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学校のオゾン発生器、富田林市が続行表明 回収求めた医師会要望に応じず

新型コロナウイルスへの効果が証明されていないオゾン発生器を全市立小中学校、幼稚園に設置している大阪府富田林市。回収を求めた地元医師会に対し、今後も使い続ける考えを示しました。

新型コロナウイルス対策として効果が証明されていないオゾン発生器を、大阪府富田林市が販売元の企業から寄贈を受け、市内の全公立小中学校、幼稚園に設置していた問題。

市から事前に相談を受けていなかった富田林医師会は回収を求める要望書を市長宛に送っていたが、市側は、要望には応じず今後も稼働する考えを示す回答を渡していたことがわかった。

WHO(世界保健機関)厚生労働省文部科学省は消毒剤や、ウイルスの量を減少させる物質について、人の眼や皮膚に付着したり、吸い込むおそれがあったりする場所での空間噴霧を勧めていない。

同医師会の感染症担当理事、藤岡雅司医師は「納得できる回答ではない」と話している。

オゾン発生器、活用を続行「適切に運用して参ります」

富田林医師会が9月14日付で出した要望書では、オゾン発生器による対策は、最も重要な常時換気と矛盾すると指摘した上で、こう要望していた。

富田林市立幼稚園、小学校、中学校に設置された『オゾン脱臭器』を回収し、施設環境を原状に復すること

同医師会によると、市長による回答書は10月6日付となっているが、吉村善美市長と市教育委員会の教育長が10月7日午後に訪れ、同医師会の藤岡洋会長代行に手渡したという。

回答書ではまず、国の方針に沿ったコロナ対策を行なっていると説明。

「本市学校園におきましては、以前より、3密回避や適切なマスク着用、手洗い等の徹底を図っております。加えて空気中のウイルス対策のために、気候上可能な限り常時換気を行うよう示されておりますことから、子どもたちがいる時間帯等は換気を優先した対策に取組む等、文部科学省の『学校における新型コロナウイルス感染症に関する衛生マニュアル〜「学校の新しい生活様式」〜』に沿った対応を行っているものと考えております」

オゾン発生器の利用については、メンテナンスも教職員の負担にならないことを示した上で、以下のように安全性を強調した。

「オゾン脱臭器等と併せて、オゾン濃度を監視するモニターも追加で設置していただいており、夜間や祝日・休日等に部屋を閉め切った状態で連続稼働した場合においても日本産業衛生学会が定めた基準を越えないよう自動制御される仕組みになっております」

「他市町村や私立学園等でも導入事例があり、既に複数年にわたって使用されている事例もございます。今回の寄贈受諾にあたりましては、こうした市町村等の担当者へ聞き取りを行い、健康被害等の事例が生じていないことも確認しております」

さらに、「オゾン脱臭器を有効に活用する方法等について、貴重なご意見も伺っており、保護者の方々からは運用に期待する声もお寄せいただいているところです」と前向きな意見も来ているとした上で、こう結んでいる。

「お寄せいただいた貴重なご意見をふまえ、各学校園の状況に応じて適切に運用してまいりますので、どうぞご理解いただきますよう、よろしくお願いします。

感染症対策理事「回答になっていない」

この回答に関して、同医師会感染症対策理事の藤岡雅司さんは、取材に対し以下のようにコメントし、回答は不十分だという考えを示した。

「文科省のマニュアルに沿った対応をしていると回答しているが、マニュアルにある『人がいる環境に、消毒や除菌効果を謳う商品を空間噴霧して使用することは、眼、皮膚への付着や吸入による健康影響のおそれがあることから推奨されていません』に沿っていないという要望書の指摘に対しては何も回答していません」

「また、オゾン濃度が自動制御されるとしていますが、監視モニターは床から2m以上の位置に設置されています。園児、児童、生徒の目や口よりもはるかに高い位置にオゾン濃度監視モニターを設置して、空気より重いオゾン濃度を正しく制御することができるのでしょうか」

「寄贈する前に聞き取りを行なったとか、オゾン脱臭器を有効に活用する方法等について貴重なご意見を聞いたとしていますが、誰にどのような意見を聞いたのかも示されていません」

「学校医を務める医師会の意見がまったく反映されないとなると、学校医は職務を執行することができず、学校保健安全法施行規則第22条に抵触します。学校保健において学校医は不要という考えなのでしょうか。回収し、施設環境を原状に復すること、という医師会の要望に対しては一言も書かれていません」

「市役所のどの部署で、どのように議論され、どのように決定されたのかが不透明です。この科学的根拠のない装置設置がなぜ続けられるのか、この内容では納得できる回答ではありません」

市教育委員会「子どものいる時間帯には稼働しない方向で検討」

市教委教育指導室の次長は、BuzzFeed Japan Medicalの取材に対し、医師会などから様々な指摘を受けた結果、子どもたちのいる時間帯は稼働しない方向で検討していると回答した。

ただし、効果や子どもたちのいる時間帯に稼働しても安全であるという考えは崩していない。

「新型コロナに関して効果があるのかは様々な検証を待たなければいけませんが、それ以外の机や椅子に付着している菌については一定効果があると考えている。子どもたちを実験台にするつもりはありません」

「子どもたちがいる環境でこれまで稼働していたことについては、企業の方からも安全な濃度で管理できるように設置しているので、安全性には問題ないと考えています。保護者や子どもたちに安心を感じてもらうために運用方法を改善することを検討します」

文部科学省からマニュアルを示されて、指導されたことについては以下のように述べて、マニュアルに違反していないという認識を改めて示した。

「文部科学省は、個別の機器の能力について把握しているわけではなく、(推奨されていない)空間除菌に当たるとも当たらないとも指摘されていません。換気を優先するというマニュアルに沿った対応という形で進めようと思います」