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「黒人専用列車を作るのと同じ」 同性カップル用に“別の婚姻制度”を作る?憲法学者が厳しく批判する理由

同性パートナーと家族になるための法制度が存在しないのは「憲法に違反する状態」だと判断した東京地裁判決。同性同士が使える別の婚姻制度を作る方法もあると示唆した点について、憲法学者の木村草太教授は厳しく批判した。

同性パートナーと家族になるための法制度が存在しないのは「憲法に違反する状態」だと認めた東京地裁(池原桃子裁判長)の判決を受けて、12月2日、国会議員に法整備を求める報告会が、衆議院議員会館で開かれた。

登壇した東京都立大学の木村草太教授(憲法学)は、判決が同性カップルのための「別の婚姻制度」を作る方法もあると示唆した点について、「差別感情に迎合する以外では、別制度にする理由が全くない」と言い、人種隔離政策となぞらえて強く批判した。

弁護団は「違憲状態であるという判決を踏まえて、現行の婚姻制度に同性カップルを含むための法改正を速やかに行うべき」と訴えた。

参加した自民党議員からは「ここから先は私たちの役目を果たさなければならない」と、法整備に前向きな発言もあった。

家族になる法制度ない「憲法に違反する状態」

今回の判決は、法律上の性別が同じふたりの結婚を認めないのは「憲法違反」だとして、日本各地の当事者が国を訴えた「結婚の自由をすべての人に訴訟」の一つ。

2021年3月に札幌地裁が出した「違憲判決」、今年6月の大阪地裁の「合憲判決」に続いて、全国3例目となった。

東京地裁判決は、原告の請求を棄却したものの、パートナーと家族になりたいという希望があるのに、「同性愛者というだけで生涯を通じて不可能になることは、その(当事者の)人格的生存に対する重大な脅威、障害であるといえる」と認定した。

その上で、同性パートナーと家族になるための法制度が存在しないことは「個人の尊厳に照らして、合理的な理由があるとは言えない」と指摘。

結婚や家族に関する法律は「個人の尊厳」などに立脚して制定されなければならないと定めた憲法24条2項に「違反している状態」だと結論づけた。

ではなぜ、原告側の請求は棄却されたのか。それは判決が、どんな法制度を構築するかには様々な方法があり、「現行の婚姻制度に同性間の婚姻を含める方法に限られない」と指摘した点にある。

原告側は、今ある婚姻制度を同性同士のカップルにも適用するべきだと訴えているが、判決は「同性間でも利用可能な婚姻に類する制度を別途構築する方法」を採ることなども可能だとして、現行の民法や戸籍法自体が違憲だと「断ずることはできない」と判断した。

「わざわざ別制度を作るのは…」

木村教授は、今回の判決を「現行の法制度が憲法違反だと明確に認めた『違憲判決』だ」と評価した一方、同性カップルのための別制度を作ることを示唆した点を厳しく批判した。

南アフリカやアメリカでかつて行われていた黒人に対する「人種隔離政策」になぞらえて、「原告は婚姻と同じ効果の制度を求めているのに、わざわざ別制度を作るのは、わざわざ黒人専用列車を作ったり、わざわざ黒人専用学校を作ったりするのと同じような形で、『差別の表示』にほかなりません」と指摘。

「差別感情に迎合する以外では、別制度にする理由が全くなく、立法府は差別を助長する選択をしても良いと(判決は)言っている」と述べた。

原告の一人で、パートナーの西川麻実さんと3人の子を育ててきた小野春さんは、これまで家族と暮らしてきた日々を語り、今ある婚姻制度を同性カップルにも認めてほしいと議員たちに訴えた。

「私たちは本当にただの家族として暮らしてきました。子どもたちも全員、自分たちが家族だということを疑ったことがないと、当たり前に家族じゃないか、何が違うんだろうと言いながら、ここまでやってきました」

「今回の判決では、結婚ではない制度をということが検討されているんですが、私たちは何か特別なものはいりません。お友達の家族と同じものが欲しいんです」

「子どもたちに『なぜ違う結婚なのか』ということを聞かれたら、私には説明することができないと思っています」

自民・牧島かれん議員「私たちの役目を果たさなければ」

違憲状態を指摘する判決を受けて、国会や政府はどう動くのか。松野博一官房長官は11月30日の会見で、「まだ確定前の判決であり、他の裁判所でも同種の訴訟が継続していることから、その判断も注視したい」と慎重な姿勢を示した。

12月2日の参議院予算委員会では、斎藤健法務大臣が次のように答弁した。

「同性婚制度、または婚姻に類する制度の導入に関する問題は、我が国の家族のあり方の根幹に関わる問題で、国民的なコンセンサスと理解を得た上でなければ進めることができない」

「まず国民各層の意見や国会における議論の状況に加え、同性婚に関する同種の訴訟の動向、地方自治体のパートナーシップ制度の導入や運用の状況を注視する必要性がある」

一方、報告会には、与野党から多くの国会議員が参加。自民党の牧島かれん前デジタル担当相は「ここから先は私たちの役目を果たさなければならない。そういう時期に既に入ってきているというのは感じています。一生懸命頑張っていきたいと思います」と語った。

また、公明党の「同性婚検討ワーキングチーム」座長の谷合正明議員は来年、日本が主催国となって開催される「G7広島サミット」を契機にすることはできないか検討していると述べた。

東京地裁で続く2次訴訟・原告の一橋穂さんは、議員たちに向けて「もしもっと原告や当事者の声を聞かなきゃいけないと思われるのであれば、言ってください。何度でも、何度でもお話しさせていただきますので」と力を込めた。