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緊急事態宣言? 都市封鎖? にわかに高まる新型コロナへの危機感にどう対応すべきなのか

東京都が週末の外出自粛を要請し、関東の各県もそれに続くなど、新型コロナウイルスへの警戒感が高まっていますが、私たちはどう行動すべきなのでしょうか。公衆衛生の専門家、和田耕治さんに聞きました。

新型コロナウイルスの感染拡大防止のために、東京都が3月25日、今週末の外出自粛を要請し、にわかに危機感が高まってきた。

これに続き、神奈川県と埼玉県の知事も今週末の外出自粛を要請。東京、神奈川、千葉、埼玉、山梨の5知事は26日、感染者の爆発的な増加を防ぐために、不要不急の外出自粛や在宅勤務などの実施を求める共同メッセージをまとめた。

厚生労働省は同日、「蔓延の恐れが高い」と報告し、政府は特別措置法に基づく「政府対策本部」を設置した。

警戒度が急に高まる中、私たち市民はどう行動すべきなのか。

厚生労働省で対策作りにも関わり、公衆衛生や産業保健、感染症を専門とする国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授の和田耕治さんに聞いた。

※インタビューは3月26日午後に行い、この時点の情報に基づいている。

地域で流行している恐れ 外出自粛の対策は妥当

ーー東京都が25日に過去最高の41人の感染者が確認されたことを報告し、週末の外出を自粛するように都民に要請しました。神奈川、埼玉でも外出自粛や東京行きの自粛を求めています。この対策は現時点で妥当なのでしょうか?

新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ方法は既にわかっているのです。人と人とが距離を開けることを徹底すれば、拡大は自然と収まることはわかっています。

東京は今、感染者の数が増えつつあります。昨日発表された41人は、潜伏期間と発症してから診断までの日にちを考えると、10日前ごろに感染したということがわかります。

そのほかにも診断されていない人がいるでしょうから、この10日間の広がりも含めると、相当数の感染者がいる可能性があります。

さらに孤発例(こはつれい)と呼ばれる、誰から感染したかわからない人も13人いました。こうしたことから「地域での流行」という段階に入った恐れが出てきました。

そうしたタイミングで、都知事が感染拡大を収めるためにより強い対策を打ち出したのです。つまり、「家にいましょう」「他の人に接しないようにしましょう」という対策は、公衆衛生上も必要だということです。

都市機能の封鎖に強制力なし 補償の問題を早急に議論して

ーー都外に出ることを禁止したり、店や建物を閉鎖したりしてもらう「ロックダウン」、都市機能の封鎖までは必要なかったということですか?

「ロックダウン」という言葉が急に話題になっています。

ロックダウンといっても各国の対応は様々です。ただ、最近は、帰国できない日本人もいたりするように、かなり強力に人を自宅から外に出さないだけでなく、町からも出ないようにすることをやっている地域もあります。

こういう対策は、市民生活にかなり影響があるし、不安もあるし、生活上の混乱も招きます。

そもそもこうしたロックダウンを日本でできるのかと言えば、「新型インフルエンザ等特別措置法」によってそこまではできないのです。

今後、特措法に基づく「緊急事態宣言」が首相から出されると、都道府県知事が所管する地域の状況を見ながら、必要に応じた措置を行うことができるようになります。

緊急事態宣言が出たら、特措法の45条に基づき、都道府県知事が、不要不急の外出自粛、また、学校や社会福祉施設、興行場(映画、演劇、音楽、スポーツ、演芸又は観せ物を、公衆に見せ、又は聞かせる施設)などの使用制限の要請ができるようになる。

ーー要請であって、強制力はないのですね。

そうです。あくまでも協力を要請できるというだけで、罰則がないのです。だから強制力が弱いです。しかし、国民には努力義務はあります。

事業者や個人にも補償がないから、インセンティブ(動機付け)が働かないともいえます。

ーー生活がかかっている事業者に制限を要請するなら、補償とセットでやるべきではないかと専門家会議の委員まで言っています。

その通りなのですが、医療の専門家が補償にまで口を出していいのかという議論があります。ただ、行動を促し、強力な対策に実効性を持たせるために、なんらかの補償が必要だと考えています。

最終的に、政治が判断しなければなりませんが、実際に地域での流行が起きつつあるのですから、早急に議論した方がいい。補償がないと、公衆衛生上、必要な対策にも実効性がなくなってしまいます。

K-1イベントで明らかになった問題

先日、格闘技のK-1イベントがあり、批判がありました。これは埼玉県知事から自粛要請があったのに開催されました。しかし、K-1だけではなく、名指しされていない多くのイベントが今週末も開催されようとしているように感じています。

新型コロナの流行が年単位で続くことを考えれば、「密閉空間」「密集場所」「密接場面」という3つの条件が重なるようなイベントについては、事業のスタイルを変更してもらうことを考えてもらわなければならないでしょう。

特に高齢者や、高齢者と接する医療従事者や介護福祉の人達もこういう場所には行かないようにと求められています。このあたりは専門家会議の提言にもありましたが、もう少し強調されるべきだと思います。

例えば、ライブイベントを中心にファンと交流するアイドルがいるそうですね。その活動を見ると、狭い空間で長時間のイベントを開き、ファンが声を出して応援する。そういう形態は危ないのです。

指摘されていないから大丈夫、ということではないので、それぞれの事業者が自分の業態を見て、感染拡大を減らす対応を考えてもらわないと困ります。

ちなみに、3月25日に厚生労働省からライブハウスで感染症防止措置を講じるような事務連絡が出されています。

ーーこれまでは個々の判断で決めてくださいと、それぞれの良識に委ねてきました。それだけでは感染拡大を防げない段階になってきたということですか?

そうした活動を続ければ、どこかで集団感染が起きるのは時間の問題です。その人が感染し、その人たちとつながっている人にうつし、大規模な感染拡大も起きかねない。

だから、諸外国でも、医療従事者が「私たちは病院に残るので、皆さんは家にいてください」とメッセージを出していますね。家にいることで命を救い、医療を守ることができるという訴えです。

“We stayed at work for you. You stay at home for us.” Love, your ER team in Richmond #GirlPower 💪🏻 #COVIDー19

@ERGoddessMD

ただずっと家にいてください、というわけではなく、地域によって様々なんです。だから地域によって対応を分けたほうがいいです。

5段階に分けて警戒度を上げる 東京は既に4段階目?

ーー地域によって対応を分けるとはどういうことでしょうか? 専門家会議の3月19日の提言でも、感染の状況によって3段階に分けて対応を考えるよう提案されていましたね。

自分の地域はどういう地域なのか考える基準が今後必要と感じています。

現時点での私の考えでは、5段階のレベルに分けたらよいと思います。ここでは、過去2週間の感染者の数を目安とします。

報道されている都道府県別のデータは全期間の累積数なので、過去2週間の傾向がわかりません。今後そうした週単位の患者の地域別の変化についても示す必要があると感じています。

レベル1は、感染者が全く確認されていない地域です。今なら、山形、岩手、鳥取、島根などがそうですね。

そういう地域でも、3要素が重なる場所は避けてほしいのですが、地域内での小規模なイベントなどは感染予防対策をしながら、開催することができそうです。ただ、感染対策をさらに充実できるように準備が必要です。

レベル2は、過去2週間に何人かの感染者が散発的に地域で見つかっているところです。そして、この1週間ぐらいは海外からの渡航者が多い傾向があります。

人口当たりの人数で基準などを考えなければいけませんが、この段階なら、さらに少し警戒のレベルを上げてもらう。その後にクラスターが発生する可能性がないかを観察します。こうした地域でも小学校などは再開できるかもしれませんが、クラスターの発生などがあれば様々な判断がなされることが考えられます。

レベル3は、感染した集団であるクラスターが見つかっている地域です。最近では、兵庫県や大分県でしょうか。

こうした地域では次の段階である地域での流行が起きないか、孤発例も含めて丁寧に追う必要があります。

また、人の集まる機会をできるだけ減らす必要があります。場合によっては学校などを再び閉める可能性もあります。職場でもできるだけリモートワークなどをすることを考えます。

その上のレベル4は、地域での感染が確認されているところです。クラスターのような感染のつながりがすでに確認できない状況です。東京はまさにこのレベル4に入ろうとしています。

レベル4は地域のまん延期ということになり、さらに進むと一時期の武漢や韓国、最近のイタリアのような状況になります。

こうなると、いわゆるロックダウンのような厳しい地域介入を取らなくてはならなくなります。学校を閉じるとか、社会機能維持のために必要な人や医療従事者だけ出勤させること、不要不急の外出はしないなど地域での強力な介入が必要になります。

だから、このレベル4にならないようにするために、みんなが普段から人と人との距離を開けておくことが大事です。

レベル5は、地域での感染が収まってくる状況です。地域での厳しい状況からどこまで下がれば、様々なことを再開できるかの判断は難しいでしょう。

武漢は1月23日に封鎖されましたが、4月8日に扉が開かれようとしています。約2ヶ月半を要しました。どの程度流行したかによりますが、なかなか判断に慎重にならざるを得ないでしょう。

ーー学校も低い段階なら再開しても大丈夫でしょうか?

1、2のレベルなら、4月から学校も対策を重ねながら再開しても大きな問題はなさそうです。すでに再開している地域もあるようです。

一つの県の中でもいろんな地域があります。

市区町村というより生活圏で考えたほうがよい場合もあります。クラスター発生が特定された地域は、より慎重に判断する必要があります。

例えば兵庫県内でもクラスターの発生している姫路市などの地域は、他の地域と分けて考えたほうがいい。人の往来なども考慮して首長などが決めることになります。

ただ、レベル3から学校の再開については慎重さが求められるでしょう。レベル4に入ると学校の閉鎖がやや長くなる可能性があります。

小学校などが閉鎖されると子どもがいる医療従事者が仕事に行けなくなることはすでに報告されています。また、新型コロナウイルスに対して学級閉鎖をする根拠や効果的なタイミングなどは今後より検討が必要です。

子供達は感染していない、させていないというデータもありますが、まだ諸外国を含めて合意した見解がありません。

ロックダウンは必要なのか?

ーー現時点で、東京は既に地域流行が起きている段階かもしれないということですが、都外に出ないようにしたり、自宅待機や店や建物を閉鎖してもらうロックダウンまでは必要ないのですか?

ロックダウンが何かという明確な定義もないのですが、社会活動のレベルを落として、その地域に行かない、その地域から出さないことと言えます。しかし、特措法では限界があります。

東京で感染者が数多く出ていれば、そこには来たがらなくなると思いますから自然に流入する人は減るでしょう。一方で、都民は都外に出るなという要請は、今後どれほど受け入れられるかわかりません。

東京都に限らず、感染者が出ている地域から近隣県に行くことについて、どうするかという話は今後議論しなければならないでしょう。また、流行している地域に出張に行っただけで2週間自宅待機となると大変です。

しかし今後は地域を超えて移動することが、少なくとも今後1年はかなり厳しくなる可能性があります。そうしたなかでビジネスや人のつながりをどう維持するのか考えなくてはいけない。

ある意味、地元でのつながりを大事にする1年になるのではないかと思います。

地域で流行がなければ、感染対策をしながら、小学校の入学式や小規模なイベントは開催できるでしょう。けれども、全国や世界から人を呼ぶイベントは数ヶ月単位で難しいと考えてもらったほうがいい。

ーークラスターが発生している地域は中止を考えた方がいい段階ですか?

クラスターが追跡できなくなって、地域の流行が起きれば、場合によっては特別措置法に基づいた緊急事態宣言が出て、不要不急の外出などが制限される可能性があります。その時に何ができて何ができないのか想定しておいてほしい。

例えば東京は、今週末は幸いなことに雨で寒そうなので、人出は少ないと思います。それでも行動変容が足りないと判断されれば、より厳しい制限をかけざるを得ず、緊急事態宣言に基づいた対策をやることにもなりかねません。

その時に、電車は通常通り動くのか、スーパーマーケットは開けるのか、今のうちに事業者がどうするかということを示してほしい。早めに計画していることを公開してほしい。

ーー急に方針示されたら混乱を招きますよね。

電車も急に7割運行などになれば、すごく混乱してしまう。その場合に影響を受ける人の混乱を考えて事業計画を早めに示してほしい。

中国の経験からの光明 感染を防ぎながら社会を維持する方法

ーー生活がガラリと変わりますし、変えざるを得なそうですね。

地域で流行が広がるレベル4になると、家にいてもらうことがすごく大事になります。ただ、日本では特措法でも外出禁止はできません。外を歩いている人を止める条項はないのです。

日本人の良心に訴えかけるしかない。緊急事態宣言が出たら、学校はどうするのか。例えば東京の学校も4月からどうなるかわからない。

制限を始めると、やはり解除するのは難しい。少なくとも3週間は続けないと、感染拡大が収まっているかはわからないです。場合によっては、都市部の学校は長期間、影響を受ける可能性を危惧しています。

ーー数ヶ月とかですか?

そういう地域も出てくる可能性があります。そうすると、社会機能維持をする人、特に医療従事者などは小さな子どもがいれば職場に行けなくなる可能性があります。子どもをどこで預かるか真剣に考えないと医療やその他のインフラが回っていかなくなるのです。

地域での流行が大きくなれば、少なくとも1ヶ月以上、地域封鎖のようなことをやらないといけなくなります。影響が大きいです。

一方、中国の経験を見ると、多少ながら希望も持てます。

中国では、まだ感染していない人(免疫を持たない人)がたくさんいますが、経済活動をある程度続けながら感染拡大を起こさないようにするバランスがわかってきたという説があります。これはある意味、朗報です。

先日、香港在住の日本人で、中国へ投資をしている人と話をしたのですが、その人が言うには、中国は経済の動きとしては8割程度、すでに再開しているという話です。

止めている2割は何なのか聞くと、人が集まるような場、イベントや飲食店などはまだ閉じており、こうした場での感染を防げば、経済活動を両立できる可能性があるということです。

ただ、データについては透明性の課題もあるようなので、様々なチャネルからの情報収集が必要です。

参考になるシンガポールの対策

ーーしかし、イベント主催者や飲食店にとっては厳しいです。どういうところを閉鎖すると効果的なのでしょう。

シンガポールや香港での対策に注目しています。シンガポールは、5段階のレベルでいえばレベル3。地域での持続的な流行にまで達していませんが、より強い対策を行っています。

人と人との距離を開けること、10人以上の集まりを避ける。さらに、バー、ナイトクラブ、ディスコなどを閉鎖しています。

小池知事はおそらくそういうことを慮って、「夜は出歩くな」と言いました。これはつまり、このような夜に楽しむ娯楽の場所には行かないでというメッセージだと思います。

ただ、日本で具体的に業態の名前を出すと、風評被害も出てくるでしょうし、補償の問題も手をつけられていないので、特定の業態を明確に示せないところがあります。

ーー明確に言うとハレーションが大きいから、ぼかしているということでしょうか。

香港もお酒が飲める店を閉めたりしています。中国はいったんかなり社会活動を下げて徐々に戻し始めています。それでもこういう夜にお酒を飲むような場所の解禁は慎重にしている。

レベル3ぐらいまでであれば、都市機能を8割ぐらい残しながら、イベントや夜に人が集まるような場所を減らして日常が送れるかもしれないという可能性があるかもしれません。

もちろん、日本の場合、社会がそれを容認できるのかというのが今後の課題ではあります。

ーー飲食店の人たちは店を閉め続ければ生活していけません。そこだけを切り捨てていいというわけにはいきません。

補償なり、新しい事業への転換も必要となるでしょう。

シンガポールの対策は感染対策上よくできている印象です。日本でもいずれ参考にしなければならない時が来ます。

シンガポールでは、イベントはどんな規模でも禁止しています。海外ではそれぐらいの危機感を持ってやっている国もあるということは知っておいてほしいのです。

【シンガポール政府の対策抜粋】
バー、ナイトクラブ、ディスコ、映画館、劇場、カラオケ店など娯楽施設を閉鎖します。


小売モール、美術館、アトラクションなど、接触が一時的なものである公共施設については営業を継続して良いが、事業者は以下のことを確保しなければなりません。


一度に利用可能なスペースの16平方メートルあたりの人数が1人を超えないように、会場内の稼働能力を低下させる。これは、特にピーク時の混雑を大幅に減らすためのものです。


団体は10人を超えてはなりません。アトラクション内でのショー(屋内・屋外)、美術館での団体ツアー、オープンアトリウムでの販売イベントは中止されます。


来客者を分散させ、観客の間に少なくとも1メートルの物理的な間隔を空けることができる環境を提供してください。これには、行列や待合室などが含まれます。オペレーターは、行列を最小限に抑えるために、可能であれば予約制またはデジタルサービスを通じてサービスを提供することが奨励されています。来客者は迅速に分散されるべきです。


飲食会場については、既存の措置が引き続き適用されます。その他、ライブやカラオケなどは中止されます。飲食店は、テーブルの間隔を少なくとも1メートルの距離を確保するようにスペース(テーブルや座席の配置)を設定しなければなりません。


家族やカップルなどの関係者が1つのテーブルに一緒に座ることは可能ですが、テーブルの間隔を空けなければなりません。


グループでの食事は10人以下に制限されなければなりません。


固定席のある飲食店(例えば、ホーカーセンターやコーヒーショップなど)の利用者は、間隔をあけて使用(席を1つ開ける)しなければなりません。施設の管理者は、席に目印をつけるべきです。


(出典:在シンガポール日本国大使館)


不安を抱く一般の人がすべきことは?

ーー東京のような首都で、外出自粛が要請され、急に生活制限が厳しくなってみんな不安になっています。さっそくスーパーでの買い占めも始まっています。

急に引き締めがなされました。関東が今、注目を集めていますけれど、全国どこでも起こり得ることです。数十人規模のクラスターが起きてしまえば、一気にその地域の様相は変わります。

だから、改めて、「密閉空間」「密集場所」「密接場面」という3要素は避けてほしい。小規模の懇親会でもこうした3要素があり感染拡大がおこり得るかもしれません。

もう一つ、最近、増えているのは、医療機関のクラスターです。大分医療センターや東京の永寿総合病院でも院内感染がありました。

こうした時期なので、特に医療機関に行く際には注意が必要です。

一番心配なのは、休日や夜間診療所です。感染対策も平日日中ほどしっかりしていないでしょうし、すごく混んでいた場合、そこに感染者がいれば、一気に感染が広がるかもしれません。

本当に必要な人は仕方ないと思いますが、土日に具合が悪くなった場合、症状が自宅で様子を見られる範囲内ならなるべく行かないほうがいい。検査してほしいと押しかけると、かえってそこで感染するかもしれません。

なるべく外に出る機会を減らし、他の人と交わる機会を減らすことが大事です。地域ごとに差があるので、今後、詳しい基準が示されると思いますが、自分の地域がどういう状況になっているかを知った上で対応してください。

多くの人が感染して免疫をつけ、「集団免疫」を獲得しないと流行が終わらないとも言われていますが、こうしたウイルスとの付き合いをしながら日常生活を続けていける可能性も見え始めています。

ただ、忘れてはならないのは、高齢者が感染すると2割ぐらいは入院が必要になり、全体の5%は人工呼吸器が必要なほど重篤になること、若い人でも重篤になり死亡する可能性があることです。

オリンピックが延期されました。感染者の流入をさせない、感染者を大会で発生させない、感染者を流出させないという対策との両立はかなり難しいです。1年後という案があるようですが、特に選手や関係者の間での感染対策ができるのか。

最後に、一番大事な手洗いは引き続き徹底してください。どんな段階でも感染対策のために個人ができる一番重要なことは、人が触ったところに触れたら必ず行う手洗いです。

あともう一つだけ大事なこと、たばこを吸っている人は禁煙してください。喫煙者の重症リスクは極めて高いです。

【和田耕治(わだ・こうじ)】国際医療福祉大学国際医療協力部長、医学部公衆衛生学教授

2000年、産業医科大学卒業。2012年、北里大学医学部公衆衛生学准教授、2013年、国立国際医療研究センター国際医療協力局医師、2017年、JICAチョーライ病院向け管理運営能力強化プロジェクトチーフアドバイザーを経て、2018年より現職。専門は、公衆衛生、産業保健、健康危機管理、感染症、疫学。

新型コロナウイルスの発生と「指定感染症」への指定を受けて、編集に関わった『新型インフルエンザ(A/H1N1)わが国における対応と今後の課題』(中央法規出版)を期間限定で公開している。