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「人のいいヘルパーを馬鹿にしている」 リスクを押してコロナ対応するヘルパーに加算を求めて厚労省に要望

新型コロナの陽性者をケアするヘルパーにも手当てを——。医師や看護師には認められている報酬上の加算が濃厚なケアを長時間行うヘルパーにゼロなのはおかしいと、訪問介護事業者が署名と要望書を厚労省に提出しました。

新型コロナウイルスの陽性者をケアするヘルパーにも手当てを——。

コロナ陽性者にもヘルパーを派遣している訪問介護事業者の有志3人は2月17日、厚生労働相宛てに約4万筆の署名と共に、ヘルパーにも適切なコロナ対応の加算をつけることを求める要望書を提出した。

提出後、記者会見した署名呼びかけ人、株式会社「でぃぐにてぃ」(東京都新宿区)代表取締役の吉田真一さん(48)は「リスクの高い中で対応している者に対して、その価値は認めませんと言われているようなもの。理不尽で不公平だ」と是正を訴えた。

医師や看護師には加算がつくのに....濃厚なケアを長時間行うヘルパーにはゼロ

この日、署名と要望書を提出したのは、吉田さんと、NPO法人「グレースケア機構」代表の柳本文貴さん、NPO法人「暮らしネット・えん」代表理事の小島美里さん。

コロナの流行で特例的に認められた医師や看護師への訪問医療の加算が、ヘルパーにはまったくないことに疑問を感じて企画された。

厚生労働省によると、コロナ陽性がわかった自宅療養者を訪問して医療対応する場合、診療報酬上の特例として、医師は1日2万8500円(重症化を防ぐ抗体薬ロナプリーブを投与する場合は4万7500円)、看護師は1万5600円の加算が付けられている。

感染が疑われる濃厚接触者を訪問した場合も、医師は3000円の加算がつく。

それがヘルパーに対しては、障害福祉でも介護保険でも加算はゼロ。

ヘルパーはむしろ長時間、喀痰吸引(人工呼吸器を使っている人の窒息を防ぐためのたんの吸引)や食事、風呂、排泄など、濃厚な接触を伴うケアを行っているのに評価されないのはおかしいと、1月29日から署名活動を始めた。

署名はこちら:コロナ陽性者対応をしている訪問介護ヘルパーに加算手当をお願いします!

要望書では、コロナ対応加算のほか、ブースター接種の優先接種、PCR検査や抗原検査を必要に応じて速やかに受けられるようにすることを求めている。

「人のいいヘルパーを馬鹿にしている」

この日、吉田さんらは、厚労省の審議官に署名や要望書を手渡し、加算の創設やワクチンの優先接種の対応を訴えた。

吉田さんによると、審議官はヘルパーの働きを労いつつも、「既に(防護服や検査キットなどのかかり増し経費のために)設置している基金で対応してほしい」と答え、事実上のゼロ回答だったという。

柳本さんは、「訪問介護のヘルパーは日々対応に追われ、苦心している。『孫が陽性になってどうすればいいんだ』と訴え、ヘルパーがいないと排泄も食事もできない人がいます。防護服を着て行きますが、その対応が軽んじられているのかなと思う」と現状を説明した。

小島さんは、「この2年間に何回要望書を出したかわからないが、私たちの要望はほぼ実現されていない。わずかな慰労金が出ただけでおしまい。ワクチン対応も接種会場まで高齢者を連れて行くのはヘルパーなのに、ヘルパーはいつ受けられるかもわからない状態。(訪問介護の)ヘルパーはほぼ一般枠。人のいいヘルパーを馬鹿にしている、という感じを持ち続けている」と怒りをあらわにする。

自身も重度障害があり、濃厚接触者になった時に防護服を着たヘルパーの介助を受けた吉田さんは、適切な評価がなければヘルパーになりたがる人は減ると訴え、「このまま行くと訪問介護は行き詰まります。そんな社会にしてはいけない」と理解を呼びかけた。