「まずまずで収まった」 自民党の二階幹事長の発言に批判相次ぐ

    自民党の二階俊博幹事長が党の緊急役員会で、台風19号の被害について「まずまずで収まったという感じだ」と発言し、政治家や有識者から批判の声があがっている。

    自民党の二階俊博幹事長が10月13日、党の緊急役員会で台風19号の被害について、「予測されて色々言われていたことから比べると、まずまずで収まったという感じだ」と発言したことが朝日新聞などに報じられ、有識者や政治家からSNSで批判の声が相次いでいる。

    「何故、死者を数で一括する?」

    「これだけの大災害を『まずまずで収まった』とは一体どういうことか」

    朝日新聞によると、二階氏は会合後、「日本がひっくり返されるような災害、そういうことに比べれば、という意味だ。1人亡くなったって大変なことだ」とも釈明したという。

    NHKのまとめによると、台風の影響で全国で31人が死亡し、15人が行方不明になっている。今も必死の捜索が行われ、大事な人の無事を祈っている人がいる。

    作家の柳美里さん 「亡くなった人の命は、唯一無二だ」

    この発言に対し、Twitterでは批判の声があがっている。

    東日本大震災後、原発事故の被害に心を痛め、福島県南相馬市に移住して書店や劇場など人が集う場所作りに取り組んでいる作家の柳美里さんは、こうツイートした。

    二階俊博氏の「(被害は)まずまずに収まった」発言。 何故、死者を数で一括する? 大切な家族や友人や恋人を失った人にとっては、1万8429人の中の一人だろうが、6434人の中の一人だろうが、31人の中の一人だろうが、その分母は関係ない。 分数では考えない。 亡くなった人の命は、唯一無二だ。

    @yu_miri_0622 / Via Twitter: @yu_miri_0622

    被害の大きさを「数」で計る言葉に対し、こう反論する。

    何故、死者を数で一括する?
    大切な家族や友人や恋人を失った人にとっては、1万8429人の中の一人だろうが、6434人の中の一人だろうが、31人の中の一人だろうが、その分母は関係ない。
    分数では考えない。
    亡くなった人の命は、唯一無二だ。

    自分の息子が避難所に向かう最中に車ごと川の濁流に呑まれたらーー、 自分の母がヘリコプターへ救助される途中で落下したらーー、 自分の父母が土砂崩れで押し潰された家屋の中から見つかったらーー、 と数秒でも想像できたのならば、「(被害は)まずまずに収まった」などという発言はしないはずだ。

    @yu_miri_0622 / Via Twitter: @yu_miri_0622

    そして6時間ほど経った後、こう言葉を加えた。

    自分の息子が避難所に向かう最中に車ごと川の濁流に呑まれたらーー、

    自分の母がヘリコプターへ救助される途中で落下したらーー、

    自分の父母が土砂崩れで押し潰された家屋の中から見つかったらーー、

    と数秒でも想像できたのならば、「(被害は)まずまずに収まった」などという発言はしないはずだ。

    政治家も「この認識は、ない」

    野党の政治家も批判する。

    共産党委員長の志位和夫氏は、「これだけの大災害を『まずまずで収まった』とは一体どういうことか。政府・与党の責任を全力で果たしてほしい」とツイート。

    「二階氏 台風被害『まずまずで収まった』緊急役員会で」 これだけの大災害を「まずまずで収まった」とは一体どういうことか。政府・与党の責任を全力で果たしてほしい。 https://t.co/3qJ8MMdqxe

    @shiikazuo / Via Twitter: @shiikazuo

    立憲民主党副代表の蓮舫氏は「まずまず?

    与党幹事長の発言は決して軽くない。この認識は、ない。」と非難した。

    まずまず? 与党幹事長の発言は決して軽くない。この認識は、ない。 台風被害「まずまずに収まった」…二階氏が自民党緊急役員会で発言 #SmartNews https://t.co/WoAHlselL8

    @renho_sha / Via Twitter: @renho_sha

    グリーフケアを考えてきた入江杏さん「『涙』への想像力を欠いている」

    この発言について、世田谷一家殺人事件で妹家族4人を失い、犯罪、災害、病死など様々な枠を超えてグリーフケアを考えてきた上智大学グリーフケア研究所非常勤講師の入江杏さんは、BuzzFeed Japan Medicalに以下のコメントを寄せた。

    悲しみを支えるものは何か?と考えてきました。やはり「ことば」だと思います。それも口先でない「ことば」。


    グリーフケアのエッセンスを伝える政治家の言葉として、テロ事件に際してのニュージーランドのアーダーン首相のスピーチを講座の冒頭に紹介しています。


    「悲しんでもいい、助けを求めてもいい」と若い人たちに呼びかけ、悲しい時は社会が受け止める、との覚悟を示しました。グリーフケアの公共性を示すメッセージです。


    グリーフケアは心理的な寄り添いだけではなく、公共的なメッセージでもあります。


    グリーフケアというと、共感して寄り添って、と言われますが、仲間内で傷をなめあっているんだろうと、冷めた見方をしている人も多いです。違います。


    グリーフケアは「声にならない声を聴き、目に見えない涙を見る」こと。
    この気づきは、声を上げることができない人たちへの社会の側からの寄り添いです。


    「まずまず」という二階氏の言葉は、「声」や「涙」への想像力を欠いていると感じました。

    さらに、後から記者団に語った「日本がひっくり返されるような災害、そういうことに比べれば、という意味だ。1人亡くなったって大変なことだ」という釈明の言葉については、こう述べた。

    「まずまず」というのは本音が顕われてしまった、というべきだと思います。「日本がひっくり返る災害」というのは、ご自分のまなざしから見ての「日本」なのだと思いました。ご自身が安全圏にいてよかった、ということなのでしょうか?


    アーダーン首相の名前を出してしまいましたが、女性だから、海外だから、こうした発言が出るというのではなく、今回の台風でも長野県の防災や世田谷区長のTwitterに励まされた方も多いと思います。


    「一人亡くなっても」とおっしゃるなら、被災が進行しているその「今」において、「一人たりとも救えるものは救う」というメッセージを発することもできたと思います。どこか他人事の冷たさを感じる言葉だと言わざるを得ません。