SNSに投稿された一枚の写真。
ギョッとしてしまうような恐ろしさがありますが、和室で食卓を囲む姿は、親戚が集まる場のようでどこか懐かしさを感じます。
3本足の人のような何かがちゃぶ台を大勢で囲み、その中に一人だけ人間の子どもが座っているという写真。
この“三本足の異形”たちは人間の子どもを見て、
「なんだコイツ」 「人間っていうらしいぞ」 「珍しいな」 「喰うか?」 「腹へってるか?」 「泊まってくか?」 「いくつだ?」 「あんま質問ばっかすんな」 「腹へった」 「これ喰え」 「ゆっくりしてけ」
などと話しているとのこと。ちょっぴり怖い見た目ですが、悪い存在ではないようです。
また、ちゃぶ台に並ぶ食事のようなものも、食材や食器にいたるまですべて3本足。
幼いころ見た怖い夢のような、絶対に「こちらの世界」ではない異質さを感じますが、親戚の集まりのような温かみもある不思議な写真になっています。
3本足たちと子どものやりとりはこの後の投稿でも続き、子どもに帰り道を教え、お土産を包んでくれるシーンなどが存在。
子どもが帰ったあと空いた席について話す3本足たちの会話は、なんとも寂しげでかわいらしいものになっています。
投稿には、
「遠い昔の夏休みのある日、どこかの山奥の古い家でこんな経験をしたような…気がしてくる…」
「立体作品って難しいイメージがあったけど、こうやってストーリーをつけてくれるとわかりやすくてこれなら楽しめそう」
「この昔話みたいな雰囲気めっちゃ好き!」
など、多くのコメントが寄せられ、話題になっています。
制作したのは彫刻家の浅野暢晴さん
こちらの作品を制作し、投稿したのは、彫刻家の浅野暢晴さん(@asanonobuharu)。
浅野さんは2009年から3本足の異形『トリックスター』の制作を行っており、今回の写真も作品の一つ。
群馬県中之条町で開催される国際現代芸術祭「中之条ビエンナーレ2023」で9月9日から実際に展示される予定とのこと。
作者の浅野さんにお話を聞きました。
――作品を展示するにあたって、こだわったポイントなどあれば教えてください。
トリックスターがちゃぶ台を囲んでいますが、一席あけてあります。そこに座って異形の仲間入りをしてもらう体験をしてもらえたら、と思います。
――見慣れた和室ではありますが、よく見ると巨大な神棚やお札があったり、不思議な光景です。この部屋はどういう場所で、なぜこの男の子はここに迷い込んでしまったのでしょうか。
正直あのツイートの流れは、何か具体的な物語が頭の中にあるわけではありません。
自分の子どもと一緒に行った時に撮った写真を見て、最初のツイートが思い浮かんだだけなので。どうしてなんだろう?と、みなさんが考えてもらうのが楽しいんじゃないかな、と思います。
――「腹へってるか?」など、見た目の恐ろしさとは違ってツイートのセリフからはとても優しい雰囲気が漂っていますね。
彼らは悪い存在ではありません。一見不気味な見た目をした子もいますが、人間に危害を加える存在ではないので。人間の子どもは珍しく、どうしていいか、わからず戸惑ってるんじゃないか、と思ってます。でも、時間を過ごすたびに少しずつ愛着がわいてきているんじゃないでしょうか?
ちなみに彼らは人を食べたりしません。彼らが食べるのは「闇」なので、腹が減っている奴は部屋が明るくて、闇が食べれなかったので「腹がへった」と言っているのかもしれないですね。
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写真の子どものように、実際にあの場に座れるというのはちょっと怖いですが、素敵な体験になりそうですね……!
また、投稿にには「家に一つほしい!」といったコメントが多く寄せられていましたが、実は『トリックスター』は浅野さん個人のサイトで販売中。
植木鉢として活躍する『植木鉢ックスター』、蚊取り線香を吊るすことができる『蚊取リックスター』など、不思議な世界観をおすそ分けしてもらえる素敵な作品ばかりです。
中之条ビエンナーレ2023概要
【会場】群馬県中之条町 町内各所
【期間】2023年9月9日(土)-10月9日(月・祝)の31日間無休
【パスポート】当日1500円 / 高校生以下 鑑賞無料
【内容】温泉街や木造校舎など町内各所で多彩なアート作品の展示、演劇、パフォーマンス、マルシェなどを開催
公式サイトはこちら
ショップでは、『トリックスター百鬼夜行ガチャガチャ』など、作品の出品も行われる予定です。