トランスジェンダーの女性を演じたドラマ「Pose」で注目を集め、TIME誌の「世界で最も影響力のある100人」にも選ばれた俳優インディア・ムーア。
自身もトランスジェンダーのムーアさんは9月6日、NYファッションウィークの開幕を飾る「Fashion Media Awards」の授賞式に、ある特別なイアリングをつけて現れた。
16人の遺影とともに
銅製の小さな額縁が連なるイアリングに収められていたのは、2019年にアメリカ国内で殺害された16人のトランスジェンダー女性たちの遺影だ。
アメリカではトランスジェンダーを狙った暴力事件が相次いでおり、2018年には少なくとも26人が死亡したとされる。その多くは、黒人のトランスジェンダー女性だった。
ムーアさんはこの日、ファッション誌が選ぶ「年間最優秀表紙賞」を受賞した。その受賞スピーチで、イアリングを身につけた理由をこう語った。
「私がありのままの自分を見せて、自分の存在を伝えていることを皆さんに祝福していただける今日、彼女たちをこの場に一緒に連れてこようと決めました」
「私と同じように、彼女たちは生きる自由を危険に晒してでも、自分たちの存在を世界に伝えようとしていました」
「ところが彼女たちは祝福されずに、ただ罰せられたのです」
17人目の写真も
ムーアさんはイアリングと一緒に、もう1枚の写真を額縁に入れて持参した。そこに写っていたのは、授賞式の数日前に殺害された17歳のトランスジェンダー女性だ。
「イアリングを準備してくれたスタイリストは、イアリングの完成から授賞式までの間に、また誰かが命を落としてしまったらどうしようと心配していました」
「そして、9月2日、17歳の女の子がワシントンD.C.で射殺されました。彼女は17人目です。銃で殺害された黒人のトランスジェンダー女性の中で、最も若くして亡くなりました」
「イアリングに彼女の写真を入れることはできなかったけれど、皆さんに彼女のことを知ってほしいと思い、写真を持ってきました」
ムーアさんはトランスジェンダーを取り巻く環境について訴えると、「私たちも、この社会に居場所があると実感できなければなりません。皆さんが日々、そう実感できているように」と語った。
イアリングを手がけたデザイナーは「あのジュエリーは祭壇だった。インディアのスピーチは祈りであり、未来に向けたアクションを起こすよう呼びかけるものだった」とInstagramに綴った。