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HPVワクチン、主要自治体ウェブサイトの92%で「国は積極的に勧めていない」と記載 反対派も推進派も共に「混乱を招く」

国が積極的勧奨をストップして8年が経つHPVワクチン。主要自治体の9割以上が「国が積極的勧奨を差し控えている」旨をウェブサイトに記載していることがわかり、反対派も賛成派も「混乱を招く」と中途半端な態度を取り続ける国を批判します。

子宮頸がんや肛門がんなどの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)への感染を防ぐHPVワクチン。

このワクチンについて、全国の主要自治体74自治体の91.9%に当たる68自治体が、国が積極的勧奨を中止していることをウェブサイトに書いていることが、HPVワクチン薬害訴訟全国弁護団の調べでわかった。

日本では2013年4月から、小学校6年生から高校1年生の女子が公費で接種できる定期接種となっている。だが、接種後の症状をメディアがセンセーショナルに取り上げたことで国が同年6月に積極的勧奨を差し控え、8年が経つ。

この間、知らせが届かず、接種のチャンスを逃した女子がいるのは問題だとして国は昨年10月、対象者に個別に知らせを送るよう自治体に通知した。

しかし、自治体が「国は積極的に勧めていない」とメッセージを出すことで、対象者や保護者が接種に迷う問題が起きている。

国民に勧めるワクチンだからこそ公費が支出されるのに、予防接種の実施主体である自治体が「国は積極的に勧めていない」とねじれたメッセージを出している問題が明らかにされた。

反対派も推進派も共に「混乱を招く」と、8年間、中途半端な態度を取り続けている国を批判している。

92%の主要自治体が「国は積極的に勧めていない」旨をホームページに明記

同弁護団は、2021年5 月30 日、政令指定都市・道府県庁所在地・東京23 区の計74 自治体のホームページを閲覧し、HPVワクチンに関する記述を調べた。

その結果、74 自治体中68の自治体(91.9%)が、国が積極的勧奨を差し控えていることをウェブサイト上に記してあったという。

逆に記していないのは、青森市・金沢市・福岡市・長崎市・川崎市・東京都中央区の6自治体だった。

金沢市のウェブサイトには、「保護者の方は、この説明書をよく読んで、接種回数や他の予防接種との接種間隔を守った上で、接種期限内に予防接種協力医療機関において接種を受けるようにしてください」と推奨する文言が書かれている。

ウェブサイトや予防接種のお知らせに「国は積極的勧奨を差し控えている」と書く自治体の態度を巡っては、BuzzFeed Japan Medicalが取材してきた複数の保護者が、「接種をさせたいのか、させたくないのか迷わせる」と困惑の思いを打ち明けている。

中には電話で問い合わせた自治体や保健所に、「国は積極的に勧めていないのを知っていますか?本当にうつのですか?」と事実上、うつのを止めるような対応をされた保護者もいた。

弁護団代表も、啓発団体も共に「混乱を招く」と国の態度を批判

この調査を、HPVワクチンに反対する立場から行ってきたHPVワクチン薬害訴訟全国弁護団代表の水口真寿美弁護士は、

「国民にとって分かりにくい状況になっている。そもそも定期接種というのはお勧めするから定期接種なので、それを『積極的にお勧めしていない定期接種』というよくわからない状況を作っていること自体が問題」と指摘し、「本来は定期接種から外すべきだ」と主張する。

一方、HPVワクチンで命を守るための啓発活動を続けている医師たちの団体「みんパピ!(みんなで知ろうHPVプロジェクト)」代表の稲葉可奈子さんは、BuzzFeed Japan Medicalの取材にこうコメントを寄せた。

「定期予防接種でありながら、積極的勧奨を差し控えている、という記載は、見る人に混乱と不安を与えます。困惑しているのは市民の方だけでなく、自治体も板挟みではないかと想像します」

「1割の自治体は、市民を困惑させないためにあえて記載していないのかもしれませんし、困惑を招くとはいえ国の指針ですので、9割の自治体が記載しているのも理解はできます」

「すでにエビデンスが蓄積され、十分な説明ができるようになっている今もなおこのようなスタンスのままというのは、国民に対して親切ではないと思います」

HPVワクチンに反対する側も、賛成する側もそろって国が曖昧な態度を示し続け、国民に混乱を与えていることにいらだちを見せる。

コロナ禍でこれまでになくワクチンの重要性が意識されている今、国はこうした声にどう応えるのだろうか。