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僕がカミングアウトした時、家族はどう思ったんだろう? 「元女子」のYouTuberが母と対話したこと。

さかのぼること5年前、女性から男性になったYouTuberがいます。彼の名前は奏太さんです。聴覚障害を持つ母にカミングアウトしたときの心境を聞きました。

5年前に女性から男性になったYouTuberがいます。

かなたいむ。さんのYouTubeより / Via youtube.com

彼の名前は奏太さん。「かなたいむ。」という自身のチャンネルで自分のジェンダーや聴覚障害を持つ両親のこと、自分の暮らしぶりを紹介しています。

先日「男になりたいと伝えた娘、母の正直な気持ちを聞いてみた」という動画を投稿し、60万回以上の再生を記録しています。

コメントでは「お母さんの一言一言が心に響きました」「『人と違うことを否定するのは嫌』これが1番の正解だと思う」など、お母さんの力強いメッセージに、心を動かされる人からの声が寄せられています。

動画は、カミングアウト当時に、手紙でお母さんに思いを伝えたところから始まりますーー。

BuzzFeedでは、動画を一部抜粋してお伝えします。

【性同一性障害だとカミングアウトされた時どう思った?】

かなたいむ。さんのYouTubeより / Via youtube.com

母:…手紙

奏太さん:あ~そうね。覚えてる?手紙?

母:冗談でそういう手紙ありえないやろ?読んだ後どこか隠した。見たくないから隠して、頭の中、本当に真っ白。もう未来が、見えなくなった。

もう、家も出たくない。奏太以外と同じようなタレントは見たことある。知ってることは知ってるけど、LGBTQが自分の家族にいるっていうのがまず考えられなかった。

小さい時から女の子として育てて、よく考えたら、女の子連れてきてたやろ?友達じゃなかったのかな?とか気になって。ずっともう、家から出たくなかった。1日が長い感じだった。

かなたいむ。さんのYouTubeより / Via youtube.com

奏太さん:女の子から男の子になった時、いつやっと受け入れられた?

母:タイ行ったやろ?LINE見て、びっくりした。

奏太さん:そうね。タイに(性別適合)手術を受けに行く前日にお母さんにLINEを送って、明日からタイ行って、手術しますって言ったよね。

母:しばらくした後、手話通訳士の友達で、子どもが同じようにLGBTQの人がいて。「今度LGBTQのイベントに行こう」と誘われた。

かなたいむ。さんのYouTubeより / Via youtube.com

奏太さん:聞こえない人でLGBTQの集まりに一緒に行ったよね、お母さんと。

母:奏太と一緒に来てって言われて、そこで初めて手話の教え子とかお世話になってる上司がいて、いつも会う人がいて、特別なことじゃないと知った。何人もの人が、私を守ってくれた感じがして。

母:その日帰った時は気持ちが軽くなって。それから色々本で調べて、LGBTQの人は約13人に1人。聞こえない人より多いと知った。


(※編集部注:電通ダイバーシティ・ラボが4月8日に発表した「LGBTQ+調査2020」では、およそ11人に1人が性的マイノリティに該当するという結果が出ている)

【ほかの親族に伝えるかどうか悩んだ?】

かなたいむ。さんのYouTubeより / Via youtube.com

母:おばあちゃんが亡くなるちょっと前に、言わないほうが良かったのか、言ったほうが良かったのかはわからない。

でもいま生きてるおばあちゃんは、まだ果奈(奏太の昔の名前)って言う。

奏太さん:今おばあちゃん1人だけ生きてるから、いつか言わなあかんかなって思ってるけど。

母:親戚で(知らないのは)おばあちゃんだけだと思う。他はもう知ってると思う。

奏太さん:そうね、おばあちゃんはYouTube見ない。親戚はみんな知ってるから…。おばあちゃんが僕の話をしてる時は女の子って合わせて話してるよね

母:でもおばあちゃんは(奏多さんが)いつも(昔から)この格好で、慣れてるから気にならない。もうちょっと女の子らしくしたら?って言うぐらいやから。(基本的に)何も言わない。ズボンが好きなんやねって思うぐらいで、服装の問題はそんなに気にしてない

【名前を変えたことはどう思う?】

かなたいむ。さんのYouTubeより / Via youtube.com

母:将来が1番不安やったから「果たす」を入れた「果奈」という名前をつけた。最後まで。

奏太さん:あ~頑張るってことね、最後まで。

母:っていう意味なのに「奏太」に変えるって……。って思ったけど大きく変わったわけじゃないし名前の問題じゃないと思う。

奏太さん:漢字はどう思う?やっぱり左右対称。僕のこだわり。前の名前も左右対称やけど、今の名前も左右対称。

母:そのために、その漢字選んだの?

奏太さん:「かな」を残したかった。やっぱりもらった名前やから、残したくて。で、漢字を調べてたときに、音楽を奏でるのは好きやしって。

【母がよく聞かれることがあるらしい】

かなたいむ。さんのYouTubeより / Via youtube.com

母:「なんでそんなに早く受け入れられたの?」と友達によく聞かれる。性別が変わったと言っても、性格はそんなに大きく変わらんやろ?

結婚とか子どものこととか、ずっと先のこと考えたらしんどいから。とりあえず受け入れるだけかなって。

だって一般的にも結婚しないってできないじゃなくて、しないって人はいるってことだから、したかったらしたらいいし、したくなかったらしないでいいし。私の歳の周りの人はみんな孫がいる。

奏太さん:そうね、おるね。

母:(子どもの)結婚が終わって、孫が大きくなった感じで孫のことばかり言うけど、私は(奏多さんの)YouTubeが楽しいから。

奏太さん:まだ… 結婚はできひんかも相手がいないから…(笑)でも今は僕は女の人と結婚できるから、一応ね。将来結婚する相手ができたら、この家に連れてきたいとは思ってるけど、なかなか難しいよね。

【カミングアウトを受けて衝突はあった?】

かなたいむ。さんのYouTubeより / Via youtube.com

母:考えの違いはあれど、(性転換)そのもの自体はあまりワーワー言うことはなかったと思う。LGBTQがダメだと言ったことはないと思う。

奏太さん:ダメって言われたことはないけど、初めは手紙だけで、性別変えて生きていきたいっていうのを書いたやん?

それだけ1回渡して終わってて、その後にお母さんが「心が男というのは分かったけど、どうしてほしいの?」って言われた記憶がある。

なんか僕はお母さんに言って、全部分かってもらえたと思って、言ったつもりになってた。それは僕のエゴだったなって思う。

その…言ったから全部わかってもらえたは違くて、少しずつ自分がどうしてほしいかっていうのを、言わなあかんかったなって。今考えたらでもその時22か。22のときで……。
母:
私も若かったし。

奏太さん:何歳?

母:50前。

奏太さん:その時は僕も必死やった。自分が女から男に変えるのに必死すぎて、周りの人のことを考えられなかった。それは反省してる。

母:それを聞いてそこからさかのぼって中学の時、なんで太ったのかな?とか、あれはストレスだったかな?とか。

奏太さん:いや、あれは食べすぎ。普通に食べすぎ。おばあちゃんがいっぱい食べさせるから普通に太った。

【カミングアウトを受ける人へのアドバイスは?】

かなたいむ。さんのYouTubeより / Via youtube.com

お母さんは僕(奏太さん)からカミングアウトされたやん?今見てくれてる人で「誰かからLGBTQってカミングアウトされたとき、どうすればいいですか?」って質問が多いんだけど、お母さんはどう思う?

母:自分にも障害がある。だから(カミングアウトした相手を受け入れないのは)耳が聞こえないのを認めないっていうのと、同じような気持ちになるかなと思った。

LGBTQを障害だとは思わないけど、人と違うことを否定するのは嫌だと思った。たとえば左利き右はOKで左はあかんってことはないやろ?したいことは、ちゃんと自分で責任を持つんだったら何だってしたら良いと思う。

奏太さん:1人1人違うから、いいと思うしね。

母:オンリーワン!SMAPが歌ってた。

BuzzFeedは奏太さんを取材しました。

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かなたいむ。さんのYouTubeより / Via youtube.com

彼は2015年12月に性別適合手術を受け、そして2016年に戸籍を男性に変更しました。

現在はYouTubeでの動画配信や「元女子」だと公言して活動していることを、お母さんをはじめ、家族はとても応援してくれているそう。

その一方で、家族にカミングアウトした当時、すんなり受け入れてくれていたわけではなかったといいます。

あの時、母がどう思っていたのかを知っておきたいーー。きちんと話したいーー。

そんな思いが、奏太さんの胸の内にずっとありました。

「でも、こういう話って少し気が重くなってしまって『いつか聞こう』と思いながら、時間が経ってしまっていました。『そのいつかはいつだろう?』と思った時に、今聞いておかなきゃと思い、今回思い切って話をしてみました」

「当時すぐに聞くことができなかったのは、お恥ずかしい話ですが、自分のことで精一杯だったからです。自分以外の人の気持ちを考える余裕すらなかったんですよね」

今回、動画を撮影してみて、改めて気付いたこともあるといいます。

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かなたいむ。さんのYouTubeより / Via youtube.com

「母の言葉は良くも悪くもいつもストレートで。それに傷つく自分がいるかもと少し怖かったです。しかし、実際に撮影をし終えて、母のストレートな言葉、素直な気持ちを聞くことができて良かったなと思いました」

「『自分の思ってることを素直に相手に伝える』ということは、簡単なようで難しいなといつも感じています。動画を通して、母と素直に話をすることで改めて気持ちを言葉で伝えるって、大切だなと再認識しました」

お母さんが比較的にすんなりと自身のジェンダーを受け入れてくれたのには、お母さん自身がともに生きてきた、聴覚障害の存在があるのではないかと、語ります。

「母が今の母であるのは、母自身、耳が聞こえない障害を持っていることで、色んな経験をしてきたからだと思います。僕には想像の出来ないこともたくさんあったと推測します。それでも、ほんとに太陽みたいに明るい母で、『辛い時は笑って』と教えられました」

「だからこそ、母の言葉に救われていることが多いのかもしれません」

奏太さんにとって、性同一性障害だと一番最後にカミングアウトした相手が、家族でした。

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かなたいむ。さんのYouTubeより / Via youtube.com

「家族に自分の何かを伝える、カミングアウトするということはすごく緊張するし、難しいことだなと思います」。そう前置きして、奏多さんはこのように続けます。

「カミングアウトする前は『近いからこそ言えない』『嫌われたくない』『家族に言わない方がお互い幸せだ』などの感情で心が埋め尽くされていました」

「けれど、誰よりも近い存在だからこそ、大切な人だからこそ、ちゃんと自分を知って欲しいと決意して、話すことにしました」

カミングアウトで悩んでいる人や、ジェンダーやセクシュアリティに限らず何かに悩んでいる人。そんな人たちの背中を押せるような動画になっていたら嬉しいと話します。

「カミングアウトするのが正解だとは、僕は思っていません。話したい、伝えたい人がいるからカミングアウトする。それでいいと思います」

『男になりたいと伝えた娘、母の正直な気持ちを聞いてみた。』の動画全編はこちらから。

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かなたいむ。さんのYouTubeより / Via youtube.com

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