杉田氏のLGBT寄稿問題で安倍首相「多様性尊重は当然」 党本部も杉田氏に指導

    杉田氏も「真摯に受け止める」とコメント。

    自民党の杉田水脈・衆院議員が月刊誌「新潮45」に「(LGBTは)生産性がない」などと寄稿し批判の声が高まっていた問題。

    安倍首相が8月2日、「人権が尊重され、多様性が尊重される社会を目指すのは当然だ。これは政府、与党の方針でもある」と述べた。首相が、寄稿内容を遠回しに批判したかたちだ。

    自民党本部もこの日、ホームページでLGBTに関する党の見解(8月1日付)を発表した。

    「わが党は、公約に掲げたように性的な多様性を受容する社会の実現を目指している」「性的指向・性自認に関する正しい理解の増進を目的とした議員立法の制定に取り組んでいる」としており、首相の発言と同じ趣旨のものだ。

    見解ではまた、杉田議員に「問題の理解不足と関係者への配慮に欠いた」として十分に注意するよう指導したことを明かした。

    これを受け、杉田氏は「真摯に受け止め、今後研鑽につとめて参りたいと存じます」とのコメントを出した。朝日新聞が報じた。

    7月31日には、北海道の地方組織である自民党北海道連は、杉田議員の辞職などを求めるLGBT当事者の支援団体や個人でつくる「北海道LGBT市民の連合」に対し、回答書を出した。

    回答書で道連は「杉田議員が差別するような投稿を行ったことは遺憾であり、党本部に適切に対処するよう求めてまいります」としている。

    北海道連の回答書

    自民党は実際に、性的指向・性自認に対する理解を増進する議員立法を行うことを、2017年衆院選の公約に掲げている。

    自民党が2017年衆院選で掲げた選挙公約

    幹事長は問題視せず

    だがこの問題を巡り、党の動きは鈍かった。

    新潮45が発売されたのは7月18日。ネット上などではすぐに、寄稿内容を問題視する声が広がった。

    一方、自民党ナンバー2として党務を司る二階俊博幹事長は7月24日の会見で、「人それぞれ政治的立場、いろんな人生観、考えがある」「右から左まで各方面の人が集まって自民党は成り立っている。別に大きな驚きを持っているわけではない」と述べ、杉田氏を問題視しない考えを示していた。

    二階氏は8月2日、「こういうことはそんなに大げさに騒がないほうがいいんです。この程度の発言があったからと言って、帰国してからどうだってそんな話じゃありません」と述べており、静観する姿勢を改めて維持した。

    また、安倍首相の事務所は、杉田氏に対する見解を求める毎日新聞の取材申し入れに対し、「この種の問題についての回答は控える」として拒否していた。

    毎日新聞が安倍氏に取材したのには、理由がある。

    立候補の経緯を説明する杉田氏のツイート

    【自民党からの出馬が決まりました】facebookやツィッターを停止しており、皆様には大変ご心配をおかけいたしました。急な解散に伴い、複数の政党より出馬の要請を受けておりました。が、この度、自民党からの出馬が決定いたしました。最後に背中を押していただいたのは櫻井よしこ先生です。 https://t.co/vwPmxBlfHR

    Twitter: @miosugita

    杉田氏は2017年9月にTwitterで「櫻井よしこ先生から背中を押されて自民党から出馬することになった」と表明。そこで紹介しているビデオで櫻井氏は「安倍さんが、杉田さんはすばらしいということで、萩生田さん(前官房副長官)がお誘いした」と経緯を説明している。

    杉田氏は2017年衆院選で、比例区中国ブロックの上位に登録され、当選した。氏の発言が事実であれば、安倍氏が側近の萩生田氏を通じ、以前は「日本のこころを大切にする党」にいた杉田氏を自民党に誘い、比例区名簿の当選可能圏に置いたことになるからだ。

    「趣味」みたいなもの

    自民党議員からは、杉田氏のほかにもLGBTに対する理解のなさを示した発言が出ている。

    谷川とむ衆院議員(大阪19区)は7月29日、ネットテレビ「AbemaTV」で「多様性を認めないわけではないが、法律化する必要はない。『趣味』みたいなもので」と述べた。

    その後、朝日新聞の取材に対し「申し上げたかったのは、(婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立すると定めた)憲法24条により現状では同性婚の容認は困難であるということ」と釈明した。党の見解との食い違いについての質問には回答がなかったという。

    なお、憲法24条を巡っては、複数の憲法学者専門家が「結婚に父親や兄の許しが必要だった戦前の家父長制を否定し、当事者だけの合意で結婚できるようにするための条文であり、同性婚を禁じたものではない」との解釈を示している。

    平成28年2月、自民党政調会長だった私は、LGBTの方々が自分らしく、人として尊重され、活躍できる社会を実現するため、特命委員会を立ち上げた。今、この委員会ではLGBTの理解増進のための議員立法の作業中だ。私は多様性を認め、寛容な社会をつくることが「保守」の役割だと信じる。


    一方、保守派として知られる稲田朋美元防衛相は7月24日、2年前のことを振り返り「自民党政調会長だった私は、LGBTの方々が自分らしく、人として尊重され、活躍できる社会を実現するため、特命委員会を立ち上げた。今、この委員会ではLGBTの理解増進のための議員立法の作業中だ。私は多様性を認め、寛容な社会をつくることが「保守」の役割だと信じる」とツイートしている。

    アップデート

    杉田水脈議員と二階幹事長の8月2日のコメントを、それぞれ本文中に追加しました。