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「日本の法律では認められていませんが…」駐日英国大使館で迎える“人生で1番素晴らしい日”。ふうふになった2人の思い

世界30以上の国と地域で認められている法律上の性別が同じ人同士の結婚。東京・千代田区の駐日英国大使館でも、同性カップルが婚姻届を提出して、セレモニーを挙げることができます。2022年夏に結婚したふたりの「特別な日」を取材しました。

法律上の性別が同じふたりの結婚が、今も認められていない日本。

一方、世界の30以上の国と地域では、同性同士の結婚が認められています。2013年に「同性婚」を法制化したイギリスも、そうした国々の一つです。

実は、東京都千代田区にある駐日英国大使館でも、同性婚が認められた翌年から、同性カップルが婚姻届を提出して、セレモニーを挙げることができるようになりました。

そこで、昨年の夏に大使館で結婚したふたりの「特別な日」を取材しました。

65組以上の同性カップルが結婚

駐日英国大使館で結婚できるのは、2人のうち少なくとも1人がイギリス国籍を持つカップル。これまでに大使館の職員を含む65組以上のカップルが、大使館で結婚してきました。

本日、駐日英国大使館にて、領事部長のマーティン・オニールが56組目の同性婚式を執り行いました。オンラインで世界中から集まったご家族とご友人の方々とお祝いできたことを大変嬉しく思います。ルークさん、たけひろさん、おめでとうございます!❤️

Twitter: @UKinJapan

この日、誓いを交わしたのは、日本国籍のみほさんと、イギリス国籍のアンヤさん。ふたりは2年半ほどの交際期間を経て、結婚を決意しました。

セレモニーを執り行ったのは、大使館に務める外交官のステファン・クライエンボーグ・ニコルズ副領事です。

冒頭でニコルズ副領事から「私たちは日本政府の合意のもと、大使館で同性婚の結婚式を執り行っていますが、こうした結婚はまだ、日本の法律では認められていません」と説明があり、式が始まります。

世界30以上の国と地域で認められている「同性婚」。 駐日英国大使館でも、同性カップルが婚姻届を提出し、セレモニーを挙げることができます。 式を執り行う大使館の領事部長は「ほかの結婚と全く一緒。式は愛し合うふたりを祝福するもので、その一端を担えることは私たちの誇りです」と語ります。

Twitter: @BFJNews

ニコルズ副領事からは、ふたりにこんな言葉が贈られました。

「個々人にとって結婚とは、ふたりの人間が共に人生を送り、様々な経験を共有したいと願うことです」

「みほさんとアンヤさんは、ふたりが築いた関係に愛、友情、幸せ、そして充足感を見出しました。そしてふたりは今、結婚がもたらす支えや安心をお互いに授けることを決めたのです」

その後、ふたりは友人や家族に囲まれながら婚姻届に署名をし、お互いを妻とする誓いを交わしました。最後に指輪を交換し、晴れて「ふうふ」となりました。

「妻なの?」交わした笑顔

みほさんとアンヤさんは共に日本で暮らしており、仕事や生活の拠点も全て日本にあります。家族や友人を式に呼ぶことなどを考えても、日本で結婚したいと考えていました。

しかし、日本では法律上の性別が同じ人同士の結婚を認める制度がないため、大使館で結婚できることを知るまでは、手続きのために一度、イギリスに行かなければならないと考えていました。

セレモニーが終わった後、お互いの顔を見ながら「私たち既婚者なの?」「妻なの?」と嬉しそうに確認しあっていたふたり。

「家族や友人みんなに海外に来てもらうのは難しいと思っていたので、本当にここで結婚できてラッキーだったと思います」とみほさんは語ります。

日本では「婚姻関係」と認められず

この日、晴れて結婚したみほさんとアンヤさんですが、日本では、海外で結婚した日本人と外国人の同性カップルの「婚姻関係」が認められていません。

同性同士が結婚する自由を求めて2019年に始まった「結婚の自由をすべての人に訴訟」の原告の中にも、アメリカで結婚したことを示す証明書と一緒に婚姻届を提出したものの、不受理となったふうふがいます。

みほさんとアンヤさんの場合も、イギリスや諸外国では妻同士になりますが、日本では独身のままの扱いになります。

みほさんは「今回、家族や友人に式に参加してもらい、晴れて家族となったことはとても嬉しいです。でも、会社の福利厚生制度で既婚者と認められるわけでもないし、苗字を変えられるわけでもないし、生活面ではこれからも葛藤が続いていくのかなと思います」と語ります。

アンヤさんも「イギリスの法律上では既婚者になったけど、日本の法律上ではまだ独身のままなので、曖昧な部分が多く、不安定な状態だと思います。特に子育てをしたり、病気で入院したりする時のことを考えると、曖昧な状態が続くことには不安があります」と話します。

「誰もが平等に社会に参加できるのは、民主主義社会にとって大事なことです。周りにもパートナーシップ制度があるから大丈夫だと思っている人がいますが、パートナーシップ制度はありがたいものですが、法的には何の効力もありません」

「やはり結婚できないと、平等に、社会の一部になれない状況が続いてしまうと思います」

「人生で最も素晴らしい日をサポート」

これまで何度も駐日英国大使館で「同性婚セレモニー」を執り行ってきたマーティン・オニール領事部長は「式を行うたびに、人生で最も素晴らしい日をサポートさせてもらうことができることを、とても光栄に感じます」と語ります。

「多くの人にとって結婚式は、旅の終着点であり、ふたりがこれから歩んでいく長い旅路の出発地点でもあります。そのような美しい瞬間に立ち会えることは、本当に光栄なことです」

駐日英国大使館は、Twitterでも性的マイノリティの権利向上に向けたメッセージを発信するなど、LGBTQへの支援に力を入れています。

“素敵な結婚式にいつも新郎と新婦が必要とは限らない” 英国では同性婚が可能です。 英国政府の #LGBT+ 課題に対するアプローチは、あくまでも、平等を達成するにはどうしたらよいか?と考えることからはじまります。 同性婚の実現は一つの答えでした。 #プライド月間 🌈 #GREATlove

Twitter: @UKinJapan

「“素敵な結婚式にいつも新郎と新婦が必要とは限らない”」と投稿した駐日英国大使館の公式Twitter

「すべての人が平等に扱われ、差別を受ける恐れなく、それぞれの愛を表現し、社会に参加することができる社会こそが、最も安全で、最も豊かだと私たちは考えているからです」とオニール領事部長は語ります。

日本では、同性同士の結婚を認めると「社会が崩壊する」などとして、根強く反対する声があります。オニール領事部長は、そうした意見には「反対せざるを得ない」と言います。

「意見を表明する権利は尊重しますが、イギリスでの私たちの経験は、その正反対とも言えるものです」

「多くの同性カップルが強く健やかな家族を築いています。イギリスでも遠い昔にそういった意見を持っていた人がいたかもしれませんが、その考えが正しかったと証明されたことは一度もなく、その正反対だったと言えます」

「どんな国家が愛を違法にできるか」

リビーさん、りほさん、英国大使館での挙式おめでとうございます🎉 2014年に英国婚姻法が施行して以来、駐日英国大使館では55組のカップルが同性婚挙式をあげており、本日は領事部長のマーティン・オニールが式を執り行いました。リビーさんとリホさんのこれからの人生に幸多からんことを💕

Twitter: @UKinJapan

同性婚の法制化から10年近くが経ち、再び同性同士の結婚を禁止しようという動きがイギリスで起きたこともないと語ります。

「そんな声は一度も聞いたことがありません。なぜそんなことを検討するのでしょうか?これは権利なのです」

「どんな国家が『愛』を違法にすることができるでしょうか。政府が市民に対して『誰なら愛していい』『誰はダメだ』と指図することが、なぜ許されるのでしょうか」

「ビートルズは何と言いましたか?All You Need is Love(愛こそは全て)です」

オニール領事部長は、日本で同性同士の結婚を求めて裁判が行われていることについて、「日本国内の個別の訴訟についてコメントすることは避けたい」と述べたものの、今後「同性婚」をめぐる議論を続ける上で必要なことを聞くと、こう答えました。

「まずは世界中を見渡すべきだと思います。同性同士の結婚が広まり、繁栄している国々を見て、なぜそうした状況が起きているかを理解し、『迷信』を取り払うべきです」

「これは愛し合うふたりの愛の祝福なのです。そして、愛を阻止することなんて、誰にできるでしょうか?」