、説得され帰国しました。難民を支援する弁護士らは、政府や大会組織委に、五輪選手や関係者が難民申請をした場合、適切な対応を取るよう求めました。

東京オリンピックのために来日していたウガンダの重量挙げ選手、ジュリアス・セチトレコ選手が今月、一時失踪し、4日後に保護された。

報道によると、選手は警察署で難民申請を希望していたが、大使館員などに説得されてウガンダに帰国した。

難民申請などを専門とする弁護士が警視庁渋谷署に向かい、セチトレコ選手との面談を申し入れていたが、警察は取り次がなかったという。

この事態を受け、全国難民弁護団連絡会議(全難連)が7月22日、五輪選手や関係者が難民申請をした場合は適切な対応を取り最大限の援助をするよう、日本政府と大会組織委に申し入れた。

Dean Mouhtaropoulos / Getty Images

ウガンダの重量挙げ選手、ジュリアス・セチトレコ選手。写真は2018年にオーストラリアで開催された大会。

申入書では、入管以外の公的機関が五輪関係者の難民認定申請の希望を把握した場合、入管での難民認定申請の機会を保障するべきだと指摘。

ほかにも、弁護士や適切な難民支援団体への連絡、代理人となる可能性がある弁護士や支援団体職員が面会を申し込んだ場合、その機会を設けることなどが必要であるとした。

また、難民申請の理由として母国での政治的な問題や迫害などの背景がある可能性も高いことから、「難民申請の意向を示した場合は、本国大使館の職員と直接の接触をさせないこと」も求めた。

6月には、サッカー・ワールドカップのアジア二次予選のために来日していたミャンマーのピエリアンアウン選手が、母国での軍事クーデターを批判して日本に難民申請をした。

同選手は「緊急避難措置」で半年間の在留資格が認められた。Jリーグ3部のYSCC横浜に練習生として迎えられ、ミャンマー人初のJリーガーを目指している。

8月8日まで開催される東京オリンピック・パラリンピックでも、難民申請者がでてくる可能性もあり、全難連は大会組織委や政府に対し、体制の整備を求めている。

「非常に恥ずかしい対応」「二度と起こらないように」

Sumireko Tomita / BuzzFeed

会見で話す児玉弁護士(左)

申入書に関して全難連は27日、都内で会見を開いた。

報道でセチトレコ選手が難民申請を希望していると知り、英文での難民申請書類などを持って警察署に駆けつけたという児玉晃一弁護士はこう話した。

「難民選手団を受け入れて五輪をしている国として、非常に恥ずかしい対応です。二度とこんな対応が起こらないようにしなければならない」

「(事前合宿の)ホストタウンの市役所や警察の方が難民のことについて分からないのは仕方ない。しかし、分からないのであれば、専門家にコンタクトをとるべきです。少なくとも、難民申請の意向を示した人を大使館の人に会わせるということはとんでもないこと」

現地メディアによると、セチトレコ選手は帰国から約5日間にわたりウガンダの警察当局に身柄を拘束され、日本時間の7月28日夜、解放された。

児玉弁護士は「政治的なことをした人が本国に帰ったら、どのようになってしまうかということを想像してほしい」「弁護士にも会わせないという対応は完全に間違っていると思います」と指摘した。

署で対応した警察官には「弁護士が来ていることを伝えてもらえたのか」と聞いたが、それも答えられないと言われたという。

日本の難民認定率は例年1%未満と、各国と比べても極端に低い。難民申請の手続きが複雑だったり、一次審査の面接に弁護士の同席が認められていなかったりと、問題も多いのが現状だ。

児玉弁護士は「日本は『難民鎖国』といわれている実態がありますが、まさに今回、恐れていたことが起きてしまいました」と話した。

処罰受ける可能性も。帰国後の「追跡調査を」

全難連は日本政府などに対し、帰国後のセチトレコ選手の追跡調査を行うことも求めている。

申入書では「選手がウガンダ帰国後に本国政府からどのような処遇・対応を受けたのかについては、日本政府は難民条約加入国としてその責務を適切に果たしたか検証するため、最低限追跡調査をするべき」と指摘した。

セチトレコ選手は事前合宿時に宿泊していたホテルから失踪した際、「生活が厳しい国には戻らない。日本で仕事がしたい」などと綴った書き置きを残している。

現時点では、セチトレコ選手が経済的な理由のみで失踪したのか、なぜ難民申請を希望したのかなどの詳細は明らかになっていない。

しかし、申入書では「失踪したという事実が反政府的な活動をしたと見なされ、帰国後に過酷な処罰を受ける危険もある」とし、追跡調査の必要性を強調した。

Twitterでは「#StandWithSsekitoleko」(セチトレコ氏と共に)や「#FreeSekitoleko」(セチトレコ氏を解放せよ)のハッシュタグで、セチトレコ選手への支持を表す声が日本、ウガンダ両国からあがっている。

UPDATE

現地メディアの報道によると、日本時間の7月28日夜、セチトレコ選手は身柄を拘束されていた警察署から解放されました。