自民党の男性議員が9月25日、足立区議会で「(同性愛者だって)法律に守られているんじゃないかなんて話になったんでは足立区は滅んでしまう」などと発言し、差別的だと批判が広がっている。
男性議員はBuzzFeed Newsの取材に「私は間違った発言はしていないと思っている。(学校教育の中で)LGBTの話ばっかり、性の自由化ばっかりが出ているが、子どもを産んで育てることの大切さも教えていかないといけないというのが、全体の趣旨だから」と答えた。
足立区で同性パートナーシップ制度の導入に向けて活動している大学院生の男性(26)は「子どもを産まない性的少数者による『滅亡』から足立区を守るという独善的な考えのために、性的少数者の人権を蹂躙する発言だと感じました」と語った。
「足立区は滅んでしまう」

問題の発言をしたのは、自民党の白石正輝議員(78、当選11回)。白石議員は9月25日に開かれた区議会定例会の一般質問で、「超少子高齢社会に対する対応について」という趣旨で、教育長らに質問をした。
事前に提出された質問通告書には、次のように書かれていた。
「少子化問題は政治の大きな課題として取り上げられてきた。しかし『ひとりでも多く子どもを産んでほしい』『最低3人は』等と発言すると、『女性蔑視だ』『軍国主義につながる』という非難にさらされ、政治家は口をとざし、その上、性の多様化、性的マイノリティを守ろうという美辞麗句の下、全国の自治体の中には、こうした傾向を自重するかのような法律や条例が制定され、あたかもLGBTを擁護し、助長するものと思う」
「(中略)LGBTについては、人それぞれの生き方であるから、非難する 気持ちはないが、正常な結婚をし、子どもを産み育てることは、人として最も崇高な使命であると思う。 学校教育の中で、子ども達にしっかり伝えるべきと思うがどうか」
実際に9月25日に開かれた議会では、こう発言した。
「性の多様化だとか、LGBTと言われて、性の自由を尊重しようという地方自治体があちこちに今生まれつつある。私は、人間の生き方ですから、本人の生き方に対して干渉しようとは思いません」
「L(レズビアン)であろうと、G(ゲイ)であろうと、本人の生き方に干渉しようとは思いませんけれども、考えてください。こんなことはあり得ないことですけれども、日本人が全部L、日本人が男は全部G、次の世代生まれますか。1人も生まれないんですよ。1000年とか200年じゃないんだ。次の世代を担う子どもたちが1人も生まれない。本当にこんなことで良いんだろうか」
「私たちは、人間も動物の一種ですから、なんとしても、子孫の繁栄というものを、基本にしてものを考えないといけない。子孫はどうなっても良いんだという考え方、今後、日本も足立区もどうなっても良いんだという考え方に立って、ものを考える訳にはいかない」
さらに、教育長に対する質問では、自分自身が子どもを3人育て、孫やひ孫がいることに触れながら、こう述べた。
「子どもを生んで、子どもを育てることが、経済的、社会的にも大変かもしれないけれども、本当に素晴らしいことなんだ、本当に楽しいことなんだと、そのことを教育の場でしっかりと子どもたちに教えないと、いや、LだってGだって法律に守られてるじゃないかなんていうような話になったんでは、足立区は滅んでしまう」
白石議員の発言を記録した動画が浮上すると、Twitterでは問題点を指摘する声が相次いだ。
「『日本人みんながLGBTになったら国は滅びる』のだそう。今すぐあなたが同性愛者になれと言われてもなれないでしょう。まず事実として認識が間違っているし論理もめちゃくちゃ」
「日本人みんながLGBTになったら国は滅びる」のだそう。今すぐあなたが同性愛者になれと言われてもなれないでしょう。まず事実として認識が間違っているし論理もめちゃくちゃ。学びもせず居酒屋談義のように議会で無知と偏見をまき散らす議員、一刻も早く辞職してほしい。 https://t.co/yD82XaUx1L
「ひどいヘイト。私たちは"広がる"のではなく、『いる』だけだ」
【自民党 白石正輝議員の発言】 足立区議会本会議で、 「LとG、これが完全に足立区に広がってしまったら、30年40年後に(住民が)いなくなっちゃう」 「LやGが法律で守られているということになったら足立区は滅びる。」 と発言。 →ひどいヘイト。私たちは"広がる"のではなく、「いる」だけだ。 https://t.co/UOSePiUEyl
「LGが足立区に広がって滅亡する、という全く現実的でないもしも話をするよりも、この方が言うところの『普通に結婚し、普通に子供を産み、普通に子育てをする』が何故出来ない社会になっているのかを勉強して考えるのが政治家の仕事では?」
足立区議の発言を聞いて LGが足立区に広がって滅亡する、という全く現実的でないもしも話をするよりも、この方が言うところの「普通に結婚し、普通に子供を産み、普通に子育てをする」が何故出来ない社会になっているのかを勉強して考えるのが政治家の仕事では?と思った。
杉田水脈議員の「生産性がない」を擁護
また、2018年に、同じく自民党の杉田水脈議員が「LGBTのカップルのために税金を使うことに賛同が得られるものでしょうか。彼ら彼女らは子供を作らない、つまり『生産性』がないのです」と主張し、批判を浴びた寄稿記事の内容とも重なると指摘する人も相次いだ。

実際に、白石議員は2018年9月21日の足立区議会定例会で、杉田議員の主張を擁護するような発言をしていた。
「杉田議員が発言した中で、表現の仕方はやや、若干問題ありますよ。表現の仕方については若干問題がある。LGBTだけじゃなくて、例えば生まれつき、後天的に障がいがあって、子どもが産めない人もいます。また、子ども幾ら欲しいと努力しても、子宝に恵まれない人たちもいるんですから、この人たちのことについては、私は何も言うことない」
「お気の毒だなあとは思いますけれども、この人たちを批判する気はない。ただ、子どもが生まれないカップルが当たり前だということになれば、日本がなくなるだけじゃないんですよ、人類そのものも滅亡する。このことをなぜマスコミは言わないのか。なぜマスコミは言わないのか。私はマスコミの報道の仕方に大きな問題があると思います」
足立区で同性パートナーシップ制度の導入に向けて議会に働きかけてきたパンセクシュアル(全性愛)の男性(26)は、白石議員の議会での発言は「これ一点が問題ということは選びかねるほど問題が多い」と語る。
「まず、同性カップル(とりわけ、ゲイ・レズビアンを標的にして)が感染症のように広がってしまうとしたこと。出生率の向上に寄与しないとして、子どもを産まない存在を蔑ろにするように感じること。(同性婚やパートナーシップ制度が国として法制化されていない中)ゲイやレズビアンが法的に保護されていると認識しているかのような発言があることが、大きな問題であると思います」
「このような発言を繰り返してきた議員が足立区の代表者であることが信じられません。また、長くにわたってその座に居続けるというのが重ねて信じられません」
「私は間違った発言はしていない」
足立区議「同性愛者、法律で守られたら区滅ぶ」批判続出 https://t.co/TuDYNwrYHB
白石区議は、発言が批判されていることについて「私は間違った発言はしていないと思っている」とBuzzFeed Newsの取材に答えた。
「私は間違った発言はしていないと思っているから。全体は少子化傾向に関する話で、(学校教育の中で)LGBTの話ばっかり、性の自由化ばっかりが出ているけど、子どもを産んで育てることの大切さも教えていかないといけないというのが、全体の趣旨だから」
「それは決して間違ってるわけじゃないし、人口がどんどん減っていて、それはLGBTの人の責任じゃないにしても、日本の人口は1000年もしないでゼロになりますってのは集計で出ているわけだ。それを今のうちに、私たち政治家は手を打たないとと思って発言した」と述べた。

また、「教育によって同性愛者が増えたり減ったりすることはなく、少子化に結び付けること自体が誤っている」という指摘に対する見解を聞くと、「たとえを言っただけで、それはあり得ないと私も言ってるんだから。そんなことあり得ないものだから、私もある意味安心はしていますけど」と答えた。
その上で、「ただもしそうなったら次世代そう(人口ゼロ)なりますよということは、よほど考えないといけない。私自身は今の状態で安心してますよ。あり得ないことではあるけど、計算上だけで言えば、現実は足立区民はゼロになりますよというのは否定できないんだから」と続けた。
子どもを産めない人、子どもを持たないという選択をする人についてはどう考えているのかと聞くと、「それはその人の自由。強制的に子どもを産ませるなんてことは考えていない。それは、やろうとしたって無茶なことだから。ただ、子育ては大変だよっていうような考え方を子どもの頃から植え付けたら大変なことになるよ、ということ」と語った。