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「僕たちも家族に」「選択肢がほしい」同性婚訴訟、大阪地裁できょう判決。国と争う6人が訴えること

法律上の性別が同じふたりの結婚を認めないのは「憲法違反」だとして、各地の当事者が国を訴えた「結婚の自由をすべての人に訴訟」(同性婚訴訟)の判決が6月20日、大阪地裁で言い渡される。全国2例目の違憲判決となるか。主な争点を整理する。

法律上の性別が同じふたりの結婚を認めないのは「憲法違反」だとして、各地の当事者が国を訴えた裁判の判決が6月20日、大阪地裁で言い渡される。

「結婚する選択肢がほしい」と訴える原告たちに、司法はどのような判断を下すのか。2021年3月の札幌地裁判決に続き、全国で2例目となる「違憲判決」が出るか、注目が集まっている。

全国2例目の「違憲判決」が出るか

「結婚の自由をすべての人に」訴訟とも呼ばれるこの裁判は、東京、大阪、名古屋、札幌、福岡の地裁・高裁で続いており、計36人の原告が「同性婚」の実現を求めて、国と争っている。

裁判の大きな争点は、次の2点だ。

  1. 戸籍や住民票の性別が同じふたりの結婚を認めないことは、「法の下の平等」(14条)や「婚姻の自由」(24条)を保障する憲法に違反しているか

  2. 憲法違反の法律を放置し、必要な法整備を怠ったことは、国家賠償法に反する「立法不作為」で、違法か


昨年3月には札幌地裁が、法律上の性別が同じカップルだけが、結婚によって得られる法的な効果を享受できないのは、憲法14条に反する「不当な差別」だと認める、画期的な違憲判決を下した。

しかし、「婚姻の自由」を保障する憲法24条は男女の異性婚についてのみ定めたものだと判断するとともに、国による立法不作為があったとは言えないとして、原告側の請求は棄却した。

大阪地裁の判決は札幌地裁に続き、全国で2例目となる。再び「違憲判決」が出るか、そして原告側の主張がどこまで認められるかがポイントとなる。

「国会議員のみなさんはこの質問に答えられますか?」

6月20日に大阪地裁で判決が出る関西訴訟では、3組計6人の当事者が原告としてたたかっている。

京都市で暮らす坂田麻智さん(43)と坂田テレサさん(39)は、2008年から交際を始め、2015年には同性婚が認められているアメリカで結婚。今年8月には、テレサさんが第一子を出産する予定だ。

麻智さんは4月に衆議院議員会館で開かれた院内集会で、国会議員を前に、近所の子どもたちにある質問を投げかけられた日の思いを語った。

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「子どもたちに聞いた話ですが、小学校の授業でLGBTについて差別をしてはいけないということを学んだそうです。その子たちが、なぜ日本では同性で結婚できないのかということを聞いてきました」

「国会議員の皆さんは、その理由をきちんと子どもたちに伝えることができるでしょうか?正直、私はまともに答えることができません」

「なぜなら社会や学校では、差別をしてはいけないと教えている一方で、肝心の国の制度は私たちを差別し続けたままだからです」

「同性婚ができても誰も困りません。むしろ多様な家族が認められ、幸せになる人が増えるだけです」

「この世界で自分は一人」 思春期に感じた孤独

香川県三豊市で暮らす田中昭全さん(44)と川田有希さん(37)は、生活を共にして15年が経つ。

周囲にはふたりの苗字を繋いだ「川田中家」の愛称で知られ、男女の夫婦と同じ関係を築いている。

しかし、結婚することができないため、遺産の相続や配偶者控除など、法律上のカップルであれば得られる、さまざまな権利が保障されていないのが現状だ。

田中さんが法廷で読み上げた意見陳述書には、性的マイノリティに対する差別や偏見が根強い社会で、10代の頃に感じた深い孤独が綴られている。

思春期には、「この世界で同性愛者は自分一人だけなんだ」と感じ、孤独感を深めました。楽観的な性格の私ですが、一時は追いつめられて死にたいと思ったこともありました。

もしこの当時、この国に同性婚が存在していたら、そしてその制度を使いカップルとして幸せな日常を送っている人々がいると知ることができていたら、私はあれほど孤立することはなかったでしょうし、将来にも望みを持つことができただろうと思います。

大阪地裁の判決に望むのは…

2015年には、同性婚が認められていないのは人権侵害だとして、日弁連に人権救済を申し立てた455人の当事者に名を連ねた。当時から田中さんの胸にあるのは、今ある「制度」をまず変えなければ、差別もなくならないという思いだ。

「この裁判でも、国は『社会的な承認』がないから同性婚は認められないといった主張をしていますが、男女のカップルだったら理解があるか否かとか、そういうことを考えずとも、結婚できて、公式の家族になれるわけじゃないですか」

「僕たちも同じように家族になることを望んでいるからこそ、裁判で訴えているわけで。やはりまずは制度が先にできないと、前には進まないし、差別もなくならないと感じています」

裁判では、川田さんの父親も証人として法廷に立ち、「2人は切っても切り離せない存在。(国には異性カップルと)平等に扱ってほしい」と訴えた

川田さんは「裁判では自分たちのために、自分たちの主張をしていますが、(同じように結婚ができない多くの当事者)みんなのための裁判であるという思いはあります」と語る。

「今回の判決では、札幌地裁と同じように、同性婚を認めないのは違憲だと認めてほしいですし、国が必要な法整備をしていないことについても言及していただきたいと思っています」

結婚する「選択がほしい」

40代のパートナーと原告になった50代の男性は、周囲にカミングアウトしていないため、顔や実名を伏せた形で裁判を続けている。

陳述書では「一般の男女の場合は結婚が当たり前で、結婚してもいいし、しなくてもいい訳です。しかし、私達にはその選択すらありません」と不平等を訴えた。

「選択がほしい。私たち以降の若い世代には、同性でも、結婚するかどうか選択でき るのが当たり前の社会になってほしいと切に願います」

判決は6月20日午後2時、大阪地裁で言い渡される。