法律上の性別が同じふたりの結婚を認めないのは「憲法違反」だとして、各地の当事者が国を訴えた裁判。
東京地裁(池原桃子裁判長)は11月30日、判決を言い渡して原告側の訴えをすべて棄却したものの、同性パートナーと家族になるための法制度が存在しないことは、憲法24条2項の「違憲状態」だと指摘した。
判決後の会見で、弁護団は「現行法が違憲状態にあると言い切った点では、実質的な違憲判決と評価すべき」と言い、札幌地裁の違憲判決に続いて、「婚姻の平等に向けて前進した」と評価した。
原告側は今後、控訴する方針で検討を進める。
原告の一人の小川葉子さん(50代)は「違憲状態だと明言されたのは、すごく大きな一歩。今後も裁判は高裁、最高裁と続くだろうし、立法府への働きかけも続けていく。前に踏み出していくための大きな一歩をもらった」と語った。
家族になれる法制度ないのは「違憲状態」
今回の東京地裁判決は、「同性婚」の実現を求めて、日本各地で当事者らが国を訴えている「結婚の自由をすべての人に訴訟」の一つ。2021年3月の札幌地裁、今年6月の大阪地裁に続く、全国3例目の判決となった。
大阪では原告側の請求を全面棄却の判決。札幌では原告側の請求は棄却しながらも、同性婚を認めないのは合理性を欠く差別で、憲法14条(法の下の平等)に違反するという判決が出ている。
東京地裁判決の最大のポイントは、同性パートナーと家族になるための法制度が存在しないことは、当事者の「人格的生存に対する重大な脅威、障害であり、個人の尊厳に照らして合理的な理由があるとは言えない」とし、いまの法制度は「憲法24条2項に違反する状態にある」と明言したことだ。
さらに、同性カップルが家族になれる制度を国が作る上で「大きな障害となるような事由」はなく、むしろこうした制度は同性カップルやその子どもたちの生活をはじめ、「異性愛者も含めた社会全体の安定につながる」とした。
この点について、弁護団共同代表の寺原真希子弁護士は、札幌地裁の判決にもなかった「かなり踏み込んだ視点」だ言い、「性的マイノリティが生きやすい社会は、すべての人が生きやすい社会につながるということを私たちは言い続けてきましたが、まさしくそのことを(判決も)言っている」と評価した。
「別の制度を求めているわけではない」
一方で、判決は、同性パートナーと家族になれる法制度を作る方法は様々なものが考えられ、「必ずしも現行の婚姻制度に同性間の婚姻を含める方法に限られない」とも指摘している。
どうした制度にするかは「立法裁量に委ねられ」ており、いまの法制度が「違憲」だと現時点で断ずることはできないと判断した。
この点について、原告の小野春さんは「私たちは現在も男女カップルが利用している結婚制度と全く同じものを求めていまして、特に何か違うものがほしいわけではありません」と、判決後の会見で異議を唱えた。
「だからこそ、全く同じ内容の別の制度を用意するというのはかえって不自然で、それこそが差別ではないかという風に感じています」
政府や国会は今後、どう動くのか
今回、法律上の性別が同じカップルが置かれている状況は「違憲状態」だと指摘する判決が出たことを受け、焦点となるのは、政府や国会が今後、どう動くかだ。
弁護団は声明で「国は、本判決を真摯に受け止め、本件諸規定の改正に直ちに着手し、婚姻の扉を同性カップルに速やかに開かなければならない」と強く訴えている。
原告の廣橋正さんは、涙ぐみながらこれまで裁判を闘ってきた思いを語った。
「パートナーのかつは、僕にとって紛れもない家族だけど、社会的に認められていないために、あらゆる局面で大変な思いをし、自分の存在自体や尊厳が日々傷つけられてきました」
「何のための裁判なのか、何のために僕たちは法廷で自分の生活を丸裸にして、思い出したくないようなつらいことも話しているのかを考えると、それはやはりずっと傷つけられてきた『個人の尊厳』を取り戻すための裁判だからです」
「違憲状態だという判決が出たことは、すごく大きな一歩だと思うので、これからも諦めずに前に向かって進んでいきます」