テニスの4大大会の1つ「全米オープン2022」が、アメリカ・ニューヨークで現地時間8月29日から開催されている。
開催前から、ある議論が盛んに行われている。女子トーナメントで使用されるボールについてだ。
全米オープンで使われているボール
発端となったのは、全米オープン直前に行われた、ATP1000「ウェスタン&サザンオープン2022」の記者会見での出来事。
世界ランク1位のイガ・シフィオンテク選手(ポーランド)が、全米オープンでは男子と女子でボールが違うことについて質問され、「あのボールは酷い」「なぜ男子と同じボールじゃないのか」とコメントしたのだ。
イガ・シフィオンテク選手
全米オープンでは、男子のボールに比べ、女子のボールは薄く軽いものが使われている。
ボールのスピードは男子のものに比べ速いが、その分、ボールを覆っているフェルトの消耗も激しい。
すると、試合がすすむにつれボールが軽くなり、コントロールが難しくなる。
男子と女子でボールが違うのは、4大大会の中でも全米オープンのみ。
全仏オープン、全豪オープン、ウィンブルドン選手権では、女子トーナメントでも男子と同じボールが使われている。
女子トーナメントで使われているボール
シフィオンテク選手は全米オープンで使われているボールに対し、こうコメントした。
「15年前だったら、女子選手の中にはボールの重さで肘を怪我する人もいたかもしれない。でも今は、どの女子選手も身体的に強くなっている。だから同じことが起きるとは思えない」
「それに、全米オープンで女子にだけ使われるボールは、ヨーロッパでは手に入らない。手に入れたとしても、大会用のボールとは全く違う。だから全米オープン用のボールで練習するときは、いつも男子のを使っている」
シフィオンテク選手のみならず、他のトップ選手もボールについて不満を募らせている。
世界ランク4位のP・バドサ・ジベール選手(スペイン)は、自身のインスタグラムストーリーに、全米オープンでは男女でボールが違うことを、怒りマークの絵文字と共に投稿した。
ジベール選手のストーリー投稿
一方、軽いボールの使用に肯定的な選手もいる。
世界ランク20位のマディソン・キーズ(アメリカ)選手や、21位のペトラ・クビトバ(チェコ)選手は、自分たちのプレースタイルと軽いボールが合っていると語った。
こうした議論を受け、全米オープンを主催するUSTA(アメリカ・テニス協会)は声明を発表。
BBCによると、USTAの広報担当者は、全米オープンで使われるボールが女子と男子で違うことについて「さまざまな要因を考慮した結果」だと回答した上で、「今後も大会側やテニス協会の推奨に従い、大会で使用されるボールを決定していく」とコメントした。
ウォール・ストリート・ジャーナルによると、全米オープンで女子選手だけ違うボールが使われるようになったのは、1980年代前半だという。
男子のトーナメントで使われるボールは重く、腕や肩、肘に負担がかかると女子選手から要請があったためだと、WTA(女子テニス協会)の広報担当者は述べている。