「嫌よ嫌よは嫌なんやで」「あんたセクハラしてるで」「嫌やったら言うてな」
かわいいうさぎが関西弁でセックスに関係する同意や不同意の気持ちを伝えるLINEスタンプを、産婦人科医の宋美玄さんが作った。
性科学者の顔を持ち、性暴力に関する診察や相談も長年受けてきた宋さんは、相手に押し切られて望まない性行為を強要される状況をどうにかしたいと考えてきた。
「『断ったら嫌われる』とか『食事しただけなのにセックスOKと勘違いされた』という悩みを訴える人がとても多いんです。また自分から誘えないという人もいる。直接NOと言ったり、誘えなかったりする人も多いので、やんわりと気持ちを伝えるのに使ってもらえたら」と話している。
「伝え方が古い!」という言葉に反省 若い人に届く方法は?
きっかけは、今年7月、避妊教育を話し合う産婦人科医の集まりで、性教育について発信している若手男性医師に、「正しい情報の伝え方が古い」と指摘されたことだった。
産婦人科医の間でその指摘が話題になっているのを見て、「媒体を考え直さなければ今の若い人には伝わらないかも」と考え始めた。これまで新聞、テレビ、雑誌で伝える努力をしてきたが、いまいち10代、20代の若い世代に伝わっている手応えがない。
ちょうどその頃、「NHKのクローズアップ現代+」で「セックス・若者たちの本音〜世界のミレニアル世代調査〜」という特集に出演した時、「嫌だと言えない」「AVで見たように彼がやっていて怖い」という若い人の悩みも聞いていた。
別の番組では、「二人でご飯を食べに行ったら」「家を訪ねただけで」セックスすることを同意したと考えている人が多い調査結果にも唖然とした。
「性に関する悩みは、私が『女医が教える 本当に気持ちのいいセックス』という本を8年前に書いた時と変わらないんです。内容のアップデートは必要ない。でも、若い人が情報を得る媒体が大きく変化しているのに合わせて、こちらも発信方法を変えなくてはいけないのだろうと思いました」
YouTube、Instagram、LINE......。YouTubeでの番組作りと共に、まずはコミュニケーションツールとしてよく使われているLINEのスタンプ作りから始めることにした。
性暴力予防に取り組む若い女性たちも協力
かわいい動物の姿を借りて、はっきりものを言っても相手に強く聞こえない関西弁を使うことにした。
産婦人科医としてまず入れたかったのは、「嫌よ嫌よは嫌なんやで」だ。
「嫌よ嫌よも好きのうちと勘違いしている人はとても多く、断れない状況で襲われたという被害が後を絶たないんです。そこははっきり伝えとかないとと思いました」
「同意のない行為は犯罪やねんで!」「酔いつぶれてるんはOKとちゃうで」というのも、望まぬ妊娠やレイプ被害を診療してきた経験から絶対に入れたかった。
さらに、「嫌やったら言うてな」と雰囲気を壊さずに相手に気持ちを言うことを促したり、「今日行っとく?」と誘うのが恥ずかしい人でも誘える言葉も入れた。
「断るだけじゃなくて、本当は誘いたいとか、なかなかセックスについて話し合えないけれども相手の本音を聞きたいという気持ちも伝えられるようにしたかったのです」
さらに、同じ年代の女性にも意見を聞きたいと、性的同意について大学生たちに啓発活動をしている団体「ちゃぶ台返し女子アクション」や、性や避妊について啓発活動を行う「#なんでないの」プロジェクトを進める女子大学生、福田和子さんの協力を得た。
学生たちから挙げられて盛り込んだのは、「彼氏おるねん」「終電で帰るわ」「拒否権発動!」などだ。
「『今のところな』というのも面白いなと思いました。最初はセックスしたいと思っていても、途中で気分が変わることもある。角を立てずに、相手にLINEなら伝えられるという本音なんでしょうね」
本日から発売 全40種類で120円
このスタンプ「同意・不同意を伝えるスタンプ(関西弁)」は12月5日から発売する。
全40種類で120円だ。
宋さんは、「もちろん直接はなかなか言えないという人に使ってほしいですし、受け取った人も、積極的な同意以外は同意ではないのだということをこういうやりとりで学んでほしい。性の同意について、二人で話し合うきっかけにして、幸せなセックスを楽しんでもらえるととても嬉しいです」と話している。