厚生労働省はこのほど、妊娠中の女性のコロナワクチン接種について、接種時期をめぐる見解を変更した。
これまでは、厚労省ウェブサイトのワクチンに関するQ&Aのページで、「妊娠12週までは接種を避けていただく」と記載していたが、その文章を削除。現在は「妊娠中のいつの時期でも接種可能」と記載している。
変更について、厚労省に見解を聞いた。
どの文言がどう変わった?
厚生労働省はこれまでは、ウェブサイトでのQ&Aのページで「妊娠中、授乳中、妊娠を計画中の方も、ワクチンを接種することができます」とした上で、「器官形成期である妊娠12週までは、偶発的な胎児異常の発生との識別に混乱を招く恐れがあるため、接種を避けていただくこととしています」と説明していた。
それを、以下のような表記に変更した。
《産婦人科の関係学会は、海外における多くの妊婦へのmRNAワクチンの接種実績から、ワクチンは、妊娠初期から妊婦と胎児の双方を守り、重篤な合併症が発生したとの報告は無いとしています。また、妊娠中のいつの時期でも接種可能としています》
《妊娠中に新型コロナウイルスに感染すると、特に妊娠後期は、重症化しやすいとされています。特に人口当たりの感染者が多い地域の方、感染リスクが高い医療従事者、糖尿病、高血圧など基礎疾患を合併している方は、ぜひ接種を検討ください》
厚労省「妊娠週数にかかわらず接種いただける」
Q&Aのページなどには、見解が変更されたことについては注意書きなどはない。なぜ変更されたのか、厚労省に聞いた。
厚労省の予防接種室の担当者はBuzzFeed Newsの取材に「Q&Aページの内容変更は、産婦人科の関係学会による見解の変更に伴うもの」と説明した。
妊娠中・妊娠を希望する人のワクチン接種についてはまず、日本産婦人科感染症学会と産科婦⼈科学会が「ワクチン接種を考慮する妊婦さんならびに妊娠を希望する⽅へ」という文書(5月12日更新)を出していた。
5月時点のその文書では、「現時点でmRNAワクチンには催奇性や胎児胎盤障害を起こすという報告は無いが、器官形成期(妊娠12週まで)は、偶発的な胎児異常の発⽣との識別に関する混乱を招く恐れがあるため、ワクチン接種を避ける」としていた。
しかしその後、妊婦への接種のデータなどをもとに、日本産科婦人科学会と日本産婦人科医会、日本産婦人科感染症学会が6月17日に合同で発表したお知らせでは、「12週までは避ける」という表記はなくなった。
日本産婦人科感染症学会はウェブサイトで、声明の内容を更新したことを説明している。
加えて、日本産婦人科感染症学会は7月19日、妊娠中や妊娠を希望する人たちの新型コロナワクチン接種についての「Q&A」を公開。そこでは、接種の時期についてこう説明している。
《いつの時期でも接種可能です。⼼配な⽅は器官形成期(妊娠12週まで)を避けることをお勧めしていますが、現時点で明らかなワクチンによる催奇形性(胎児に奇形が起きること)の報告はありません》
厚労省の担当者は、以上のような、専門家によるデータ等に基づく変更などを受けて、Q&Aの内容も変えたと説明。
「政府としては、妊娠週数に関わらず接種いただけるという認識です」と話した。
3学会合同のお知らせでは、妊娠中の接種について、以下のように説明している。
《すでに多くの接種経験のある海外の妊婦に対するワクチン接種に関する情報では、妊娠初期を含め妊婦さんとおなかの赤ちゃん双方を守るとされています。また、お母さんや赤ちゃんに何らかの重篤な合併症が発生したとする報告もありません。したがって日本においても、希望する妊婦さんはワクチンを接種することができます》
《一般に、このワクチンを接種することのメリットが、デメリットを上回ると考えられています》
UPDATE
厚労省は8月24日までにQ&Aのページの表記を変更しました。現在は接種時期について「産婦人科の関係学会は、妊娠中の時期を問わずmRNAワクチンの接種を推奨しています」「米国における副反応調査結果から妊娠20週以前にワクチンを接種しても流産のリスクは上がらないとしています」と説明しています。