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避妊の失敗って自己責任じゃないの?緊急避妊薬をめぐるよくある疑問や指摘、産婦人科医に聞きました

薬局での販売を認めるかめぐって議論が続いている「緊急避妊薬(アフターピル)」。よくある疑問や指摘について、産婦人科医の遠見才希子先生に聞きました。

望まない妊娠を防ぐために使われる緊急避妊薬(アフターピル)の市販薬化をめぐって、議論が続いています。

そこで、よく挙げられる疑問点や指摘について、「緊急避妊薬を薬局でプロジェクト」の共同代表として、緊急避妊薬のアクセス改善を求める署名キャンペーンなどを実施している産婦人科医の遠見才希子先生に聞きました。

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1.緊急避妊薬ってなんですか?

緊急避妊薬は通称アフターピルとも呼ばれています。避妊が十分でなかったセックスのあとに、72時間以内になるべく早く飲むことで、緊急的に高い確率で妊娠を避ける薬です。

例えば、コンドームが破れたり外れたりしてしまったとき、ピルを飲み忘れたとき、腟外射精をしたとき、避妊できなかったとき、性暴力被害にあったときなど、万が一のときに使う重要なバックアップの薬です。

WHOの必須医薬品に指定されており、「意図しない妊娠のリスクを抱えた全ての女性にアクセスする権利がある」と勧告されています

海外では90カ国以上の薬局などで数百円から数千円程度と比較的安く手に入ることができます。なかには、学校の保健室で無料でもらえる国もあります。

一方日本では、対面もしくはオンラインで主に産婦人科などを受診する必要があり、費用は大体6000円から2万円くらいかかります。休日はもっと高額に設定されている病院もあります。

そのため、薬が有効なタイムリミットまでになかなか受診することができなかったり、お金を用意することができなかったりと、必要なときにアクセスできないという人がいるという現実が、日本にはあります。

2.緊急避妊薬と低用量ピルって、何が違うんですか?

低用量ピルは経口避妊薬とも言われ、毎日飲む薬で、コンドームよりも高い避妊効果があります。

一方、緊急避妊薬は万が一、避妊が不十分なセックスがあったときに使うものです。低用量ピルは日頃の避妊に、緊急避妊薬は緊急時の避妊に使うものですので、それぞれ目的が違います。

3.緊急避妊薬が薬局で買えるようになったら、避妊しない人や、中出しセックスをする人が増えてしまいませんか?

緊急避妊薬に関する正しい知識を持つことでカバーできると思います。

緊急避妊薬は一時的に排卵を遅らせる作用なので、飲んだ後に妊娠しやすい時期がやって来ることがあります。持続的な効果があるわけではなく、日頃の避妊法としては使えません。あくまで、万が一の時のバックアップです。

緊急避妊薬があるからといって、普段の避妊をしない理由やコンドームを使わない理由にはならないんです。

コンドームは、避妊以外にも性感染症予防という役割もあります。緊急避妊薬をめぐる問題に対して関心が高まっている今、こうした正しい知識を広げることはすごく大切だと思います。

4.緊急避妊薬が薬局で買えるようになったら、「悪用」したり「乱用」したりする人が増えるのでは?

悪用・乱用という視点が強まると、本来の薬の意味が見失われてしまうと思います。

緊急避妊薬は、意図しない妊娠のリスクを抱えた全ての女性にアクセスする権利がある薬です。健康・権利という視点を大切にした議論が必要です。

今は緊急避妊薬にアクセスするハードルが高いからこそ、フリマアプリで売買されたり、風俗業者が安く購入した海外製の薬を女性に転売して逮捕者が出たりしています。

誰もが安全に手に入れられる正規のルートを増やし、緊急避妊薬が生活の中で身近な存在になることで、正しい認識は広がると思います。

また、女性が緊急避妊薬を複数回使用することを「乱用」とくくる人もいますが、その背景に目を向ける必要があります。

低用量ピルや子宮内避妊具は高額で使えなかったり、貧困や暴力が背景にあるかもしれません。緊急避妊薬は安全性が高く、たとえ繰り返し使っても健康被害は報告されていません。こういった安心できる適切な情報提供も大切です。

5.緊急避妊薬を薬局で買えるようにするよりも、まずは「性教育が先」では?

性や避妊方法に関する知識があっても、実際に手に入れやすいシステムがないと、その知識って活かせないんです。

「知っていたのに手に入れられなかった」ということが起こってしまうためです。

社会の受け皿として、緊急避妊薬を誰もが手に入れられるシステムを作ることは、性教育と両輪で推進する必要があります。

6.避妊に失敗するのって、自己責任じゃないんですか?

どんなに気をつけていても、避妊に失敗することは誰にでもあると思います。

実際にコンドームの年間の失敗率は、一般的な使用でだいたい18%という報告もあります。

そういう失敗があった時に、妊娠の不安やリスクを負うのは女性の身体、女性自身なんですね。

妊娠や緊急避妊薬は、女性だけの問題と捉える方もいるかもしれませんが、妊娠には女性だけでなく男性も関わっています。

年齢性別問わず誰もが当事者になるかもしれない。自分や自分の身近な人が当事者になるかもしれない。とっても身近な社会全体の問題だと考えていただきたいです。

7.緊急避妊薬は、女性にとってどんな薬ですか?

意図しない妊娠は女性の健康や人生に大きな影響を及ぼします。緊急避妊薬にアクセスできるかどうかで、その人の人生が大きく変わる可能性があります。

緊急避妊薬を安心して迅速に手に入れられ、自分の身体を自分で把握して自分で決められるということは、女性をエンパワーすることにもつながり、女性やその周りの人の人生を豊かにすることにも繋がると思います。

最近、緊急避妊薬が多くのメディアでも取り上げられて、社会的関心もとても高まっていると思います。

ただ、まだまだ慎重論が根強く、薬局販売は時期尚早という意見もすごく多いです。なのでぜひ、今こそ多くの人に声を上げていただいて、一緒に社会を変えていただけたら嬉しいです。

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