ダンス議連、1年半ぶり開催 改正風営法の「遊興」めぐり要望相次ぐ

    取り締まりが強まるなか、クラブ側、警察、議員が一堂に

    ダンス営業規制を緩和する改正風営法の施行から約2年経ったことを受け、超党派の「ダンス文化推進議員連盟」(会長・河村建夫衆院議員)が6月21日、東京・永田町の衆議院第一議員会館で開かれた。

    開催は2016年12月以来、1年半ぶり。クラブやバーの経営者ら出席者からは、法改正を大枠で評価しつつも、規制対象となる「遊興」概念の曖昧さや、厳格な立地規制について疑問を呈する声が相次いだ。

    法改正運動、消えたはずの「ダンス」

    風営法は、戦後の混乱が続く1948年、売春や賭博といった風紀の乱れをただす目的で制定された。売春婦がダンスホールで客をとっていた時代の名残で、「客にダンスをさせる」営業は長らく規制されてきた。

    無許可営業には2年以下の懲役か200万円以下の罰金が科され、仮に許可を取ったとしても、営業時間は原則午前0時まで。深夜営業のクラブはすべて「違法」とみなされてきた。

    2010年以降、警察の取り締まりの強化で閉店に追い込まれるクラブが続出。利用者やミュージシャン、経営者らによる法改正運動が巻き起こり、2016年6月に改正法が施行、法律から「ダンス」の文字は消えた。

    改正運動の過程では、自民から共産まで参加するダンス議連も大きな役割を果たした。

    「遊興」として規制、強まる取り締まり

    しかし、法改正で深夜のクラブ営業が「全面解禁」されたわけではない。あくまでも許可を得れば営業できる「条件付き解禁」だ。

    改正風営法では、深夜に酒を飲ませ、ダンスなどの「遊興」をさせる業者は、「特定遊興飲食店」として許可を取得することが義務付けられた。無許可営業には、やはり2年以下の懲役か200万円以下の罰金が科される。

    今年1月末に渋谷のクラブ「青山蜂」の経営者ら3人が無許可営業容疑で逮捕された事件を皮切りに、2〜4月にかけて渋谷・六本木などのミュージックバー、DJバー約20店鋪に警察が立ち入るなど、取り締まりは厳しさを増している。

    バーや居酒屋も「グレー」

    この日のダンス議連では、「遊興」の解釈をめぐる批判や疑問の声が多くあがった。

    「ミュージックバー協会」代表理事の田中雅史さんは、経営する六本木のショットバー「GERONIMO」が警察の立ち入りを受けた経験を踏まえ、こう訴えた。

    「規制する『遊興』が何であるかが明確に示されないと、深夜に音楽を流すスタイルのバーや飲食店はすべてがグレーな営業となります」

    「ダンス禁止」張り紙の指導

    警察庁の解釈運用基準は「営業者側の積極的な行為によって客に遊び興じさせる場合」を規制対象とし、具体例として下記のようなケースを挙げている。

    ・ 不特定の客にショー、ダンス、演芸その他の興行等を見せる行為
    ・ 不特定の客に歌手がその場で歌う歌、バンドの生演奏等を聴かせる行為
    ・ 客にダンスをさせる場所を設けるとともに、音楽や照明の演出等を行い、不特定の客にダンスをさせる行為
    ・ バー等でスポーツ等の映像を不特定の客に見せるとともに、客に呼び掛けて応援等に参加させる行為

    GERONIMOは生演奏をしておらず、ダンスフロアはおろかDJブースもミラーボールもない。それでも2月に警視庁麻布署に呼び出され、「ダンス禁止」の張り紙をするよう指導された。

    田中さんは「25年近く営業してきて、麻薬や暴行などの犯罪は一度もない。お客様の9割が外国人の方々で、音楽に合わせて体を上下に揺らしたり、足や腰でリズムをとるのは自然なこと」と主張した。

    Zeebraも発言

    DJやアーティストでつくる「クラブとクラブカルチャーを守る会」の会長で、渋谷区観光大使ナイトアンバサダーも務めるラッパーのZeebraさんは言う。

    「欧米からの観光客は増えている。ミュージックバーで立ち飲みをしている時に、少し揺れてしまうということは当たり前のように起こります。それがダメだというのは現実的ではないし、外国の方に説明しても理解できないのでは」

    特定遊興飲食店をめぐっては、営業可能な地域が繁華街などごく一部に制限され、多くの事業者がエリアからこぼれているのが実情だ。

    リキッドルームやクラブ・クアトロ、WWWなども加盟する「ライブハウスコミッション」の近藤正司代表理事は「エリアが限定されており、多くの店舗が許可を取得できていない。改正建築基準法と整合させるなどして、柔軟なエリア指定をしていただければ」と提言。

    サルサ・ホットライン・ジャパンの村山健太郎代表は「六本木のサルサバー、ラテンバーのほとんどは許可のおりない地域にある。外国の方から『遊ぶ場所がない』『踊る場所がない』という問い合わせをいただく」と話した。

    このほか、「Let's DANCE 署名推進委員会」「ナイトクラブエンターテイメント協会」「日本ダンススポーツ連盟」が法改正後の状況を説明、要望した。

    警察庁の見解は…

    捜査当局はこうした声をどのように受け止めているのか。警察庁生活安全局の山田好孝保安課長は次のように説明した。

    「風営法で規制対象となる遊興は、営業者側の『積極的な働きかけ』によって客を遊び興じさせる行為。単に音楽を流しているだけ、モニターで映像を流しているだけでは、私どもは『積極的な働きかけ』があるとは整理しておりません」

    「ただ一方で、音楽を流す際に、客の反応を踏まえつつ選曲を行う。あるいは照明や音響を駆使しながら演出を行う――。こういったことが行われる場合には『積極的な働きかけ』がある、と考えています」

    「きょうは色々なご指摘がありました。そうした声を引き続きお聞きしたうえで、遊興の考え方について丁寧に説明して参りたい。都道府県警察に対しても、法の適切な運用についてしっかりと指導・監督して参りたいと思います」

    議員「柔軟に対応を」

    一連のヒアリングを踏まえ、ダンス議連事務局長の秋元司衆院議員(自民)はクラブ、バーなどの事業者側にこんな風に呼びかけた。

    「新たに団体ができて、自主規制をやっていただいている。ダンスを営業を営む人、好きな人、しかし一方で無関係な人もいる。そういうなかで、皆さんのコミュニティーをいかにしっかりやっていくか」

    「警察庁としての見解と、取り締まる現場との間でも色々ある。その都度、団体を通して警察に『こういうケースはどうなんだ』と積極的に問い合わせていただけたら」

    議連幹事長で警察庁OBでもある平沢勝栄衆院議員(自民)は、会の最後にあいさつし、こう締めくくった。

    「私たちが超党派でこの議員連盟をスタートしたのは、諸外国に比べて規制のあり方がちょっと厳しすぎるのでは、ということがあった」

    「外国人の方が多くに日本に来られるようになりましたが、アフター・ディナーの楽しみがない。色々なところで生まれる文化の芽を潰してるんじゃないかと」

    「きょうは警察庁の担当者も来て、事業者の方々のご意見に真剣に耳を傾けてくれた。色々と検討して、『これは』というものがあれば、柔軟に対応していただければ」


    BuzzFeed JapanNews