「100%同意できる政党がなくて、投票に躊躇してしまう場合はどうすれば?」
7月10日投開票の参院選を前に、BuzzFeed Newsが選挙に関する質問を募集したところ、読者からこんな声が寄せられました。
若い世代の政治参加に向けて活動している「NO YOUTH NO JAPAN」代表理事の能條桃子さん(24)はこの問題をどう考えるのかーー。
それでも投票した方がいいですか?と質問してみました。
自分がほしい政党は「作らない限りない」
ーー「100%同意できる政党がなくて、投票に躊躇してしまう場合は、どうしたらいいですか?」というこの質問、能條さんが友達に聞かれたらどのように答えますか?
そうですね…。私も、もし100%同意できる政党や候補者がいたら、投票するだけじゃなく、党員やサポーターになって全力で応援していると思いますが、なかなかいないですよね。
それぞれの人生で見ている世界が違うので、どうしても細かい所で同意できない部分が出てきてしまうのは、仕方がないと思います。
今回、ハフポスト日本版のU30社外編集委員として、主要政党の幹部にインタビューしましたが、やっぱり自分がほしい政党は自分で作らない限り、ないんだなと痛感しました。
有権者にとっても選挙は「通過点」
ーーそれでも、投票した方がいいですか?
100%同意できる人がいないから投票するのをやめたとしても、自分と意見が違う人たちが当選していくだけですよね。何も意思表示することができません。
それなら、20%同意できる人と、60%同意できる人を比べて、60%の人に1票を入れたほうがいいと思います。
私は、みんなが自分なりの争点や見極めるポイントを持って、「今の私はこれが許せないからこの党に投票する」「これが絶対必要だから、この候補者を応援したい」という思いで投票すればいいと思っています。
それこそ、政策や争点などを何も見ないで、党の「看板」だけ見て決めている人もたくさんいます。だから「これをクリアしなければ投票するべきではない」なんて基準は、何もないと思います。
1回の選挙は、有権者にとっても「通過点」でしかありません。
今回の選挙は、自分に今見えている範囲でここに投票する!と決めちゃって、次の選挙までの期間で、他の分野についても調べてみたりするのもいいんじゃないかなと思います。
その候補者は「視点」を持っているか
ーーでは、能條さんにとって、「ここは譲れない!」という争点は何ですか?
私はジェンダー平等や同性婚、気候変動などの問題には、絶対に取り組んでほしいという思いが強くあります。
一方で、そうした政策を掲げている政党を見ると、経済や税金の話でちょっとうーん…となって、あまり好きじゃなかったりするんですよね。やっぱり全部がぴったり合う人はいないんです。
でも私は、ジェンダーも環境も基本的には「レンズ」だと思っていて、そのレンズを通して見れば、何も問題がないと思っていた社会の不平等や持続可能じゃない部分が見えてくるものだと思っています。
今は、ジェンダー平等や気候変動が個別の問題として扱われていますが、これらの問題を掲げること以上に、その視点を持って、社会全体を見ている人かどうかが重要だと考えています。
候補者のSNSやハッシュタグをチェック
ーー実際に投票先を決めるときは、どんな情報を参考にしていますか?
一つはまず、候補者のSNSですね。その問題について、どんな風に言及しているかを見ています。
同時に、その候補者を支持している周りのサポーターが、SNSでどんなことを言っているかも、結構見ています。
Twitterだと特定の候補者を応援するハッシュタグがあったりするので、それを見て「共感できる投稿がいっぱいあるなあ〜」とか「この人たちとはちょっと見てる景色が違うなあ〜」とか考えたりします。
Instagramだと候補者の投稿のコメント欄とかも、結構見ちゃいます。
コメントを見ると、その人を熱烈に応援している人たちがどんなことを求めているかがわかってくるんですよね。
政治家は自分を押し上げてくれた人を見て政治をするのが当たり前なので、その候補者の視界の中にどんな人が入っているのかを知るのも、大切かなと思っています。
ボランティアにも話しかけちゃう
ーーSNSだけでなく、街頭演説を聞いたりもしますか?
そうですね。SNSは基本的にフォロワーに届くものなので、自分を支持してくれる人とのコミュニケーションが中心の発信手段になります。
それに対して、駅前で立ってたりするときは、全く知らない人たちに向けて話す言葉だから、候補者が見せる面は違うと思っています。
私は同時に、どういう人が立ち止まって話を聞いてるか見るのも好きです。
候補者によっては、聴衆がスーツの男性ばかりみたいな時もあれば、主婦のような人が熱心に話を聞いてたりする時もあって、その違いを見るのが面白いです。
同い年くらいの子がビラとか配ってたりすると、私は「ボランティアですか?」「なんでこの人を応援してるんですか?」って話しかけちゃったりします(笑)
そういう時に「この人のこういうところが良くて!」って力説してくれる人に出会えると、元気が出ます!
逆に同じ質問をして、「いや父親にやれって言われて…」みたいな人に出会ったりもするから、面白いですよね。
選挙のたびに前進する「希望」
ーー能條さんはいつも、選挙をすごく楽しんでいますよね。逆に選挙があるたびに、失望したり、無力感を感じたりしている人もいるように思います。
やっぱり選挙は「通過点」でしかなく、そんなにすぐ何かが変わるものじゃないと思っているから、落ち込まないのかもしれません。
どう考えても今の政治の構造や、選挙制度、お金の動き、投票率などを見ると、投票する前から結果が見えちゃうところって、正直あると思います。
それでも、例えば去年の衆院選では、若者の投票率が数%向上したのが、すごく嬉しくて。
誰かが落ちる・落ちないレベルでのインパクトはないかもしれませんが、それでも着実に変化が起きている感覚があって、それが希望なんです。
ーー最後に、能條さんが今回の参院選の結果で、注目しているポイントを教えてください。
やっぱり憲法改正を求めている勢力が、発議に必要な3分の2議席を超えるかは、今後のさまざまな議論を左右するものになると思うので、注目しています。
あとは、女性比率にも注目しています。今回は女性候補が全体の33%で過去最高になりましたが、実際に当選した議員を見たときに、どれくらいジェンダーギャップが埋まるのかに注目したいと思っています。