「悩んでいるのは私だけじゃない」。出産3日後までの出来事を漫画家が綴った理由。

    「親としてスタートラインに立った日」を忘れないように。

    「親としてのスタートラインに立った日の思い出です」

    2019年夏に第一子を出産した漫画家が、入院3日目までの出来事をTwitterに投稿し、話題になっています。

    子育て世代から共感を集める、この漫画。

    物語は息子さんが生まれたところからはじまりますーー。

    昨年の7月、出産を経験した。感想は「戦友」。

    新たな命とともに歩む道のりに困惑。休む暇はなかった。

    出産前と出産後。とにかく全身がだるくてたまらないのに……

    吐き戻しの多さに不安がのしかかり、心は休まらない。

    助産師さんはアドバイスをしてくれただけ。とても落ち込んだ。

    我が子なのに、未知の生き物のよう。怖いとさえ思った。

    「息子こそ、この世界のことなんてなんにも分からなくて怖いんじゃないか」そう思えた朝。

    3日目の朝にようやく気づけた。母としてのスタートラインに立てたような気がした。

    どうしてこの漫画を投稿したのでしょうか。漫画家の六多いくみさんを取材しました。

    「育児をしていると毎日があっという間に過ぎてしまいます。あのとき大変だったことや大切に思ったこともいつか忘れてしまいそうで、もったいなく思い、覚えているうちに記録を残したかったということが1番の理由です」

    お母さん歴10ヶ月のいま、振り返ると出産前は「子育てのイメージがまったくわかなかった」と話します。

    「子育てについて、漠然と不安はあるんだけど、こればかりは産んでみないことには!というスタンスでおりました」

    「産後にもっと勉強してイメージしておくべきだったなと少し後悔しました」

    出産後3日目に「母としてスタートラインに立った気がした」と綴っていた六多さん。その後、子育てで悩む機会はあったのでしょうか。

    「首すわり前に寝返りがはじまってしまったときは、うつぶせになる度に呼吸困難になっていまうのではハラハラして十分に眠れませんでした」

    最近は、こんなことでドキドキするのだとか。

    「つかまり立ちがはじまったことで転倒しないかハラハラしています。机の上のものも手を伸ばして取ろうとするので片付けが大変ですし、目に入る場所に滅多なものは置いておけません」

    「好奇心が強いのは喜ばしいことですが、手にとって口にいれてしまうのでますます目が離せません。成長に応じて悩みも変化してつきないものなのだなと感じています」

    漫画を投稿したことで批判を受けたことも、ツイートしました。

    これだけは言いたいんだけど出産育児の苦労話に対して厳しく当たる人はきっと当たる相手を間違えていて出産育児のアフターフォローがきちんと為されてない社会の在り方や子供のいない人にしわ寄せが行くようになっているシステムがあったとしたらそれがおかしいんだって私は思うのよ…

    六多いくみさんのTwitterより / Via Twitter: @rottaik

    批判に対し、「あたる先を間違えていないでしょうか」と語ります。

    「SNSで『大変だ』って声をあげる親御さんがこれだけいる、出産育児に関して、サポートや理解が十分でない社会の在り方に問題があると思います。また、子供を望まない人たちに育児世代のしわ寄せがいってしまうシステムがあったとしたら、それもおかしいって私は思っています」

    「出産育児に関しては自己責任論を押し付ける人が多いけれど、自分で望んでしたことが思ったより大変だったことなんて生きてたらごまんとあります。大変だと話すことすら許されない世界は、批判をしてきた人にとってもきっと生きづらいと思います」

    「それに苦労話って同じ悩みをもつ人にとっては励みになったりタメになることも多く含んでいて、知って回避したり対策もできるわけです」

    「あなたがむっ!としても誰かにとっては必要だったりするから、不快に思うことはやめられなくてもせめてそっとしておいてあげて!って伝えたいです」

    今回の漫画を通して伝えたいことを尋ねてみると……?

    「仕事では前向きな作品を作ってきたつもりですが、私はどうも育児に関しては、後ろ向きなツイートに『悩んでいるのはわたしだけじゃない』と励まされる方なので、同じように感じる人へ育児の話を描いていけたらいいなと思っています」

    これからお母さんになる人へのメッセージは。

    「親子の数だけ育児の方法があって正解はないけれど知っておいてよかった!と情報に助けられたことは新米母のわたしでもすでに幾度もあります」

    「私は産後のガルガル期もかなり荒れて大変だったのですが、その原因は産後分泌される愛情ホルモンの仕業。『子どもを愛しい守らなきゃ!』と気が立って夫や家族が敵にみえて強く当たってしまうことも、ホルモンのせいであると知ってコントロールできない自分を過度に責めずにいられました」

    「『ホルモンのせいだ!仕方ないんだ。やりすごそう』そんな風に育児の味方になってくれる知識はどんどん取り入れるのがよいと思います。逆に自分を追い込んでしまう情報はシャットアウトして正解だと思います」

    〈六多いくみ〉