杉田水脈議員の寄稿は「障害者や患者の人権をも踏みにじる」 支援団体が抗議

    今回の問題を機に、「政治家や著名人による生命倫理に反した発言を、黙って見過ごすべきではない」という思いから会が急きょ立ち上がった。

    自民党の杉田水脈・衆議院議員が月刊誌への寄稿で「(LGBTは)生産性がない」と主張し、税金を使って支援するべきではないと論じた問題で、障害を持つ人や難病患者、その家族から批判の声が相次いでいる。

    「障害者や患者の人権をも踏みにじる」

    「出産と『生産性』を結びつけたあの記事を読んで、涙が出た、悔しくて仕方がない、という難病患者の声をあちこちで耳にするんです。(生産性がない人には)税金を使わせないということにまで触れられていて、危ういと感じました」

    そうBuzzFeed Newsの取材に話すのは、NPO法人ALS/MNDサポートセンターさくら会事務局長の川口有美子さん。亡くなった母親がALS(筋萎縮性側索硬化症)を患い、生まれは女性だったトランスジェンダーの長男を持つ。

    川口さんが呼びかけ人の一人となった「障害者と患者の尊厳ある生を守り、推進する会(仮)」は8月1日、杉田議員を2017年の総選挙で擁立した自民党・安倍晋三総裁に対して抗議声明を出した。

    「杉田水脈氏の発言は、出産できない障害者や患者の人権をも踏みにじるもの」だと批判し、議員の謝罪と処分を求めている。

    相模原事件と「同根」

    会は今回の問題を機に、「政治家や著名人による生命倫理に反した発言を、黙って見過ごすべきではない」という思いで急きょ立ち上がった。

    さくら会と共に、全国自立生活センター協議会と一般社団法人日本難病・疾病団体協議会が呼びかけ人として加わった。難病「筋ジストロフィー」を抱えて生きる詩人の岩崎航さんも賛同者として名を連ねている。

    声明では、杉田議員の寄稿が「性的マイノリティの人権を踏みにじるものであるばかりか、出産を巡り思い悩んでいる障害者の心を深く傷つけた」と訴え、「社会的支援な人々に救済の手をさしのべるべき立場にある国会議員としての適性には、大いに疑問があると言わざるを得ない」と厳しく批判している。

    川口さんは、杉田議員の主張が重度障害者ら19人が犠牲になった相模原事件と「同根」であると指摘。

    何万人もの命を左右する医療や社会福祉政策の決定にかかわる議員であるからこそ、言葉の責任はさらに重いと話す。

    「出産をめぐって悩んでいる難病患者の方や、パートナーとの子供が欲しかったけれどうまくいかなかった私の長男の苦しみも、間近で見てきました」

    「子供が欲しくても産めない人もいれば、産まない選択をする人もいる。弱い人の立場や気持ちへの想像力が欠如している人には、議員を務めてほしくないと思います」

    会は8月7日に記者会見を開き、改めて自民党への抗議と今後の活動方針について発表する予定だという。

    自民党本部は8月2日、「個人的な意見とは言え、問題への理解不足と関係者への配慮を欠いた表現があることも事実であり、(杉田議員)本人には今後、十分に注意するよう指導した」と見解を発表。

    安倍首相は「人権が尊重され、多様性が尊重される社会を目指すのは当然だ。これは政府、与党の方針でもある」と述べた

    抗議声明の全文は、以下の通り。


    自由民主党
    総裁 安倍晋三殿

    自民党衆議院議員である杉田水脈氏によるLGBTへの発言は、性的マイノリティであるLGBTの人権を踏みにじるものであるばかりか、出産しない人は生産性がないから、行政的支援に値しないと断じたものであり、出産を巡り思い悩んでいる障害者(特に内部障害(難病)者)の心を深く傷つけました。

    社会的支援が必要な人びとに、救済の手をさしのべるべき立場にある国会議員としての適性には、大いに疑問があると言わざるを得ません。

    出産の可否を行政による支援の根拠とする価値観は、偏見や差別によるものであることは、火を見るよりも明らかであり、「価値観の違いとして尊重できる」などと、擁護できるものではありません。

    我々は杉田水脈氏に対し、LGBTへの偏見差別を改め、「生産性」により行政支援の根拠としようとしたことを省みて、謝罪することを求めます。

    自民党総裁、安倍晋三氏には、日本国内にこのような差別発言を容認する風潮があることを真摯に受け止め、杉田水脈氏に対して相当な処分を行うことを強く求めます。