タクシーのUberが出前「UberEATS」開始  広がるキッチン、変わる働き方?

    9月29日ランチから都内でスタート

    配車アプリで知られるテック企業「Uber」は9月29日、東京都内で提携レストランの料理を届けるサービス「UberEATS」(ウーバーイーツ)を始める。「白タク」を防ぐ道路運送法が壁となって米本国のように配車サービスを展開できない日本で、フード宅配サービスは浸透するか。

    スタートは29日午前11時。利用可能エリアは渋谷・恵比寿、青山・赤坂、六本木・麻布で、順次拡大する。150店と提携し、数百円の肉ジャガから2万円のステーキまでそろう。

    開始日から1ヶ月間は「ワンコインキャンペーン」として、一品500 円(税別)で試せるプロモーションをする。

    宅配の仕組みは簡単。「料理を運んでもらいたい提携レストラン」「宅配で収入を得たい提携配達員」「出前をしてほしい客」の3者をUberEATSのアプリが仲介する。Uberは手数料収入を得る。配車ビジネスで培ったマッチングの技術や知見を活用する。

    ボタン一つで

    宅配を頼みたい客はどうすればいいのか?

    利用者はGoogle Play StoreやApp Storeからアプリをダウンロード。名前や住所、クレジットカード情報を登録する。すでに持っていればUberアカウントもそのまま使える。

    配達可能なレストランが自動的に表示されるので、画面に並ぶ料理から注文する。値段は原則、店内価格と同じ。配達料は「当初はプロモーション的に無料にする。今後どこかの段階で取る」(Uber Japanの髙橋正巳社長)という。

    注文が入ったレストランは、店の混雑状況などから完成見込みの時間を入力する。出来上がりのタイミングに合わせて、宅配可能な配達員が店舗に向かう。

    世界での平均的な配達時間は34分。客のアプリには配達までの時間も表示される。

    UberEATSとして8 カ国 34 都市目の展開となる東京。高橋社長は「残業で大変なとき、出前のバインダーを見て選ぶのではなく、(UberEATSなら)どんどん新しいお店や料理を発見できる。ホームパーティやピクニックでも活用できる」などと胸を張った。

    ちなみにボッチにも向く。高橋社長は「仕事で成果を上げたご褒美に『あのお店のアラビアータが食べたい』けど、一人だと店に入りづらいとき。ボタンを押して家に届けてもらうことができる」と話した。

    柔軟な働き方

    配達員は「好きなときに好きなだけ働ける」(高橋社長)のが特徴だ。

    あらかじめ登録、審査を通れば、ボタンを押すだけで仕事を受けられる。空き時間を使って、柔軟に働けるのがメリットだ。

    すでに東京で1千人以上の配達員を確保した。学生や主婦、退職者などが、自転車とスクーター(125cc以下)で配達する。

    配達員は宅配1件ごとに収入が得られる。距離によって変わるが、都内で1時間あたり3件の配達をこなせば、時給1300円ほどになると想定している。週単位で支払いを受けられる。

    今後は、雨天時や、配達員が少ないときに値段を上げる仕組みも導入するという。

    レストランの業容拡大

    レストラン側にもメリットがある。車両や配達員の確保といった初期投資なしに、宅配を始められる。

    固定費は一定のまま、限られたキッチンを効率的に使って、売上を伸ばすチャンスを得られるというわけだ。既に提携した150店のうち6割以上が宅配に初参入だという。

    宅配で試した客を店舗へ誘導できれば、顧客基盤を広げられる。UberEATSは世界共通のアプリなので、海外客も見込める。

    記者会見で登壇した精進料理「宗胡」の野村大輔オーナーシェフは「海外の方にも素晴らしい精進料理の文化を知ってもらいたい」と意気込んだ。「3品ずつぐらいが何分かごとに届いて、自宅にいながら懐石コースを食べられる可能性が実現できたら」と夢も膨らませた。

    責任問題

    ただ、配達員が交通事故に遭ったらどうするのか。

    配達員が事故で第三者に損害を与えた場合は、Uberの加入する保険でカバーする。だが自損事故は、配達員自らが入る自賠責保険や任意保険でカバーしてもらうと主張する。

    そもそも、Uberと配達員は雇用関係にない。労災保険はおりない。

    食中毒が起きたらどうか。

    責任はレストランが持つ。Uberはあくまでレストラン、配達員、客をつなぐITプラットフォームという立場だ。BuzzFeed Newsの取材に高橋社長は「いつオーダーが入って、何時何分にできて、いつ誰がピックアップして、どこのルートを通ってというデータが残るので、そういったトラブルが起こる可能性は非常に低い」と話した。

    (サムネイル写真はUber Japan

    更新

    Uberから配達員とは雇用関係になく、労災保険はかけていないという回答があり、内容を更新しました。