• electionjp badge

「なんでおじさんばかりなの?」若者が立候補できない参院選。その理由は? 見え隠れする“政治家の本音”

10代や20代が立候補できない参議院選挙。被選挙権年齢の引き下げを求めて署名運動を始めた「日本若者協議会」代表理事の室橋祐貴さんは、「同年代の候補者がいないから、国会議員は自分たちの代表だという意識も乏しくなる」と指摘します。

「なんで候補者っておじさんばっかりなんでしょう?」

7月10日投開票の参議院選挙を前に、BuzzFeed Newsが選挙に関する質問を読者から募集したところ、こんな声が寄せられました。

選挙に出馬できる年齢は、1950年に制定された公職選挙法によって、参議院で30歳、衆議院で25歳と定められています。

選挙で一票を投じる「選挙権」は、成人年齢とともに18歳に引き下げられたのに、選挙に出られる「被選挙権」はこのままでいいのか。

被選挙権年齢の引き下げを求めて、企業と連携して署名活動を始めた一般社団法人「日本若者協議会」代表理事の室橋祐貴さん(33)に問題点を聞きました。

投票する権利だけでは「正直弱い」

ーー今回の署名活動では「若者の声を社会に届けて真の変化を起こそう!」というスローガンを掲げています。どうして被選挙権年齢の引き下げが重要なのでしょうか?

まず第一に、投票できる「選挙権」は、権限として正直、弱いものだと思っています。日本では数年に一度、国政選挙がありますが、選挙権はその時にしか行使できない権利です。

一方、「被選挙権」を得て、実際に国会議員になることができたら、普段から国会で発言したり、活動資金をもらって色んな調査や活動ができたりと、政策への影響力に決定的な違いがあります。

例えばデジタル化の遅れや少子化の加速など、日本には様々な課題がありますが、デジタルネイティブの若者世代や子育て世代が国会に入って、議員の構成から変えた方がいいんじゃないか、といった発想が欠けていると思います。

また、投票率にもいい影響を与えると考えています。

今回の参院選の候補者の平均年齢は51.7歳です。これは候補者の平均年齢なので、実際に当選する人の年齢はもっと上がると思います。

10代と20代の候補者が誰もいない状態で、若い世代にとっては、選挙が非常に遠いものになっています。

やっぱり同年代がいないから、国会議員は自分たちの代表だという意識も乏しくなり、投票先が見つからないから投票しない…ということにもつながっていると思います。

ーー海外では、被選挙権年齢は何歳の国が多いのでしょうか?

国会図書館の調査(2020年)では、経済協力開発機構の加盟国で、二院制の19カ国のうち、(日本の参議院に当たる)上院の被選挙権(=立候補できる)年齢は、18歳が8カ国、21歳が2カ国、24歳が1カ国、25歳が1カ国で、12カ国が日本よりも低い状況でした。

その中でも韓国は昨年、国会議員や地方議員の被選挙権年齢を、18歳へ引き下げました。今年6月に行われた地方選挙では、19歳や20歳の候補が当選しています。

なぜ「腰が重い」のか

ーー日本では被選挙権年齢の引き下げに向けて、これまでどのような動きがあったのでしょうか?

日本若者協議会は団体を設立した2015年から、被選挙権年齢の引き下げを求めて、国会議員と連携して活動してきました。

2018年には日本若者協議会が事務局となり、与野党の議員が集う「若者政策推進議連」を立ち上げました。

同年11月には、各政党の政調会長に対して「被選挙権年齢を18歳へ引き下げるべき」との提言を提出しました。当時の自民党の政調会長は、現首相の岸田(文雄)さんです。

しかし、その後もなかなか動きはありません。今回の参院選では、主要6党(自民・公明・立憲・国民・維新・共産)が、公約の中で被選挙権年齢の引き下げに触れていますが、それでも腰が重い部分があるのかもしれません。

ーーなかなか国会での議論が進まないのは、理由があるのでしょうか?

表面的には、まず学生が政治家になるのは、どうなんだという懸念があるようです。

学生と国会議員は両立できないから、引き下げるにしても(4年制大学を現役で卒業する)22歳までは下げないほうがいいんじゃないかといった声も聞きます。

大学などをやめてまで政治家になったとして、その後落選したらどうするのか?という懸念もあるようですが、正直、余計なお世話だと思ったりもします。

上の世代の人にとっては終身雇用が当たり前で、新卒で就職できないことは大きなリスクだと感じるのかもしれません。

でも、今の被選挙権年齢では、出馬できるようになる年代が、ちょうど子育てを始めたり、転職をしたりする、人生の転換期とぶつかっています。

選挙に出るには一番リスクが高く、出づらい年代と言えると思います。

「お客さん」が増えるのはいいけれど…

また、これまで政治家に働きかけてきた中で感じているのは、本音の部分では、やはり競合を増やしたくないという思いがあるのではと思っています。

特に地方議員の選挙では、新人の女性や若い候補が結構上位で当選することがあるので、現職議員からすると、落ちるリスクが高まることを恐れているのではと思います。

18歳選挙権によって「お客さん」的に投票する人が増えるのは構わないけど、議席を取り合う競争者として若い人が入ってくるのは正直避けたい。それが本音ではないでしょうか。

ーー一方、地方議会では「なり手不足」の問題が深刻化しています。

2019年の統一地方選では、全国945の選挙区のうち39.3%で選挙が行われず、無投票でした。議員を選ぶ機会もないということです。

それなら、もっと若者も出馬できるようにしてよと思いますが、議員年金の復活や待遇の向上などに議論が集中しています。

若い世代自身はどう感じてる?

ーー実際に出馬できるようになる若者世代は、被選挙権年齢の引き下げについてどのように考えていると思いますか?

2019年に議連で全国の大学を回って、授業でお話しさせてもらった時の感覚としては、若干微妙なトーンで、賛成・反対が半分ずつくらいかなと感じました。

若者自身が、自分たちには政治の知識や社会経験がなく、未熟だと感じている部分があるのだと思います。

日本財団が今年、日本・アメリカ・イギリス・中国・韓国・インドの17~19歳を対象に実施した調査では、「自分は大人だと思う」「自分は責任ある社会の一員だと思う」と答えた割合が、日本が最も低いという結果でした。

日本の主権者教育は、投票を通じて「外」からどう政治に参加していくかを教える内容になっていて、真の主権者教育になっていないことも影響していると感じます。

若い世代にはまず、自分たちに十分に政治に参加する権利が与えられていない事実を知ってほしい。

そして、その現状に対して、自分たちはどう考え、行動していくのか、という問いを投げかけたいと思っています。



企業「未来を直接担っていく若者たちが…」

日本若者協議会と連携して、署名運動を立ち上げたのは、化粧品メーカーの「THE BODY SHOP」。若者による政治参加の向上を目指したキャンペーンをグローバルで展開しています。

活動内容を紹介した冊子を店頭で配布し、関連製品の売上の一部を「日本若者協議会」行っている被選挙権引き下げに向けた活動の支援に充てる予定です。

同社の担当者は「今回のキャンペーンは、社会をよりよくするために機能すべき政治に若者が十分に参加できているのか?ということに疑問を持ったことから始まりました」と語ります。

「私たちは未来を直接になっていく若者たちが、もっと気軽に社会との親密な関係を築けたら、時勢に対して意欲的に目を光らせ、のびのびとしたパワーを発揮していくことができたら、きっと未来はもっとずっと、明るいものになっていくのではと考えています」とコメントしました。


7月10日に投開票日を迎える参議院議員選挙。

なんで選挙カーってあんなにうるさいの? ネット投票まだ? 投票方法から選挙の仕組み、選挙運動の謎までーー。

BuzzFeed NewsのLINE公式アカウントやInstagramに読者のみなさんから寄せられた「#選挙のなんでなん?」を、記者が取材しました。