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演説の熱気、失言...選挙戦が盛り上がるのは最終盤 投票は最後まで引っ張れ!

熱のこもった演説、勢い余って失言......。選挙が盛り上がるのは最終盤です。選挙取材歴20年以上のベテランライターに、参院選の見どころを聞きました。

7月10日に投開票を迎える参議院議員選挙。

選挙に参加する醍醐味は? 今回の参院選の争点は?

選挙取材歴20年以上のベテランライター、畠山理仁さん(49)に聞きました。

選挙が一番盛り上がるのは最終盤 投票はギリギリに

——畠山さんが考える選挙の見どころってどこですか?

これは今回の参院選に限らずですが、街頭演説を見にいくなら、最終盤が一番面白いです。

必ず投票には行ってほしいと思うのですが、できれば期日前投票はしないで、ギリギリまで各陣営の動きを見てほしいと思っています。

アメリカ大統領選でもそうですが、どんな選挙も最終盤が盛り上がるんです。候補者本人の演説もこなれてきて熱がこもるし、聴かせるライブがすごく増えます。

また、応援弁士が熱くなり過ぎて、失言するのも最終盤が多いです。

そういう失言をする人と一緒に仕事をするような人なのかと失望を感じたのに、期日前投票で既に入れちゃった...ということにならないように、できればギリギリまで投票は粘ってください。

日本の選挙期間は短いので、候補者を見極める時間は長ければ長いほどいいです。

与党は消費税減税しない、野党は消費税減税

——今回の2022年夏の参院選で面白いところはどこでしょう? 野党乱れ打ちという感じですが。

経済政策で言えば、与党、ミニ政党も含めた野党で大きく分かれていて、与党は消費税を減税しない、野党は消費税を減税する、という主張になっています。

その2択でどちらか選ぶこともできます。経済政策だけ見るとわかりやすい構図です。

いつの選挙も多くの有権者の一番の関心事は経済と景気対策なんです。そこで選ぶ、という考え方はあると思います。

——コロナ禍で経済的に打撃を受けた人は多いと思いますが、与党の支持率は高いですね。

日本人は適応能力が高いのですよね。苦しい政治の中でもなんとか生き延びる節約術を編み出します。

——変わることよりも、現状維持を選びがちだと。

そうですね。でも、それで対応できるならいいですけれど、そうでない人もいますよね。

候補者や政策のバラエティーを見るのも醍醐味

——注目の選挙区はありますか?

東京、大阪、あとは神奈川ですね。定数が多いところは立候補者が多いので、候補者もバラエティーに溢れます。そういう意味ではダントツに東京が面白いです。全国から猛者が集まってきている選挙区だと思います。

——誰が当選するかも重要ですが、そのバラエティーを見るのも面白いわけですね。

そうなんです。バラエティーに富んだ政策を見ると、いいぞと思えるものも出てくるはずです。

普段、我々は政策のことなんて考えていません。でも立候補している人は政策のことを考え続けている人なので、自分たちになかったアイディアや視点を提供してくれます。

例えば、沖縄の米軍基地を東京へ引き取ると主張している候補者がいます。支持する支持しないにかかわらず、そういう政策を見て「俺たちは沖縄に基地を押し付けているよな」と気づく。

障害のある人も複数立候補していますね。実は表で明かしていないけれど、障害者手帳を持っている候補者もいます。選挙中は政策で勝負して、当選したところで「実は障害者です」と言って勇気を与えたいと言うんです。

今回、34人の東京の候補者を見ているだけでも、世の中には本当に色々な人が存在するとわかると思います。自分の視界に今まで入っていなかった人たちも、世の中で等しく生活を営んでいることを認識できる。

そういう人たちがいることを考えるようになると、社会は豊かになっていくと思います。その気づくきっかけとしても選挙は大事なのです。

——そのためにも、新聞やテレビが取り上げる有力候補者だけでなく、全員見た方がいいよということですね。

政党の枠から出ている人よりも、この人の方が能力があるんじゃないかという独立系の候補者もいます。逆に大政党から出ていても、「この人、本当に仕事ができるの? 数合わせで出ているんじゃないの?」と思う人もいます。

——タレント候補も出ていますね。

タレント候補と呼ばれてしまう人にも、当然、能力のある人はいると思います。いつまでも「タレント候補」と呼ばれるのは、本人のせいと言うより、有権者がきちんとその人のことを見ていないからです。

演説がうまい人もいますし、自分のやりたいことがはっきりしている人もいます。支持する支持しないは別として、演説も聴かずに単なるタレント候補と切り捨てるのは失礼です。自分の知識も経験も丸裸にされるのが選挙です。プライバシーも無くなりますし、候補者は皆、相当な覚悟で出ています。

自分なりの「推し候補」を見つけて

——選挙に関して、若い人に呼びかけるとしたら、なんと声をかけたいですか?

自分なりの「推し候補」を見つけてほしいですね。それが無理なら、よりマシな候補を見つけてほしい。

そのためにはまず参加して、全国的な野外フェスである選挙を楽しもうと呼びかけたいです。

若い人は「政治には関わらない方がいいんじゃないか」と自信を持っていない人が多いのですが、大人だってちゃんと各候補の政策を見て投票している人はそれほど多くないです。掲示板のポスターだけを見て決める人もいます。

でもポスターって真実を写していないんですよ。法律で何ヶ月以内の撮影と決まっていないのです。昔の写真だったり、過去には他人の写真を載せたりして立候補した人もいます。大人だってそんないい加減な情報で選んでいるんですよ。

若い人たちには自信と責任を持って、自分の納得いく1票を投じてほしいなと思います。

【畠山理仁(はたけやま・みちよし)】選挙取材20年以上のフリーライター

1973年、愛知県生まれ。早稲田大学第一文学部在学中より、取材・執筆活動を開始。日本のみならず、アメリカ、ロシア、台湾など世界中の選挙の現場を20年以上取材している。

『黙殺 報じられない”無頼系独立候補”たちの戦い』(集英社)で第15回開高健ノンフィクション賞を受賞。『記者会見ゲリラ戦記』(扶桑社)、『領土問題、私はこう考える!』(集英社)、『コロナ時代の選挙漫遊記』(同)。