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「生理痛どこまで我慢?」「ピルって実際どう?」産婦人科の先生に聞いてみました

生理痛や子宮内膜症、ピル服用などについて、産婦人科医の甲賀かをり先生に聞きました。

「おなかも腰も痛いし、眠いし、集中できない…」「けど、やらないといけないことは生理に関係なく山積み」ーー。

生理中、多くの人がそのような経験をしたことがあるかもしれません。

低用量ピル服用などの選択肢も含め、どうしたらうまく生理と付き合って行くことができるのでしょうか?

生理の周期などを管理するアプリ「ルナルナ」の、ピル服用モードなども監修している、東京大学医学部附属病院・産婦人科の甲賀かをり准教授に、話を聞きました。

「我慢が当たり前」?いえ、病院にきてください

生理の際には、毎回のように生理痛が起こり、「我慢するもの」「みんな痛い」と思っている人も多いかもしれません。

しかし、甲賀さんは「変だなと思ったら病院に行ってください。行って無駄になることは一切ありません」と話します。

甲賀さんが診察してきた患者にも、「生理痛くらいのことで病院に行っていいのかわからない」と産婦人科へ行くことをためらい、なかなか診察に来なかった人が少なくないといいます。

しかし、実際のところ、痛み止めを飲んでも生理痛がきつく、仕事や学校などの日常生活に支障が出るほどの痛みを経験したことがある人は少なくありません。

生理周期などを管理するアプリ「ルナルナ」の調べによると、「日常生活に支障が出るほどの生理痛」を経験したことが「ある」と答えたのは全体の91.4%で、うち、63.6%が「いつもある」、27.8%が「たまにある」としていました。

甲賀さんは「生理痛で病院に行って、何もなかったら恥ずかしい、もしくは生理中に病院に行っていいのか…と悩んでいて、我慢して待ってから病院に行ったら、子宮内膜症になっていたケースもあります」と話します。

「もし診察で病気でないと分かっても、超音波の結果などが記録に残りますし、記録はそれ以降に何かあったときのためにもなります」

厚生労働省の発表よると、調査に答えた3人に1人にあたる、37.3%は「婦人科に行くべき時に行かなかった」と答えてます。

また、行かなかった理由としては「症状はあるが、自分の症状は重大な病気では無いと思ったから」など、自己判断により「行かない」という判断をしてしまった人が最多でした。

他には理由に「病院がすいている時間に行くことが難しかったから」「婦人科・産婦人科での診察が恥ずかしかった・怖かったから」などがあげられました。

生理痛は多くの女性が経験している一方で、低用量ピルによって痛みを抑えることもできます。

甲賀さんは「月経困難症がこれ以上悪くならないようにという目的で飲んでいる人が増えています」と話します。

生理痛がひどい時は、我慢せずに痛み止めを服用し、さらに婦人科にかかり、低用量ピルを処方してもらうことも可能です。

子宮内膜症や子宮筋腫などが原因でない場合の生理痛は、排卵後に、卵巣から分泌される黄体ホルモンの作用が原因である可能性が高く、その場合は、ピルでその黄体ホルモンの分泌を抑えることで、痛みを予防できます。

ピルの副作用って?服用を続けるコツは?

ピルの服用にあたり、飲むことをためらう声や、または一度服用しても止めてしまう理由で多いのが、副作用だといいます。甲賀さんに、ピルの副作用などについても聞きました。

ピルには、特に服用し始めた時に、吐き気などの副作用がありますが、服用し続けると次第にそのような症状はなくなっていきます。

「ピルにもよりますが、飲み始めが一番、吐き気や頭痛、足のむくみなどの副作用があります。生理が軽くなったり生理痛が緩和されるといった効果がでるのが1〜3カ月後なので、最初に副作用がしんどくて服用を止めてしまう人が多いです」(甲賀さん)

ピルの重篤な副作用には血栓(静脈血栓塞栓症)があり、甲賀さんによると、副作用の足のむくみや頭痛などで血栓だと思い込み、怖くなって医師に相談もせずに服用をストップしてしまう人もいるようです。

また、ピルは毎日決まった時間に服用する必要があるため、起床や就寝の時間帯が毎日バラバラな学生などには、同時刻に飲み続けることが難しかったりもするといいます。

「すぐに効果がわからないために副作用で辞めてしまう人が多いので、処方する際に副作用や、数カ月後に効果があることなどをきっちり説明しています。また朝や寝る前など、自分が飲みやすい時間を決めることも大切です」

生理痛に効くだけでなく、高い避妊率でも知られるピルは、最近では認知度もあがってきていますが、実際にはそこまで多くの人が服用しているわけではありません。

ルナルナの調べでは、ピルを「現在服用中」は12.2%、「過去に服用したことがある」と答えたのは19.8%にとどまり、「服用したことはない」人が67.0%と最多でした。

日本では、欧米諸国からはるかに遅れをとり1999年に避妊用として低用量ピルが発売されました。甲賀さんによると、当初はネガティブなイメージがつきまとうなど、スティグマ(負のレッテル)もありましたが、次第に理解が広がってきたといいます。

一方で、現在もピルに偏った悪いイメージを持つ人もいるために、厚生労働省の研究班が作成したウェブサイト「女性の健康推進室・ヘルスラボ」など、医師らの監修を受けた情報を記載するサイトなどで、ピルに関する正しい知識を得てほしいと甲賀さんは話します。

家族、教師、会社など「皆の理解が必要」

昔はスティグマがあったピルも、理解が広がり、甲賀さんが診察する、生理痛で来院する中学生や高校生の30、40代の母親は、ピルへの理解があるといいます。

しかし今でもTwitter上で、ピルを服用する高校生が、学校で服用を非難された経験を投稿するなど、無理解からくるスティグマも存在します。

甲賀さんは、男女共に教員や生徒への理解を深めるために学校へ出張事業へ行くなどの働きかけもしています。

「医学的なヘルプがあればそれを使ってもらえるように、女性も正しい情報を得て、正しい医療的なサポートを受けることが大切です」

また、会社などでの理解を広め、またピル服用を支援する動きも出ています。

アプリ・ルナルナを運営するエムティーアイ社では、女性社員にとってより働きやすい職場環境を整えるために、2月からピル服用の費用を会社が負担する福利厚生制度も始めます。

甲賀さんは「管理職レベルの人が、女性が生理で抱える問題を理解し、会社としてサポートしていくことも大切。色々な方面で底上げされていくべきです」と話します。

ピルでも「OC」「LEP」って何が違うの?

ピルと検索すると、「OC」や「LEP」など、「ピル」という言葉の後にアルファベットが並んでいます。これは、避妊を目的としたピルか、月経困難症の治療を目的としたピルかの違いです。

「OC」はOral Contraceptivesの略で避妊用、「LEP」はLow dose Estrogen Progestinの略で、月経困難症の治療用のために保険がききます。子宮内膜症などの治療に使われます。

10人に1人が「子宮内膜症」?

甲賀さんは、子宮内膜症について啓発などをおこなうNPO「日本子宮内膜症啓発会議(JECIE)」の副理事も務め、学生や若い人たちにもわかりやすく伝える活動などをしています。

子宮内膜症とは、本来、子宮の内側(内腔)にある子宮内膜組織が、子宮内腔以外の卵巣やおなかの中で発生し、増殖する病気です。

生理痛や腰痛、下腹部の痛みが症状としてあります。

10人に1人が子宮内膜症ともいわれており、甲賀さんは、生理痛がひどい時には、産婦人科にいくようにと話します。

NPOのウェブサイト「子宮内膜症情報ステーション」では、子宮内膜症のわかりやすい説明や、中高生にもわかりやすく作られたパンフレットなども載っています。

サムネイル:Getty image/ Sumireko Tomita