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HPVワクチン「積極的勧奨の再開を」「接種を逃した女子に再チャンスを」 要望を受けた厚労相「自分は十字架を背負っている」

医療者有志と女子大学生で活動する「HPVワクチン for me」と 自民党の「HPVワクチンの積極的勧奨再開を目指す議員連盟」は3月29日、田村憲久厚生労働相に積極的勧奨再開や接種を逃した女子に再チャンスを求める申し入れをしました。

子宮頸がんや肛門がんなどの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)への感染を防ぐHPVワクチン。

日本では小学校6年生から高校1年生の女子は公費でうてる定期接種となっているが、接種後に訴えられた症状がセンセーショナルに報道され、厚生労働省が積極的勧奨を差し控えて約8年、ほとんどうたれない状況となっている。

ワクチンで防げる病気を防げるようにしたいと、医療者有志と女子大学生で活動する団体「HPVワクチン for me」と 自民党の「HPVワクチンの積極的勧奨再開を目指す議員連盟」(会長=細田博之衆議院議員)は3月29日、田村憲久厚生労働相に積極的勧奨再開などを求める申し入れをした。

大臣「自分はある意味、十字架を背負っている」

「HPVワクチン for me」は積極的勧奨を差し控えていたためにワクチンのお知らせが届かず、無料接種のチャンスを逃した女性たちに再チャンスを与える「キャッチアップ接種」を求める署名3万26筆を提出。

HPVワクチン議連は、積極的勧奨の再開など4項目を求める提言を渡した。

田村厚労相は積極的勧奨を差し控えた2013年6月時点に厚労相だった。

受け取り時に、BuzzFeed Japan Medicalが「積極的勧奨を再開する責任を感じていないか」と田村厚労相に問うと、「専門家の方々の話も聞かせていただき検討させていただく」と回答。

具体的に検討に入るのか重ねて質すと、「今はまず新型コロナウイルスの対応をやっているのでこれをやりつつ、しっかりと議論いただきたいと思う」とだけ返した。

面会した議連事務局長の自見はなこ参議院議員によると、田村厚労相は積極的勧奨を自身の大臣時代に差し控えたことに関して「ある意味、自分は十字架を背負っている」と話したという。

また、この8年間でHPVワクチンの効果や安全性を示す論文が積み上がっていることについて「重く受け止めている」と話しながらも、再開の議論の時期についてはやはり明言しなかった。

ただ、面会した女子大学生によると、田村厚労相は「うちたいと思っている人に対し、(制度を)整備しないといけないと思っている。積極的勧奨を差し控えた時に厚労相だった自分が、今また大臣になったのは巡り合わせだと思う」と前向きな発言をしていたという。

「必要な情報を得ることなく接種機会を逃した」

「HPVワクチン for me」は署名と共に提出した要望書で、以下のように訴えている。

積極的な接種勧奨が差し控えられたことで、接種対象者のもとに⼦宮頸がんや HPV ワクチンにかかる情報が⾏き渡らず、多くの接種対象者が必要な情報を得ることなく接種機会を逃してきました。

2000年⽣まれ以降、つまり今の⼤学⽣世代を中⼼に、ワクチンの情報を得られないまま対象年齢を超えてしまった若者が多くいるのです。

⼤学の授業や既に接種した先輩の話を聞くなどの機会を得て、⼦宮頸がんをHPVワクチン接種で予防したいと思い⾄ったものの、既に定期接種の接種対象年齢を過ぎているために無料で接種を受けられず、⾼額な⾃費による接種も困難なため、接種したくても接種できないという声が数多く寄せられています。

現在、定期接種として対象年齢の女子に無料でうたれている2価ワクチン、4価ワクチンは、3回自費で接種すると約5万円かかる。

その上で、以下の4項目を要望した。

  1. 積極的接種勧奨を差し控えている間に定期接種の機会を失った世代へ、定期接種と同様に接種を受けられる機会を提供すること。
  2. 接種機会を失う原因となった積極的接種勧奨の差し控えをやめ、積極的接種勧奨を再開すること。
  3. 接種後に⽣じた様々な症状や不安に対応する体制のより⼀層の充実を図ること。
  4. 男性を対象とした定期接種化、9 価ワクチンの定期接種化の検討を早期に開始すること。


署名提出後、記者会見した大学生は「私が中学生の時に積極的勧奨が中止されて8年経って、私の世代でもうちたいという声は聞いている。そういう方の声を届けて受け取ってもらえたらいいなと思った」と願いを語った。

「大臣も娘さんにワクチンをうっているという話があったことが印象的だった」とも振り返り、「当時反応があった方と実際に会って、そういう方々が治るように支援していくのはもちろんだし、うっていくことも今後検討していきたいというお話をいただいたので前向きに進んでいくと嬉しい」とも話した。

HPVワクチン議連 接種後の症状に対して「不安に寄り添った丁寧な対応」を

自民党の議連は2020年7月21日にも、加藤勝信厚労相(当時)に、積極的勧奨の早期再開など8項目を求める要望書を既に提出している

それからもHPVワクチンの有効性や安全性を示す報告が積み上がっているにもかかわらず、積極的勧奨再開の議論が進まないため、議論を促すために再び提言を提出することにした。

今回、議連が要望したのは以下の4項目。

  1. HPVワクチンの積極的勧奨を速やかに再開すること。
  2. ワクチンの予防効果とワクチン接種後の有害事象(※)に関する医学的に正確な情報提供に努めると共に、ワクチン接種後の有害事象に対しては、自治体と連携しつつ適切な相談・診療体制の構築など不安に寄り添った丁寧な対応ができるようにすること(※ワクチン接種後に起こったあらゆる望ましくない出来事。ワクチンの成分との因果関係は問わない)。
  3. 積極的勧奨差し控えによる情報不足のため定期接種の機会を失い、任意接種を希望する者についても、定期接種と同様に費用負担無く受けられる措置を講ずること。
  4. HPVは性感染症であるため、性教育については、医療の専門人材の活用も視野にいれた上で、妊娠や出産や避妊について必要な知識を年齢に応じた適切な形で行うことについて厚生労働省と文部科学省が連携して十分な検討を総合的に行うこと。


自見事務局長は「年間1万人が子宮頸がんにかかり、3000人弱が亡くなっているという現状は一刻も猶予が許されない。論文の積み重ねは十二分にある」として、厚労省の副反応検討部会で再開の議論を始めるよう訴えた。

また、積極的勧奨再開や9価ワクチンの定期接種化などを求めた日本産科婦人科学会と日本産婦人科医会連名の「HPVワクチンに関する要望書」も託され、同時に提出された。

UPDATE

会見内容を追記しました