『トイ・ストーリー2』最初の編集はボツだった…。有名映画の制作裏話8連発

『ハン・ソロ／スター・ウォーズ・ストーリー』では、撮影もあと2〜3週間で終わりというところで、監督のフィル・ロードとクリストファー・ミラーがクビになったらしい…。

1. 『ハン・ソロ／スター・ウォーズ・ストーリー』（2018）

Jonathan Olley / LucasFilm / Everett Collection

『ハン・ソロ／スター・ウォーズ・ストーリー』は、かなり大掛かりな撮り直しが必要となりました。撮影もあと2〜3週間で終わりというところで、監督のフィル・ロードとクリストファー・ミラーがクビになったからです。

撮影し直しのコストが加えられたことで、最終的に制作費は約2億7500万ドル（約327億円）に膨らみました。

作品を完成させるために、ベテランのロン・ハワード監督が迎え入れられました。ハワード監督と彼の仲間たちは実質的に、壮大な『スターウォーズ』シリーズからのスピンオフとなる本作品を、徹底的に点検する役を担ったということになります。

ハワードは最終的に本作品の7割を撮影したため、クレジットはハワード単独の監督作品ということになっています。

当然ながら、映画の7割を撮影し直さなければならなかった上に、監督がハワードということは、大金のコストがかさんだということ。

結果、『ハン・ソロ／スター・ウォーズ・ストーリー』は、記録的に高くついた映画となりました。

2. 『ローグ・ワン／スター・ウォーズ・ストーリー』（2016）

LucasFilm / Everett Collection

『ローグ・ワン／スター・ウォーズ・ストーリー』では、脚本の手直しに加え、撮り直しを監督する手助け役として、脚本家のトニー・ギルロイが制作陣に迎えられました。ギルロイには最終的に、500万ドル以上（約6億円）の報酬が支払われました。

ギルロイはもともと、『ローグ・ワン』で撮り直すシーンのせりふを書き直すために、週20万ドル（約2384万円）で雇われたと報じられています。

とはいえ、撮り直しが増え、ギルロイがせりふの手直し以上の仕事をするに伴い、報酬も増えていきました。

最終的にギルロイは、ポストプロダクション（撮影後の編集作業）を先導する役割を担い、撮影し直しの間に出てきたさまざまな問題、とりわけエンディングでの問題を解決するために尽力しました。

撮影し直されることになった理由は、2014年にディズニー幹部が作品を見たところ、「昔ながらのスターウォーズ」らしさがないと感じ、撮り直しを命じたためでした。

当然ながら、『ローグ・ワン』は大ヒットとなり、世界で10億ドルの興行収入（約1200億円）を記録しました。  

3. 『スーパーマンII』（1980）

Warner Bros / Everett Collection

1980年にアメリカで公開された『スーパーマンII』は、リチャード・ドナー監督の降板によって、初撮影から2年近く経過した後、かなりの部分を撮り直すことになりました。

撮影のし直しで数百万ドルのコストが加算され、最終的には1980年当時で5400万ドルにまで膨らみました。

『ジャスティス・リーグ』でウェドン版かスナイダー版かという議論がありますが、 『スーパーマンII』は言わばそのオリジナル版と言えるものです。

当初『スーパーマン』と『スーパーマンII』は、同じキャストとスタッフで、1年7カ月かけて2本連続して撮影されました。ところが、仲たがいが原因でリチャード・ドナーが降板すると、制作はかなり面倒な状況に。

さらに、マーロン・ブランドは同作品のプロデューサーたちを相手取り、5000万ドルを求める裁判を起こしました。

理由は、約束されていた公開後の取り分11.75％が支払われていないから。『スーパーマンII』の経費は、この時点でかなりかさんでいました。

結局、2年近く経ってからリチャード・レスターが監督を引き受けることになり、作品はドナーとレスターとの協業として完成しました。

ジーン・ハックマンは、自分のシーンの撮り直しをすべて拒否した話はよく知られています。

その後、25年近く経ち、 ファンの活動のおかげでドナーのオリジナル版がリリースされることになりました。

『スーパーマンII：リチャード・ドナーCUT版』という分かりやすいタイトルが付いています。

4. 『トイ・ストーリー2』（1999）

Disney / Everett Collection

『トイ・ストーリー2』は公開前にかなり修正され、経費は最終的に9000万ドル（約107億ドル）にまでかさみました。

最初に編集されたバージョンのほとんどがボツになり、アニメの作り直しとアフレコのやり直しをしなければならなかったためです。

ピクサーは作品を修正させることで有名ですが、なかでも本作品はかなり修正が入りました。

『トイ・ストーリー2』はもともと、劇場公開せず直接ビデオ・シリーズとして販売される計画でした。ところが、大まかな編集後に作品を見たピクサーは、劇場でも公開できると考えたのです。

この方向転換を受け、映画の完成を指揮するためにジョン・ラセター監督が雇われました。

ラセターのチームは、この映画には何かが足りないと思っていました。後に、作品内で重要キャラクターとなる、ジェシーとウィージーを思いついたのでした。

ジェシーとウィージーを映画に取り入れるために、制作陣は実質的に、アニメの作り直しと声の撮り直しを迫られます。

『トイ・ストーリー2』は最終的に、世界で4億8700万ドル（約580億円）の興行収入を達成しています。

5. 『スーサイド・スクワッド』（2021）

Warner Bros / Everett Collection

『スーサイド・スクワッド』は、アクションシーンの追加を含む大掛かりな撮り直しを2016年に行いました。配給会社のワーナー・ブラザースが負担したコストは「数千万ドル（約数十億円）」と言われています。

当時の噂では、撮影のし直しが求められた理由は、ワーナー・ブラザースが作品にもっと「ユーモアと明るさ」が必要だと感じたから、と言われていました。

しかし、デヴィッド・エアー監督は以下のようにツイートし、噂を否定しています。

「『もっとユーモアを盛り込むために撮影をし直す』だなんて、ばかばかしい。製作会社が自分の作品を気に入ってくれ、他に必要なものは？って聞いてくれたら、そりゃ必要なものを言うでしょ！」

『スーサイド・スクワッド』が撮影し直されたのは事実ですが、作品が面白みに欠けたから、という理由ではありませんでした。出演者のジェイ・コートニーによると、むしろアクションが追加されたそうです。

「もっと面白くするために撮影に戻るわけじゃないですよ。追加的なアクションがあって、超かっこいいんです。本当に、そういう意味では、ただ追加してるって感じです」

6. 『ジャスティス・リーグ』（2017）

Warner Bros / Everett Collection

監督のザック・スナイダーが降板した後、作品を完成させるためにジョス・ウェドンが採用されました。 かなりの部分の撮り直しにワーナー・ブラザースがかけた金額は、約2500万ドル（約30億円）に達しました。

スナイダーが『ジャスティス・リーグ』を降板した理由は、2017年に娘が亡くなり、家族と一緒に過ごす時間を作るためでした。

撮り直しにかかるコストは通常、600〜1000万ドル（7億～12億円）ほどですが、『ジャスティス・リーグ』の場合、もっと難しいことが分かりました。出演者の呼び戻しや、シーンやせりふを付け加える必要があったのです。

撮り直しの際、バッドマン役のベン・アフレックとワンダーウーマン役のガル・ガドットは、他作品の撮影はありませんでした。しかし、フラッシュ役のエズラ・ミラーとスーパーマン役のヘンリー・カヴィルは、すでに他作品の撮影に入っていました。

さらに、ヘンリー・カヴィルが『ミッション：インポッシブル』の撮影のために生やしていた髭が問題になり、デジタル処理で消さなくてはいけなくなりました。

同作品の製作会社パラマウントが、カヴィルに髭を剃ることを許さなかったからです。

7. 『ローン・レンジャー』（2013）

Disney / Everett Collection

『ローン・レンジャー』では予算が2億ドル（約238億円）を超えてしまい、正式な撮影が始まる前の2011年には、すでに撮影を中断せざるを得ない状態になりました。節約のためにアクションシーンや特殊効果がカットされたほどでした。

制作会社のディズニーからは確実な予算を与えられていたのですが、撮影がこれから始まろうというとき、ゴア・ヴァービンスキー監督とプロデューサーのジェリー・ブラッカイマーは、予算額をさらに増やそうとしたのです。

実際に撮影がはじまると、不要な支出により、コストがどんどん膨れ上がっていきました。たとえば、人の手の中で懐中時計がパッと開く、のようなシーンを撮りたいがために、ヨーヨーの世界チャンピオンを呼んでギャラを払うなどです。

最終的に経費は2億1500万ドル（約256億円）にまで達した一方で、2013年の総興行収入は2億6000万ドル（約309億円）ちょっと。本作品は興行成績面で見ると、失敗作となってしまいました。

8. 『アーミー・オブ・ザ・デッド』（2021）

Clay Enos / Netflix

2020年6月に『アーミー・オブ・ザ・デッド』出演者の1人、クリス・デリアに対して性的不正行為疑惑が持ち上がりました。

それを受け、 ザック・スナイダー監督とネットフリックスは数百万ドルを費やし、デリアの代わりにティグ・ノタロを出演させ、デリアのシーンを編集でカットすることにしました。

スナイダー監督によると、デリアの出演シーンをすべて削除するという決断は「かなり楽」であったものの、「お金のかかる」決断でした。

具体的な数字は明らかにしていませんが、監督によると撮り直しにかかった金額は数百万ドルだそう。

このコストは、デリアを全シーンからデジタル処理で消す、ティグ・ノタロで撮り直す、視覚効果を変える、といった作業に使われ、すべてネットフリックスが負担しました。加えて、撮り直しはコロナ禍で行われました。

ノタロは自身の出演シーンをすべてひとりでこなし、すでに撮影されていた動画にデジタル処理でその姿が加えられました。

ノタロが出来るだけシームレスに映画に収まるよう、スナイダー監督と視覚効果チームはカリフォルニアのスタジオ内に、カメラアングルと「物理的な空間」を再現して撮影しました。

この記事は英語から翻訳・編集しました。翻訳：松丸さとみ ／ 編集：BuzzFeed Japan