子宮頸がんなどの原因となるヒトパピローマウイルスへの感染を防ぐHPVワクチン。
ほとんどがセックスやオーラルセックスなど性的接触でうつるウイルスのため、セックスデビューする前にうつことが予防効果が高いとされている。
日本では、小学校6年生から高校1年生の女子は公費でうてる定期接種となっているが、メディアのセンセーショナルな報道の影響もあって副反応への不安が強く、接種率が1%未満になっている。
このワクチンについて、まずは知ってもらおうと、子宮頸がんで子宮を全摘した経験のある三原じゅん子・厚生労働副大臣が、対象者の女の子に直接呼びかける動画をTwitterやFacebookなどのSNSで流し始めた。
三原副大臣はBuzzFeed Japan Medicalの取材に対し、「一人でも多くの女の子を守りたい。その一心です」と狙いを話す。
「高校1年を過ぎると公費で接種することができません」
三原副大臣は、46秒の動画で、「HPVワクチンは小学校6年生から高校1年生の女の子が対象です。高校1年生を過ぎると公費で接種することができません」と語りかけ、対象年齢の女子、特に今年度が最後のチャンスとなる高校1年生の女子に呼びかけた。
HPVワクチンは3回接種する必要があるが、通常1回目から3回目までは半年の期間が必要となる。
今年度がラストチャンスとなる高校1年生の女子は、2月中に1回目をうっても、2回目は2価ワクチンの場合は1ヶ月以上、4価ワクチンの場合は2ヶ月以上(やむを得ない場合は1ヶ月以上)、間をあけなければならないため、公費接種でうてる回数は限られてしまう(参考記事)。
ただし、新型コロナの影響で接種できなかった女子を対象に、大阪市が公費でうてる期間を1年延長したように、市町村によっては公費接種の期間が長くなったことも伝えた上で、こう訴えた。
「いずれにしてもなるべく早く接種をしていただいて、早くに効果を得ていただきたい。HPVワクチンのことをぜひ皆様に知っていただきたいと思います」
デンマークやアイルランドなど、日本と同様、メディアの副反応報道キャンペーンで、接種率が激減した国は他にもある。しかし、他の国は日本と違い、政府がワクチンを推奨する姿勢を変えることはない。国をあげて接種を勧めるキャンペーンを繰り広げて接種率を回復させてきた。
北海道大学の公衆衛生学者、シャロン・ハンリー氏によると、接種率の高い国ではHPVワクチンの啓発に対する政治の関与も強く、例えばスコットランドでは、30代の女性厚生労働大臣が自らショッピングモールで若い女の子に呼びかける啓発活動などをしている。
三原氏も、自身の知名度を活かして副大臣になったのを機に自ら啓発キャンペーンに乗り出すことを決めた。
44歳の時に子宮頸がんと診断、子宮全摘
三原氏が子宮頸がんと診断されたのは2008年、44歳の時のことだ。
過去に2回流産したことがあり、いつか母親になりたいという夢を抱き続けていたが、子宮全摘をすることになった。その後、がん患者仲間と子宮頸がんの啓発活動を始めていた時、子宮頸がんの発症そのものを防ぐことのできるHPVワクチンが発売された。
3回接種で約5万円。「裕福でなくてもみんながうてるようにしたい」と自民党から立候補し、HPVワクチンの無料接種化を訴えて当選した。
その後、2013年4月には自己負担が無料となる定期接種化が実現した。ところが、その前後から接種後に痛みなどの体調不良を訴える声をマスコミがセンセーショナルに報じたこともあり、接種率は70%前後から1%未満に激減した。
啓発活動を進めていた三原議員も強く批判された。せっかく無料でうてるようになったのに、うつ人がほとんどいなくなったことに胸も痛めた。
しかし、その後、安全性や有効性を示す研究が国内外で積み重ねられた。再び、このワクチンの役割を広めたいと活動を始め、2019年11月26日には党内に呼びかけ、自民党の「HPVワクチンの積極的勧奨再開を目指す議員連盟」を発足した。
そして2020年9月、菅内閣で厚労省副大臣に任命され、HPVワクチンや不妊治療の担当になった。
政治家としてのライフワークを推し進めることができるポジション。7年半以上止まっていた自治体による対象者への個別のお知らせを確実に進めるよう異例の再通知を指示し、今回、直接、対象者の女子に呼びかけることにした。
高校1年生は3月までが無料でうてるチャンス 諦めてしまうのはもったいない
三原副大臣は直接、対象者の女の子、特に高校1年生の女子に呼びかけた理由をこう語る。
「たった1学年の事と思われがち。でも
細かいことかもしれませんが、高1の女子が接種期間のせいで諦めてしまうのはもったいない 」
「私が政治家になってこのワクチンの定期接種化にこだわったのは、経済的な格差が健康の格差に繋がってはならない。そういう強い思いからでした。自費となれば接種を諦めてしまう方も出てきてしまうと思うので、それを少しでも減らしたいのです」
UPDATE
やむを得ない場合の接種間隔を追記しました