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謎解きゲームでHPV感染症やHPVワクチンについて学ぼう 学校教育を通じて中高生に発信

子宮頸がんなどのHPV感染症やHPVワクチンについて啓発活動を続ける「みんパピ!」が学校を通じて当事者の中高生に情報を届けるプロジェクトを始めました。謎解きゲームや年代・性別で分けて届ける試みの狙いは?

子宮頸がんや肛門がんなどの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)への感染を防ぐHPVワクチン。

国が積極的に勧めるのを差し控えてこの6月で丸8年が経とうとしており、先進国の中で日本は接種率が断トツに低い「HPVワクチン後進国」となっている。

防げる手段があるのにがんになっていくのを放置はできないと、啓発活動を続けている医師たちの団体「みんパピ!(みんなで知ろうHPVプロジェクト)」はNPO法人「VPDを知って、子どもを守ろうの会」と共に、6月から、「中高生のためのHPVプロジェクト」を始める。

ワクチンをうつ当事者である中高生に直接、HPV関連のがんやHPVワクチンについて、やさしく正確な情報を伝える目的だ。

BuzzFeed Japan Medicalはみんパピ!代表の稲葉可奈子さんに取材した。

年代、性別に分けて説明するパンフレット、謎解きゲームも

プロジェクトではまず、みんパピ!のキャラクターが描かれたA3版のポスターを全国約 1万300 校の中学校、約 5400 校の高校、 北海道、大阪府、広島県、岡山県、島根県、長崎県の6道府県の薬局やドラッグストアに配布する。

また、希望校には生徒配布用に、「がんと HPV」についてイラスト入りでわかりやすく伝えるパンフレット(A5版 4 ページ )を用意した。

工夫したのは、

「高校1年生以下の女の子とその保護者」

「男の子とその保護者、成人男性」

「高校1年生以上の女の子と成人女性」

と、年代、性別で分けて伝える内容を変えたことだ。

HPVは性交経験のある8割の女性が感染するありふれたウイルスだ。セックスやオーラルセックス、ペッティングなどで性器や喉の粘膜に感染するため、HPVワクチンは初めての性行為の前にうつと予防効果が高くなる。

日本では、小学校6年生から高校1年の女子を無料でうてる「定期接種」の対象にしており、そのほかの年代や男性は全額自己負担だ。

だが男性もかかる肛門がん、中咽頭がんや陰茎がんの原因となるため、男性もうつ意味がある。

うつ機会を逃した高校2年生以上の女子や成人女性も、自己負担にはなるが一定年齢以下やパートナーが固定していない場合などはうつことを考えてみてもいい。

自分にとってこのワクチンは必要か、考える材料をそれぞれに伝えている。

さらに、中高生が関心を持つよう謎解きゲームを使った啓発資材『怪盗モリワールと秘密 のワクチン』も用意した。

参加者は LINEアプリを使ってヒントを得ながら、紙に書かれた「なぞ」や暗号を解き明かしていくうちに、自然とHPV感染症やワクチンについて自然に学ぶことができる。

学校教育を通せば、満遍なく届けられるかも

代表の稲葉可奈子さんは、学校教育を通じて届けられる範囲を重視して今回のプロジェクトを考えたと話す。

「自治体が昨年10月から対象者に個別通知を出すようになってから少しずつ接種率が上がっているとは言え、定期接種なのに2割程度とはまだ低い。情報が届いていない人がたくさんいます」

「SNSを使う人もメディアから情報を受け取る人も限られる中、中学校まではほぼ誰もが通います。日本全国に満遍なく情報を届けたいので、学校教育を通じて当事者や保護者に伝えたい。誰もが恩恵を受けられるワクチンなので、知らないという理由で機会を逃すことだけはないようにと思いました」

気をつけたのは、保守的な学校現場にも受け入れられるような表現としたことだ。

「学校側の理解と受け入れが大前提。少しずつ接種率が上がっていることを伝え、がん教育が取り入れられていることも絡めて、学校が抵抗感を感じないような伝え方や表現を工夫しました」

こういう情報によって中高生にどんな効果があることを望んでいるのだろうか?

「性教育を前面に打ち出さなくても、性交渉でうつるウイルスだと理解できると思います。初めての性交渉の前にうつと効果が高いし、それ以降も安心してお付き合いできることを知ってもらえば、うつモチベーションにもなるでしょう」

「がんが自分ごとではない世代ですが、特に子宮頸がんは中高生にも近い将来に関わる話です。予防できることを知り、20歳になったら検診も受けることも知ってほしい。とにかく『知っていたらうっていたのに』という後悔を減らしたいのです」

積極的勧奨再開を

国が積極的勧奨を差し控えてから6月14日で丸8年が経つ。

厚生労働省は国民の理解が進むことを勧奨再開の要件のように掲げているが、これについて稲葉さんはこう批判した。

「科学的な事実をエビデンスをもとに国民に先に理解してもらうというのは酷な話です。国は、専門家集団から科学的根拠をもとに国民の健康を増進するためにどういう施策をうつべきか助言を受けた上で公衆衛生上の政策を決めるべきです。国民の理解が先というやり方は、HPVワクチンで最後にしていただきたい」

その上で、積極的勧奨再開が再開されないことで現状、以下のような悪影響が続いていることを憂いた。

「『厚労省が差し控えていることを生徒に教えていいのか』とためらう学校もありますし、メディアによっては厚労省が積極的に勧めていない状況でどこまで報じていいのか気にする記者もいる。自治体も板挟みです。国はしっかり筋を通していただきたい」

そして、メディアの報道についても注文をつけた。

「若者はテレビや新聞を見ていないと言いますが、保護者世代はまだまだ見ていますし、まだまだ影響力は大きいです。HPVワクチンについては情報格差がある問題をなんとかしたい。メディアが正確な情報を折に触れて報じることが、8年前の”副反応疑い報道”の影響を払拭することにもつながると思います」

稲葉さんは、日々子宮頸がんになった患者を診ている。

「これから妊娠を考えるという時に子宮を失うとか、お子さんが小さいうちにお母さんが亡くなるというのは誰が聞いてもつらいと理解されるでしょう。でもどんな年代であっても、子宮頸がんになった人は誰かの大切な人です。予防できる病気で悲しむ人を1人でも減らしたい。子宮頸がんは予防できるがんだと知ってほしいです」