スイスで開催された世界経済フォーラムの年次総会「ダボス会議」で1月24日、AP通信が撮影した若い環境活動家の集合写真において、黒人の女性活動家だけ写真からトリミングされていたとして、物議を醸している。
黒人活動家だけトリミング?
問題となった写真は、ダボスで記者会見を開いた10~20代の環境活動家たちが並んだ集合写真。
会見には、気候変動に対する世界的なムーブメントを起こしたグレタ・トゥーンベリさん(17)をはじめ、ドイツ、スウェーデン、スイス、そしてウガンダの若い活動家たちが参加していた。
ところが、AP通信が会見などの様子を伝えた記事では、当初、唯一のアフリカ出身で黒人のヴァネッサ・ナカテさん(23)だけがトリミングされた写真が使われていた。
ナカテさんは自身のTwitterに「私だけ写真からクロップされた!どうして?」という言葉とともに、問題の写真が使われていた記事を投稿。
およそ10分に渡る動画でも「生まれて初めて『人種差別』の意味を理解した」と言い、涙ながらに訴えた。
「どうして私たちがこんな思いをしなければいけないのでしょうか。アフリカは二酸化炭素の排出量が最も少ない地域でありながら、気候危機の影響を最も大きく受けています」
「あなたたちが私たちの声を消し去ろうとしても、何の意味もありません。私たちのストーリーを消しても、何も変わりません」
「私たちがどう扱われているか思い知らされた」
これまでにも、環境活動家をめぐるメディアの報じ方について、ヨーロッパの白人の活動家が集中的に取り上げられ、アフリカなどの活動家たちの声が十分に取り扱われていないと指摘されている。
ナカテさんはBuzzFeed Newsの取材に「私が泣いたのは、人種差別的な扱いを受けたことが悲しかっただけでなく、アフリカの人々のことを思うと悲しかったからです」と語った。
「私たちがどのように扱われているかを思い知らされました。とても傷つきました。私が今まで経験した中でも最悪の出来事でした」
ナカテさんはトゥーンベリさんの活動に影響を受け、2018年から活動を始めた。およそ一年前から一人でストライキをしている。
トゥーンベリさんも自身のTwitterで、「こんなことは許されません」と投稿している。
AP通信「悪意はない」
AP通信はのちに、記事に使用されていた写真を5人全員が写っているものに差し替えた。
同社の広報担当はBuzzFeed Newsの取材に、「悪意はありませんでした。AP通信ではこれまでも、ヴァネッサ・ナカテさんの写真は多く配信してきています」と回答。
取材現場から届いた写真を順次掲載・配信しているため、後から届いた写真を差し替えるのは通常通りだといい、今回もそのような対応だったと説明した。