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愛し合う女性カップル、結婚はまだできない。でも「誓いのセレモニー」を挙げて見えたもの。

ある女性同士のカップルが、愛を誓い合う「誓いのセレモニー」を挙げた。セレモニーを通して勇気づけられた人がたくさんいる。その一方で、「同性婚の法制化」に対する理解はまだ深まっていない。

2019年6月17日、愛し合う2人の女性がたくさんの人を前に、お互いの愛を誓い合った。

日本の法律では、同性同士の結婚は認められていない。「愛し合う二人が結婚できない」現状に疑問を感じる2人だ。

変化を起こしたい。そう願いながら、2人の「誓いのセレモニー」は執り行われた。

愛を誓い合ったのは、KanaさんとMikiさん。今年6月で交際4年3カ月を迎える2人は、「わがしChannel」というYouTube活動もしている。

動画には、2人の日常で起きた出来事やデートの様子などが映される。どの動画からも、何気ない会話や行動を通して2人の愛が溢れているように見える。

“あま党”と呼ばれるわがしChannelのファンも、KanaさんとMikiさんに対し「ラブラブな動画で大好き」「幸せな気持ちになれます」などと温かいコメントを送る。本当に素敵なカップルだ。

2人がセレモニーを挙げるまで

そんな2人にセレモニーをプロデュースしたのは、完全オーダーメイドのオリジナルウェディング「CRAZY WEDDING」を運営している「CRAZY」だ。

CRAZYは「すべての人の人生にお祝いを」という考えのもと、同性婚が法律で認められる日まで、同性同士が愛を誓い合う場を設ける取り組みを行うことを決めた。

そして毎年6月に、同性同士の結婚式を無料で行う「CELEBRATION WEEK for all」を開いている。

その1日目にセレモニーを開催するカップルとして、以前から同性婚に賛同する意志をSNSなどで発信していたKanaさんに、声がかかった。

KanaさんとMikiさんは、CRAZY側とはじめて電話で話した際に、およそ2時間、日本で同性婚が認められていない現状への思いを泣きながら語り合ったという。

「なぜ日本では、愛し合う2人が幸せになっちゃいけない、結婚っていう選択肢を選べないんだろう。同性カップルというだけで、選択肢を持つ権利を得られないんだろう」

そう考えていたKanaさんとMikiさんは、CRAZYの試みに共感する。そして「次に式を開く人の勇気になれば」と、企画に応じた。

準備のため、CRAZY側の担当者である渡部恵理さんはKanaさんとMikiさんがこれまでどのような人生を歩んできたか、ヒアリングをした。

印象的だったのが、セレモニーに踏み出すための覚悟だった、と渡部さんは話す。

「結婚式であっても、もちろんみなさん覚悟はあるんですけど、異性カップルの方とはやっぱり違った覚悟があるなっていうのをすごく感じました」

想像もつかなかった。大きな祝福を受けること

セレモニーは、KanaさんとMikiさんそれぞれが、お互いへの思いを込めた手紙を用意し、誓いの言葉として読み上げるという内容だった。

大切なのは、美樹がそばにいてくれることだから。生きていてくれてありがとう。よかったら、私とこれからも一緒に生きていきましょう。(Kanaさんの言葉)

加奈ちゃんが私に伝えてくれた言葉と行動の一つ一つに沢山の愛がこもってて、その全てが私の宝物です。(Mikiさんの言葉)

この時の様子を、担当の渡部さんは振り返る。

「KanaさんとMikiさんが話している言葉には、人前では今まで言えなかったことがたくさんあります。

家族のこと、好きになったきっかけ、未来に対してどう思っているか、共に生きていくことに対しどれほどの覚悟があるか。

改めて手紙に綴り、人前で口に出す勇気。私自身でもなかなかできないなって思います。

それを見て、なんてありがたいんだろう、尊いんだろう、と、なんとも言えない気持ちになりましたね」

参列者には、「わがしChannnel」を応援するあま党をはじめ、同性婚の法制化に向けて活動している人たちもいた。たくさんの人が2人を見守った。

同性同士で付き合っていることを伝える相手は限られてくる場合もあるため、多くの人たちから大々的に祝福される機会はこれまであまりなかったという。Kanaさんは言う。

「一斉にたくさんの方から祝福される、お祝いされるっていうのが想像つかなかったからこそ嬉しかったし、それだけで泣けてきちゃって。本当に強く記憶に残っています」

「誓い合うっていう覚悟を決めることによって、2人が結婚できる未来への実感をつかめる一歩になりました」

「結婚おめでとう」に違和感、同性婚への理解をもっと深めたい

セレモニーはかけがえのない経験となった。

それと同時に、同性婚への認識がまだ広まっていないことを再認識する出来事もあった。

Kanaさんのプライベートの友達からは「結婚したんだね。おめでとう」というメッセージがいくつか送られてきた。

「セレモニーを挙げる=結婚できた」という勘違いから生まれたこのメッセージ。そもそも同性婚が日本で認められていない、ということを知らない人が多いのだと気づいた。

さらに、一部の自治体によるパートナーシップ制度を結婚制度と同じだと認識している人も多い。パートナーシップ制度が認められている「渋谷区だったら結婚できるよね」と言われるのはよくあることだ、とMikiさんは話す。

(渋谷区では2015年4月に、日本では初となるパートナーシップ制度が認められる条例が施行された。その後、世田谷区などが続き、現在は全国の自治体に広がりを見せている)

Kanaさんはこのように話す。

「同性婚に賛同してくださる方を増やすためにも、まずは多くの方々に情報を広げていくっていうのはすごく大事だと、改めて思いました」

また、セレモニーには「同性カップルで20年以上一緒にいるのに、法的には家族として認められていない」という参列者もいた。

同性婚ができず、長年困っている人と向き合ったことで、自分たちはどういうアクションを取ることができるのか考え直すきっかけになった。

さらに参加者からも、同性婚について考えたり、法制化が実現するように発信したりといったアクションを、自分でもやってみたいという声があがったという。

「好きな人を好きでいていい、一人じゃない」改めて伝える

セレモニーの実施は、同性婚が法的に認められ、「結婚式」を挙げることとは異なる。

それでも、「2人のセレモニーを見て、勇気をもらった」「セレモニー実施そのもので、自分を肯定してもらった気持ちになった」などと嬉しい反響があった。

同性婚の法制化を願う話をすれば、反対する人からネガティブな言葉を寄せられることがとても多いが、セレモニーに対しては参列者以外からもポジティブな反応がたくさんあったという。

KanaさんとMikiさんにとって、セレモニーは実りのある機会となった。同性婚の実現に向けて実感を伴うような経験となり、セレモニーに関わった多くの人が同性婚の必要性について再認識する機会ともなったからだ。

セクシュアリティに悩む人や、同性婚を望む人に対し、2人からメッセージをもらった。Kanaさんはこう話す。

「たとえ国が認めてくれなかったとしても、その事実は当事者を否定することとは違います。私たちが愛を育んでいることは事実であって、性別とかセクシュアリティに関係なく、愛したい人を愛していい。

それに法整備が伴ってくるように、みんなでアクションを起こしています。

味方はもちろん一人じゃないし、こうやっていっぱいいるから、一人で抱え込まないで自信を持って、自分らしく生きていってほしいなっていう風に思います」

その言葉を聞いたMikiさんは続ける。

「私もKanaちゃんと同じ気持ちですね。一人じゃないよって。好きな人を好きでいていいんだよってことを伝えたいです」

KanaさんとMikiさんにとっての「幸せ」は、何ですか?

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世界各地でLGBTQコミュニティの文化を讃え、権利向上に向けて支援するイベントなどが開催される毎年6月の「プライド月間」。BuzzFeed Japanは2020年6月19日から28日まで、セクシュアルマイノリティに焦点をあてたコンテンツを集中的に発信する特集「レインボー・ウィーク」を実施します。

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