この秋、性や体をテーマにしたABEMAオリジナルドラマ「17.3 about a sex」が公開されました。
主人公である17歳の女子高校生たちが直面する、性的同意、避妊、生理、セクシュアリティなどのテーマを取り上げ、9つのエピソードをオンラインで配信しています。
高校生を主な対象にしたドラマですが、主人公の母親役を演じた藤原紀香さんは「ドラマをきっかけに、親子で性について話してほしい」と語っています。
藤原紀香さんが振り返る、10代の頃。家庭内での性の話
「性教育は、生きていくための人間教育」
藤原紀香さんが10月24日、近畿大学附属高校(大阪府)の生徒たちにリモートでこう語りかけました。
ドラマのクリエイティブディレクターを務めた辻愛沙子さんらによる出張授業に、特別ゲストとして参加したのです。
藤原さんは10代の頃を振り返りながら、話を続けます。
「実際私もそうだったんですけど、16、17歳の頃は、親に性の話なんか絶対言えなかったし、まずそんなことを口走ろうものならえらいことになった」
「私が演じている亜紀は、母親にそっくり。自分の母親のことをすごく思い浮かべた。(亜紀の台詞は)母親が私に言った言葉だったんです」
藤原さんの家庭は、親子でテレビを観ている際も、動物の交尾のシーンがあると、親の顔色が変わってすぐにチャンネルを変えられるような雰囲気だったそうです。
自身がそのような家庭で育ったからこそ、藤原さんは、親子で性についてオープンに話し合うことが大切だと考えています。
「もっと(親に)色んなこと相談したかったなって思う。『きっかけ』だと思うんですよね。こういうドラマがきっかけになったり…。小さい頃からできる性教育ってたくさんある。親世代と子ども世代が話せるっていうのはすごく素敵なことだなと思います」
「ぜひこのドラマを、子どもの方から『お母さん一緒に見よ』だったり、親の方からも『このドラマ一緒に見てみない?』と話してほしい。そこから広がっていって、話せるようになっていったらいいなと思います」
藤原さんは自身のブログでもこのドラマを紹介し、こう綴りました。
《『17歳なんてまだまだ子どもで、初体験なんてもちろん20歳過ぎてから、社会人になってから、結婚してから...』そう思うのは 、両親、大人の理想であって、 現実は違います》
《諸外国のように 現代にふさわしい性教育の在り方を考えていかねばならない世の中なのだと、このドラマを通して感じました》
親にとっては、まだまだ子ども。でも…
家庭内での性教育は、どの家族にとっても難しいテーマ。
劇中でも、長瀬莉子さん演じる主人公の清野咲良と、藤原さん演じる咲良の母親、亜紀の間で、性についてなかなか話し合えない親子関係が描かれています。
ドラマのタイトルでもある「17.3」は、ある企業が公表した世界の若者の初体験の年齢。
第1話のタイトルは「処女卒業17.3歳。ウチらはどうする?」、第9話は「17.3歳ーウチら、もう"何も知らない"って歳じゃない」。
親目線では「まだ子ども」、でも高校生は確実に性知識をつけ、様々なことを経験していきます。
いかに家庭内でも性について話し合うか、ドラマは高校生向けでありながらも、親世代に大切な問題提起をしています。
性的同意、アセクシュアルやバイセクシュアルなどのセクシュアリティ、避妊、マスタベーション 、生理、妊娠、痴漢、性病ーー。
現在の10代はどのような環境に置かれ、どのような悩みを持っているのか。
ABEMAの20代女性スタッフらが中心となって、トピックの候補をあげていきました。
各分野への取材を重ね、全9話のエピソードとして丁寧にまとめています。
親子間の「溝」を埋めるドラマに
ドラマの企画・プロデュースを担当した藤野良太さんは、母親役の藤原さんの言葉に背中を押されたと話します。
「すごく意味のあるテーマ性。母親として娘の成長に関わるような脚本を書いてほしい」
「今の子供を育てる親世代に、とてもメッセージ性のある作品になるから」
藤原さんのそんな言葉をきっかけに、高校生の友人同士のやり取りだけでなく、親子間の性に関する会話についても深く掘り下げるストーリーとなりました。
正しく情報を伝えた上で選択させるのも「愛」
プロデューサーの藤野さんは「親からは切り出せないし、娘からも話せない」という状態は「愛のズレ」であると話します。
「性について触れさせないで、そこから守るというのが親の一つの愛でもある。一方で、正しく情報を伝えた上で、娘に選択させるという方法も愛なんじゃないかと思っていて、このドラマではそれを描きたいと思いました」
「家庭内のギャップ、溝みたいなのがあると思います。このドラマでは、そこを埋めるという提案をしたいと思いました」
親子間の「溝」には、家庭内で「性」を避けることで生じるものもあれば、世代間ギャップでの「情報の溝」もあります。
今、高校生や中学生の子がいる親世代が10代だった頃に比べると、現代は多くがスマートフォンを持ってインターネットで多くの情報を得ています。性に関する情報もしかり。
付き合う相手と出会う方法も、学校や友人の紹介だけでなく、SNSやアプリなど多様化しています。ドラマではそのような様子も描かれています。
「娘をどういう世界に住まわせたいか」という視点
あらゆる性にまつわる問題に女性高校生3人が直面していくドラマを制作する中で、プロデューサーとして藤野さんが持っていた視点があります。
それは「娘をどういう世界に住まわせたいか」という視点。
まだ藤野さんの娘さんは幼いですが、これから成長して中高生になるときに娘さんが直面するであろう、性教育、性に関する情報の得方、性被害など、日本社会にある課題一つ一つに焦点が当てられました。
このドラマの制作に当たって、藤野さんの家の中でも、親子間の「溝」を埋めるアクションが取られたといいます。
幼い子どもの性教育について、ドラマの医療監修を務める高橋幸子医師に相談した際に、性を扱った絵本を勧められました。
その後、妻とも話し合い、絵本でまず体についての情報を伝え始めることにしました。
藤野さんは、ドラマを機に始めた家庭での性教育について、こう話します。
「おすすめの絵本を教えてもらい、何冊か家に置いています。娘が質問してきたら、答えるというスタンスでいます」
「子どもが主体的に選択するという環境を整えてあげることが大切。そのための知識は伝えた方がいいと考えています」