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受動喫煙対策についての緊急国会議員アンケート、与野党で回答に大きな差

自民党の回答率が著しく低かった。

全国会議員707名を対象にアンケートを実施

時事通信フォト

2016年に撮影された衆院本会議場の写真。

たばこを吸わない人だけでなく、吸う人も望んでいないという調査結果のある受動喫煙。厚生労働省は非喫煙者でも年間1.5万人が受動喫煙で死亡していると推計する。しかし、国の対策案は二転三転。国民を代表する立場の国会議員は、受動喫煙対策をどのように行うべきだと考えているのか。

BuzzFeed Japanは東京大学国際保健政策学教室教授の渋谷健司氏、ハーバード公衆衛生大学院教授のイチロー・カワチ氏、カリフォルニア大学ロサンゼルス校内科学助教の津川友介氏、日本肺がん患者連絡会代表の長谷川一男氏と共同で、全国会議員を対象とした緊急アンケートを実施した。

集まった回答には、与党と野党で大きな差が生まれた。特に自民党の回答率は著しく低い結果になった。

「骨抜き」と批判の根強い国の方針

これまでの経緯を振り返る。当初、厚生労働省の受動喫煙対策法案は「屋内原則禁煙」だった。しかし、飲食店や自民党のたばこ議連が強く反対し「店舗面積30平米以下のバーやスナックでは例外として喫煙可」に変更。

それでもまだ反対され、「スモーク・フリー(たばこの煙がないこと)」が原則のオリンピック開催を2020年に控える中、2017年は法案を国会に提出できないという、緊急事態に陥った。

2018年3月に政府が閣議決定し、今国会に提出予定の最終案では「個人経営か資本金5千万円以下」で「客席面積(*)100平方メートル以下」の場合、「喫煙」「分煙」などと掲示すれば、喫煙室を設置しなくても喫煙可、に変更された。

*店舗面積から調理場などの面積を差し引いた客席の面積。客席面積にすると、調理場が大きな飲食店は規制の対象から外れやすい。

厚労省は例外が適用される飲食店を約55%と推計するなど、実際にはかなりの店が「例外」の範囲に入ることがわかっている。ただし、客、従業員ともに20歳未満の立ち入りを禁止し、違反した場合は都道府県などが指導する。

最終案では他に、学校や病院、児童福祉施設、行政機関などは原則敷地内禁煙としたものの、屋外に喫煙所を設置することは可とした。当初案では小中高や病院は敷地内全面禁煙で、大学や運動施設、官公庁も喫煙所の設置を可としない屋内禁煙だった。

この流れには「骨抜き」との批判が、与野党を問わず根強くある。党議拘束を外すべき、つまり党の方針ではなく、国会議員の一人ひとりの信念に基づいて賛成・反対を決めるべきとの声も聞かれる中、今回のアンケートが実施された。

他党の回答率より著しく低い自民党

アンケートは衆議院・参議院をあわせて707人(衆議院465人・参議院242人)の国会議員を対象に実施。このうち、有効な回答をしたのは125人(衆73人・参52人)で、回答率は17.7%だった。

Seiichiro Kuchiki / BuzzFeed

政党別の回答率は、立憲民主党が40.3%(62人中25人)、共産党が76.9%(26人中20人)、社民党が100%(4人中4人)と高かったのに対し、自民党が7.9%(407人中32人)、公明党が14.8%(54人中8人)、希望の党が18.5%(54人中10人)と低い結果になった。

Seiichiro Kuchiki / BuzzFeed

具体的な回答内容は以下のとおり。まず、受動喫煙対策をするに当たり、基本的な質問を投げかけた。

「受動喫煙と肺がん・虚血性心疾患・脳卒中・小児喘息・乳幼児突然死症候群が関連することは確実であることが証明されています。このことを知っていますか?」という質問には、96.0%(125人中120人)が「はい」と回答。

「分煙では受動喫煙を完全には防げないことが明らかになっています。また、分煙の飲食店などでは従業員は受動喫煙することになります。このことを知っていますか?」という質問には、96.8%(125人中121人)が「はい」と回答。

回答した議員のほとんどが、受動喫煙と関連する病気があること、その対策は分煙では不十分であることを知っているとわかる。しかし、飲食店に対する方針については、回答が分かれた。

受動喫煙についての基本知識はある、しかし……

「厚生労働省によって、2018年1月、飲食店については広さ次第で喫煙可とする案が示されました。受動喫煙対策は、どのような方針であるべきでしょうか。」という質問の結果は以下のとおり。

「飲食店の広さに関係なく、全面禁煙とするべき」は54.4%(125人中68人)、「飲食店の広さによって、禁煙、分煙、喫煙を分けるべき」は24.8%(31人)、「飲食店の広さに関係なく、全面喫煙とするべき」は0%(0人)、「その他」は17.6%(22人)、白紙回答が3.2%(4人)あった。

政党別に回答結果をみると、自民党内では「全面禁煙」が31.3%(32人中10人)で「広さによりわけるべき」が31.3%(10人)と意見が割れていた。

一方、立憲民主党や共産党では「全面禁煙」が多数。立憲民主党は68.0%(25人中17人)が、共産党は100%(20人中20人)だった。

ほとんどの回答者が受動喫煙が関連する病気があること、分煙では対策が不十分であることを知っているのに、全面禁煙ではなく、分煙を容認する国会議員が一定数いるのはなぜか。

「その他」には、経営規模の小さい店に配慮をするべき、とする意見の書き込みが複数あった。

「飲食店の広さに関係なく、屋内は原則禁煙とし、特定の喫煙場所でのみ喫煙を可能とすべきと考えます。ただし、経営規模の小さな既存の飲食店については、事業継続への配慮の観点から、経過措置を設ける必要があると思います」(自民党・稲田朋美氏)

「全面禁煙をめざしたいが、生活がかかっている小規模店舗もあるので段階的にやっていく方が良いだろう。死活問題である」(自民党・盛山正仁氏)

「基本的に全面禁煙とすべきだと考えるが、どうしても改装ができないほどの小規模店は例外とするのもやむを得ないかとも思う」(立憲民主党・近藤昭一氏)

オリンピック開催地としての対策は

差し迫るオリンピック開催に、世界の注目が集まる中、日本はどのような受動喫煙対策をするべきか。

「オリンピック開催地は『スモーク・フリー』(たばこの煙がない状態)が原則です。東京五輪を開催するにあたり、公共機関や飲食店、宿泊施設など、多くの人が訪れる場所はどのような受動喫煙対策をするべきでしょうか。」という質問の結果は以下のとおり。

「敷地内禁煙」は28.0%(125人中35人)、「敷地内禁煙(喫煙所の設置可)」は40.0%(50人)、「屋内禁煙」は6.4%(8人)、「屋内原則禁煙(喫煙所の設置可)」は8.0%(10人)、「喫煙可」は0%(0人)、「その他」は14.4%(18人)、白紙回答が3.2%(4人)あった。

回答者の中では、自民党以外の国会議員でも、喫煙所の設置を可とする敷地内禁煙を「落とし所」とする傾向が強かった。これは受動喫煙対策法案の最終案とも一致する。共産党のみ「敷地内禁煙」が80%と多数派(20人中16人)だった。

国会審議では党議拘束を外すべきか?

回答者については、所属政党の中でも意見が分かれることがうかがえる結果になったが、それも党議拘束をかけるべきだろうか。

「今回の健康増進法(受動喫煙対策法案)の改正案については、党議拘束を外すべきだと思いますか?」という質問には、47.2%(125人中59人)が「はい」、33.6%(42人)が「いいえ」と回答。白紙回答が19.2%(24人)あった。

自民党では「はい」が34.4%(32人中11人)、「いいえ」が40.6%(13人)、白紙回答が25%(8人)あった。立憲民主党ではそれぞれ68.8%(25人中17人)、24.0%(6人)、8%(2人)。

一方、共産党では5.0%(20人中1人)、45.0%(9人)、50.0%(10人)となるが、これは同党が「党として(厳しい)受動喫煙対策を推進する」ことを表明していることによるとみられる。

喫煙歴・関連業界からの献金の有無は

このアンケートでは、喫煙歴の有無、たばこ会社・たばこ関連産業・飲食店組合などからの献金の有無も質問した。

まず、回答者のうち、喫煙者の国会議員は9.6%(125人中12人)、過去喫煙者は23.2%(29人)、非喫煙者は64.0%(80人)。白紙回答が3.2%(4人)。回答者は非喫煙者の国会議員が過半数だった。

関連業界からの献金を「受け取っている」としたのは2.4%(125人中3人)、「受け取っていない」としたのは94.4%(118人)、回答なしが3.2%(4人)だった。回答者は関連業界からの献金を受け取っていない国会議員がほとんどだった。

このアンケートでは、受動喫煙対策に積極的な議員ほど回答し、喫煙者や献金を受け取っている議員は回答をしない、ということもありえる。

当初の厚労省案を推し進めた元厚生労働大臣の塩崎恭久氏からは回答があったが、それに反対した自民党たばこ議連会長の野田毅氏からの回答はなかった。

アンケート回答は「最低限の責務」

アンケートの共同実施者である渋谷氏は、国会議員の回答率が全体的に低かったことについて「大変残念」だという。

「自分の政策スタンスを国民に明確にすることは、議員として最低限の責務です。特に、自民党の回答率の低さは、政権与党としての説明責任を放棄していると受け取られかねません」

また、受動喫煙の健康被害や分煙では対策が不十分であることは、回答者のほぼ全員が理解しているのに、それが政策に反映されないことには「なぜエビデンスに基づく政策を打ち出せないのか、理解に苦しむ」とした。

しかし、「 回答を見ると、自民党議員でも考え方は一枚岩ではない」と、期待もにじませる。

「政党も党議拘束で締め付けるのではなく、活発な議論を経て、オリンピックを主催する健康先進国としての責務を果たすべきです」

法案提出に向けて、各党・各議員の間でさまざまな動きがあるとみられる中、受動喫煙対策はどうなっていくのか。BuzzFeed Japanでは引き続き、調査をしていく。


Contact Seiichiro Kuchiki at seiichiro.kuchiki@buzzfeed.com.

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