清水ミチコの“ものまね”が愛され続ける理由

    清水さんのものまねに溢れる「リスペクト」

    2016年にデビュー30周年を迎えたものまね芸人・清水ミチコさん。ものまねやピアノ芸でお茶の間の人気を集め続けています。

    BuzzFeed Japanは清水さんに、ものまねで誰かに「なりきる」ことの魅力についてききました。


    誰かに「なりきる」と見えてくる、ものまねの喜び

    ――ものまねのコツってありますか?

    やっぱり催眠術を自分にかけるっていうか、心理的にそういうことができたら、成功じゃないかな。

    人が自分以外のものになるって、それだけで可笑しいみたいで。なので、その自分を錯覚させる基本さえわかっていれば面白いし、自分でも不思議さを味わえます。

    ――なるほど。そういう「誰かになりきる」ってどんな感覚なんでしょうか?

    例えばユーミンさんになるときは自分の中で、ものすごく知能高くなってるって言うイメージがあったり。田中真紀子さんになると、ものすごく自分の中に正義の血がたぎってたりとか。小池百合子さんだと華がある声とか。

    ――その人それぞれにイメージがあるんですね。

    そうですね。それは後で気がついたんですけど。

    その時はただ「田中真紀子になりたい」って思ってなりきるわけなんですけど、後で気がついたら、「なんかあの時、正義感でいっぱいだったなぁ」なんてふうに思い返す時はあります。ヘンな話。

    ――田中真紀子さんになりたかったんですか?

    田中さんは他人のことも好き放題言うし、たとえ話も面白い。顔も好かれる人だし、声も深みがあって私には魅力的なんですよね。

    すごく興味があったんで、そのころ「なりたい」って思った気持ちが今も続いてるって感じです。

    ――なるほど、他の方のイメージも気になります。例えば桃井かおりさんは?
    やっぱりオトナだし、チャーミングなところとか。あと歌うように喋るって感じかな。

    桃井さんの言いそうなフレーズって「〜なワケ」とか「ご不満?」みたいに独特だから、バラエティでも重宝されるんだと思うし、今も映画やCMで活躍なさってる。

    でもあれだけ続いているっていうのは、言い回しが歌みたいだからなんじゃないかなって。耳に気持ちのいい声の出し方だと思います。

    ――では、森山良子さんのイメージは?

    聴衆を大事にしているイメージですね。例えば「ざわわ」も「ざ・わ・わ」って、一言ずつちゃんと聞こえるようにっていう。彼女の責任感というか真面目な感じを自分でも出してると思う。

    やっぱり、ああいう清い人・神聖な人ってのはやりがいがありますね。

    逆に、三枚目みたいな人はやってもあんまり面白くないのよね。その人の個性が面白いのに、それをものまねしても上塗りだけでかなわないのかな。


    ものまねする人へのリスペクトは必要。さじ加減が大切。

    ――なるほど。「真っ直ぐなんだけど、どこか個性的な人」が面白いのかもしれませんね。例えば大竹しのぶさんとかも?

    ええ。大竹さんはこないだも「いいネタ思い出したからみっちゃんにあげる」って言ってきたんです。

    最初の旦那さんが亡くなった時に、親友に泣きながら電話して。「私は金輪際男を好きにならない。そりゃあ男は私のことを好きになるだろうけど」って言ったんですって。

    それをわざわざ私にくれるってところが、お人好しっていうか、大人物ですよね(笑)。

    ――素敵な方ですね。

    そう。どっかにやっぱりちゃんとした自信がないと、私みたいに揶揄してくる人間にネタなんか渡さないと思うんですよ。

    自分はそんな人間じゃないとわかっているから、そいういうネタをくれるんだと思いますね。

    ――清水さんのお話を聞いていると、ものまねする方へのリスペクトを感じます。

    有難うございます。毒舌でばーっと飛ばしたほうが面白いようで、意外とお客さんはひいちゃうんですよね。私もそうなんですけど。

    お客さんの身になると、「そんなに言ったら可哀想なんじゃないか」「失礼じゃないか」とかってね。

    ちょっと皮肉っぽいくらいのほうが、お互い美味しいんです(笑)

    そのさじ加減も楽しみの一つだと思いますね、こういう職業って。

    ――他のものまね芸人の方で、敬意を感じないこともありますか?

    あるある!「やりすぎてる」っていうのはたまにあります。

    一人のものまねを長くやりすぎたりすると、ちょっとしつこいっていうか。でも笑っちゃうけど。

    ――例えば、コロッケさんの顔真似も凄いですよね。やりすぎな気もしますが、あれはあれでリスペクトがあるんでしょうか?

    そうですよ! コロッケさんみたいに色々なところでやってきた人はやっぱり迫力があるし、しつこくなく….うーん、やっぱしつこいかな(笑)

    まあやっぱりショーパブ系の人とか、同じ芸人でもカラーがあるんですよね。ステージによってはしつこくしないと、とか。

    ――でも、多少いじらないとものまね芸として面白くなくなっちゃいますよね。ファンから怒られたりはしませんか?

    私も知らないけど、多分数人は怒らせているんじゃないですか? かといって変に謝るのもこじらせるし。危険な橋を渡ってますよね、私たちって(笑)


    「なりたい人」のものまねは、すぐにできちゃう。

    ――そもそも、ものまねの練習はどうやっているんですか?

    文化人のときは、こんな事言いそうだなってのを一度文章にしています。

    歌手の場合だと、ピアノに乗せて、どんな曲が自分の音階に合うかとかを考えます。

    ――でも、声の似せ方は?

    やってみて、「我ながら似てる」と思ったらもうそのままです。

    ――そんなにすぐできちゃうものなんですか?

    うん、好きになればね。割と早い方です。無責任だから(笑)

    逆にどうも好きになれないっていう人は「この人やったらウケるのに」って周りから言われても、なんか出来ないんですよね(笑)

    その昔、ヤクザ映画を観た人がヤクザみたいな雰囲気で肩で風を切ってたんですって。自分がヤクザになったような気持ちになって。それに近いんだと思います。

    やっぱ憧れとか、「こうなりたかったのに」っていうのが、あるんでしょうね。

    ――逆に、仕方なくものまねした人はいるんですか?

    ありましたね。リクエストされた〇〇〇〇さん。

    全然似てなくて(笑)やっている芸人さんは結構いるんですが。先に上手な人がやられているってのもあるのかもね。

    それはもう、面白くもなんともないって感じでした。

    ――そうでしたか。清水さんのものまねの根底には、憧れの人に「なりたい」っていう気持ちがあるんですね。

    そうですね。ですから、私に好かれないように、皆さん気をつけて下さいね!

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    清水さんは11月3日から全国ツアー「国民の叔母 清水ミチコのひとりジャンボリー」を開始します。詳しい日程やチケット情報は公式HPをご覧ください。