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HPVワクチンのキャッチアップ接種「手続きがもっと楽なら受けられるのに」

HPVワクチンを無料でうちそびれた人に再チャンスを与える「キャッチアップ接種」。当事者の大学生は「手続きが面倒でなかなかうてない」と嘆きます。接種率は伸び悩んでいますが、どんな仕組みがあればうちやすくなるのか大学生に聞きました。

子宮頸がんを防ぐHPVワクチンは、小学校6年生から高校1年生の女子は国がお金を出してくれる予防接種だ。

しかし、国が積極的には勧めない方針を続けて、9年近く対象者にお知らせを送らなかったため、うちそびれた女性がたくさんいる。

そんな人に今年の4月から2025年3月まで、もう一度無料でうつチャンスを与える「キャッチアップ接種」(1997年4月2日~2006年4月1日の9学年の女子が対象)が始まった。

しかし、接種率の伸びは今ひとつ。

当事者に話を聞いてみると、手続きが面倒なのも足を引っ張っているようだ。

具体的にキャッチアップ接種の何が不便なのか、BuzzFeed Japan Merdicalは神奈川大学3年生の山﨑美來さん(20)に聞いた。

住民票がある実家にお知らせが届く 実家を出ている大学生は気づかない可能性も

山﨑さんは2002年2月生まれで、HPVワクチンの対象になった小学校6年生の時に国が積極的に勧めるのを停止し、お知らせが届かなかった世代だ。

「HPVワクチンというものがあること自体をずっと知らなくて、キャッチアップ接種の知らせが来て初めて知りました」

今は横浜市に住む山﨑さんは、伊豆七島の新島に実家がある。

「お盆に帰省した時に、母に『こんなの来ているけどうつ?』と実家に届いていたお知らせを見せながら言われて、『ああ、じゃあうってこようかな』と地元でうちました」

山﨑さんはコロナの流行中に大学に進学し、1年生の時から大学はリモート授業。横浜市に部屋は借りたが、結局、実家で授業を受けることになったため住民票は移さなかった。

「横浜にいないのに、そっちに郵便物が届いても困るし、その間に選挙もある。住民票を移すことにメリットがないのです。地元出身の友達も住民票は島にある子が多いし、大学の友達も地方出身の子はほとんど移していないと思います」

2年生になったら対面の授業が始まったが、そのうち緊急事態宣言が出て、また新島に帰って授業を受けた。1年の半分以上がオンライン授業になって住民票をうつすタイミングを失った。だから、キャッチアップ接種の知らせは実家に届いたのだ。

「キャッチアップ接種が始まった今年は対面授業に戻った大学も多いと思いますから、大学進学のために実家から出ている子は、実家に届いているお知らせを親が気づいてくれなかったら見ないのではないでしょうか?」

コロナワクチンの経験で「ワクチンに副反応があるのは当たり前」

親はHPVワクチンをうつことについては何も意見を言わなかったが、「副反応の騒ぎがあったよ」とだけ教えてくれた。「ふーん」と、そんな気にすることもなく、うちにいった。地元の同級生もうちに来ていた。

「パンフレットが案内の中に入っていて、読んだら大丈夫だろうと思いました。コロナのワクチンをうっていたから、ワクチンに副反応があるのは当たり前だと思ったし、同じ筋肉注射と説明されたので腕が痛むのかなと思ったのですが、それもありませんでした」

その後も痛みは全くなく、拍子抜けする感じで1回目を終えた。

子宮頸がんは性的な接触でうつるウイルスの感染が原因で発症し、HPVワクチンはその感染を防ぐワクチンだ。

性的な接触を始める前にうつのが効果があるが、パートナーがこの先変わる可能性がある人も、新たな型のウイルスに感染する可能性があるためうつ意味がある。

「性的な接触でうつることは知らなかったのですが、自分はまだ経験がないので間に合ったんだなと思いました。このことは中学生の頃から教えた方がいい。そうじゃないと、キャッチアップ世代でもう経験がある人は『手遅れか』と思ってしまうかもしれません」

面倒なのは手続き マイナンバーカードでどこでもうてるようにならないか?

HPVワクチンは3回うつワクチンだ。2回目は2ヶ月後、3回目は1回目から半年後と言われたが、そうそう帰省はできない。

「よそでうつ場合は、事前にどのクリニックでうつのか、新島の保健センターに知らせてほしいと言われました」

新島村の予防接種業務を担うさわやか健康センターによると、新島村民が村外で定期接種のHPVワクチンをうつ場合、センターがその医療機関に定期接種ワクチンを代わりにうってもらうための依頼状を出し、本人に自費で接種してもらう。

その領収証と引き換えに、本人が立て替えた費用を村が後から返却する手続きを取る。うつ場所は新島村が属する東京都外でもいい。

「まずHPVワクチンをうてるクリニックを家の近くで探すのが大変ですし、電話で予約を取ったり、新島にうつ場所を電話で知らせたりすること自体、ハードルが高い。スマホで全部できたらいいのにと思います」

「お知らせもそもそも紙でなく、スマホに送ってもらえるようなものだったらありがたい。接種券が紙だったとしても、QRコードとかをつけてそれを読み込めばスマホで記入してクリニックに出せる形にしてくれるとかなりハードルが下がります」

それよりもさらに簡便な方法はあるのではないかと思う。

「年齢を証明するものさえあればどこでも受けられるとか、手続きを簡単にしてほしい。せっかく作ったマイナンバーカードも健康保険証と紐づけるのですから、それでワクチンも受けられたら楽です」

「コロナワクチンの接種証明のように、接種回数だってマイナンバーで管理できるはずです。接種券なしでもどこでも無料で受けられる仕組みを作ればもっと受ける人は増えるのではないでしょうか」

ワクチンに対する不安は特にないのに、手続きの面倒さだけが接種するのをおっくうにさせる。

「コロナワクチンのように大学で集団接種してくれれば受けやすくなると思います。とにかく個人で予約などの手続きをするのがとても面倒で、まだ2回目をうてていません」

だから2回目のワクチンは来年2月に帰省するタイミングでうとうと思っている。

「タイミングは遅れてしまいますが、こっちで産婦人科を探すより簡単だし、副反応が出ても家族がいるから安心です」

1万7000円を立替払いするのもきつい

ワクチンの予約を入れるのも、立替払いも、アルバイト暮らしの大学生にはきつい。

奨学金で学費を賄い、生活費のほとんどをバイトで稼いでいる山崎さんは、ほぼ毎日アルバイトをしている。コロナワクチンの4回目もまだで、HPVワクチンの予約をまた別に入れるのは、副反応が1〜2日続く可能性も考えるとなかなか難しい。

1回1万7000〜1万8000円ほどかかる費用を一時的な立替払いだとしても出すのも苦しい。

3個のアルバイトを掛け持ちして、毎月の収入は平均約8万円。仕送りは2万円。家賃や光熱費を支払って、残る生活費は4万円ほどだ。

「それぐらいのお金はあるにはあるけれど、立て替えたとしていつ返ってくるのかと思うと...きついです。1万7000円って、私にとって一ヶ月の食費です。それならやっぱり地元に帰った時に立替払いなしでうちたいです」

「みんなうっているからうとう」という雰囲気作りを

正直に言えば、ワクチンに対して、「将来、自分ががんになるかもしれないから」とか、「健康のために」という感覚は薄い。

「うてるならうっとこうかな、みんながうつならうっておこうかな、ぐらいの緩い感覚です。コロナのワクチンも感染したくないからではなく、無料で受けられるからうっているだけです」

「将来のリスクを説明するより、『みんなうっているから』という雰囲気を出した方がHPVワクチンもうつような気がします。日本人ってそうですよね」

そして、うちやすいように、この世代が面倒に思う手続きはなるべくなくすことが後押しになると思う。

「紙とか電話でなくスマホで手続きが完結できるオンラインの仕組みが欲しいし、大学での集団接種もやってほしい。そうすれば、友達同士で『もうHPV ワクチンうった?』という会話も生まれて関心の薄い子にも届くかもしれません」

大学で国際文化交流学科に所属する山﨑さんは、日本に住む外国人を取り巻く問題について大学で学んでいる。日本人でもあまり知られていないHPVワクチンの情報は、外国人(※)はなおさら届いていないのではないかと感じている。

※外国籍でも住民票が日本にあれば、定期接種やキャッチアップ接種の対象となる。

「外国人にキャッチアップ接種について知らせてあげる活動もしたい。せっかく無料でうてるようになったのですから、誰でもうちやすい環境を作ることが必要だと思います」