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「私たちが生きる権利を認めてください」“追悼の日”にあなたに伝えたい7つのこと

11月20日は「トランスジェンダー追悼の日」。日本で始めて開催された「トランスマーチ」に参加した当事者やアライ、家族が伝えたい思いとは。

11月20日は、出生時に割り当てられた性別とは異なる性を自認する「トランスジェンダー」の権利と尊厳について考える「トランスジェンダー追悼の日」。

新宿では「東京トランスマーチ」が開催され、当事者が安心して、安全な環境で生きていける社会を目指して、300人以上の参加者が街を行進した。

主催者によると、トランスマーチが日本で開催されるのは初めてだ。

トランスジェンダーが経験する差別や暴力に光を

トランスジェンダー追悼の日」は1998年にアメリカ・ボストンで黒人のトランス女性が殺害された事件にちなみ、トランスジェンダーが経験する差別や暴力に光を当て、命を落とした人々の死を悼む日とされている。

トランスジェンダーが経験する差別は、LGBTQと呼ばれる性的マイノリティの中でも特に深刻で、トランスジェンダーに対する憎悪殺人の発生状況を調査している「Transgender EU」は、2020年10月からの1年間で375人の当事者が世界各地で殺害されたと報告している。

マーチを主催した団体の共同代表で、トランス男性の浅沼智也さんは「日本では圧倒的に『言葉の暴力』が深刻。SNSやリアルの場においても、様々な言葉でトランスジェンダーが排除されていて、望まない死を迎えてしまう当事者もいる」と言う。

マーチでは多くの参加者がトランスジェンダーを象徴する水色やピンク色のものを身につけ、「トランスジェンダーの権利は人権です」「私たちはトランス・ヘイトを許しません」などと書かれたプラカードを掲げて、街を歩いた。

「わたしたちが生きる権利を認めてください」

参加者はどのような思いを伝えるために、マーチに参加したのか。

久古由貴さん(20代)は当事者の一人として参加しなければと思い、マーチに足を運んだ。

今は周囲や会社にもカミングアウトして「社会の悪意に晒されずに」生活できているものの、トランス女性として生き始めて間もない頃は、電車の中で笑われた経験もあるという。

マーチを通じて伝えたいのは、「私たちが生きる権利を認めてください」という思いだ。

「私はここでこうして生きています!」

自身の体験を著書『総務部長はトランスジェンダー 父として、女として』などで綴ってきた岡部鈴さん(50代)は、「ネットでは、トランスジェンダーは危険を及ぼす存在であるかのようなヘイトが平然と書き込まれています。私たちはここにいる、誰とも変わらない人間であることを伝えるために参加しました」と語る。

社会を変えていくためには、差別を認めない法律の整備とともに、可視化がとても大切だと岡部さんは考えてきた。

「すべての当事者が、手をあげて歩いていくことは難しいと思います。でも一人でも増えることで世の中は変わっていくはず。私がその一人になれればと思っています」

「自分らしくいることをやめないで」

高校生のharuさん(18)とayaさん(18)は、英語で「自分らしくいることをやめないで」と書かれたプラカードを持ってマーチに参加した。

「トランスジェンダーに対する差別を見ていると心が痛くなる。誰もが自分らしく生きていいんだ、自分を隠さなくていいんだと伝えたいです」

「自分らしくいきていく!」「TRANS LIVES MATTER」

中国出身のせいごうさん(24)とアメリカ出身のデレックさん(24)はゲイで、同じLGBTQコミュニティの一員として、トランスジェンダー当事者をサポートしたいという思いでマーチに参加した。

差別に苦しむトランスジェンダーの当事者に伝えたいのは「あなたは一人ではない」「一緒に闘っていきます」という思いだ。

「トランスジェンダーの人権は、あたりまえにあるべき人権です」

しょうこさんは3歳のお子さんを連れて参加した。

「子どもが生まれてから、誰かが差別される社会を変えていくためには、誰かに任せるばかりではなく、ちゃんと自分で行動しないといけないんだと思うようになりました」

「歩くくらいしかできないですけど…。それでも少しずつ自分にできることをしていきたいです」

「トランスジェンダーの子どもたちを守ろう」

Seanさん(34)とRachelさん(34)はトランスジェンダーの子どもを育てる親として、家族で連れ立ってマーチに参加した。

6歳になる娘は、出生時は男子とされたが、今は女の子として暮らしている。

「2歳くらいから『スカートを履きたい』と言うようになって、最初は自分たちも何が起きているのかわかりませんでした」

「一時的なことかもしれないと思って、最初は『家の中ではいいけど、外では男の子として見られてるからダメだよ』などと話していました。でも、毎朝妻と子がそれでケンカしてたんですよね」

「それでこれは自分たちが間違っているんだな、と。身体つきで男の子なんだと自分が勘違いしていただけで、娘は女の子なんだなと気付きました」

娘は来年の春、小学校に入学する。学校側には少しずつ相談を始めており、「不安でもあり、楽しみでもあります」とSeanさんは笑う。

願うのは「娘がトランスジェンダーだと当たり前に言える社会」だと語った。