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Updated on 2020年7月6日. Posted on 2020年7月1日

夏休みの旅行はどうすべき? 新型コロナ時代の旅行で考えておきたい7つのポイント

7月に入り、そろそろ夏休みの旅行を計画する季節。新型コロナの感染拡大への不安もある今年は、旅行に行ってもいいものでしょうか? 公衆衛生の専門家と考えます。

7月に入り、そろそろ夏休みの旅行も具体的に考える季節となってきました。

しかし、心配なのは新型コロナウイルスの感染拡大です

政府による観光産業応援キャンペーン「Go Toキャンペーン」も間もなく始まりますが、旅行には行っても大丈夫なのでしょうか。もし行くとすれば、何に気をつけたらいいのでしょうか。

Gen Umekita / Getty Images

そろそろ夏休みの旅行の計画を立てるころだが...

公衆衛生や感染症を専門とする国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授の和田耕治さんにお話を伺いました。

【旅行で考えておきたい7つのポイント】

  1. 行く時期を分散化する
  2. 旅行 の1~2週間前から感染リスクの高い行動を取らない
  3. 飛行機で行くような旅行、海外旅行はなるべく避ける
  4. 旅行の種類も考える
  5. 観光地では1~2mの距離を空け、3密を避ける
  6. 屋内イベントは5つの条件からリスクを評価
  7. 地元再発見の旅から始めてみては?


※インタビューは6月27日にZoomで行い、この時点の情報に基づいている。

新型コロナはしばらく「落ち着かない」 行ける時に行く

ーーそもそも今の日本、世界の流行状況で旅行に行っても大丈夫なのでしょうか?

地域での感染がなければ、その範囲で旅行するのはいいと思います。ただし、感染拡大した場合は、すぐにやめられるようにはしておきたいです。

旅行会社でもキャンセル料は無料にしているところが出ています。流行していない時に、健康な人がさっと行って、さっと帰ってくるのはありかもしれません。

多くの人は自身の体調を考えて判断していると思います。でも、一部、「今行っておかないと休みが取れない」などの理由で、体調が悪いのに無理して行ってしまう人もいるようです。

ーー今の東京のように毎日二桁新規感染者が出ているところからどこかの地方に行く、逆に地方から東京に来るということも不安に思われています。

その一方で、ある程度の人の移動はできるようにしておかなければならないと思います。出張もあるでしょうし、必要な訪問もあるでしょう。例えば、親の介護は行ける時に行かなければならないでしょう。

終末期の人が最後の旅行に行きたいなど、どうしても行くべき旅行はあるでしょう。

この後、日が経てば経つほど状況がよくなるという見込みは一切ありません。むしろ冬に向かうにつれて状況が悪化する可能性もあります。

地方に住む私の高齢の親は、私から「そのうちそちらに行こうか?」と電話をかけると、「いいよ。落ち着いてからで」と言われるのですが、新型コロナが落ち着くのはかなりしばらくしてからでしょう。行ける時に行っておくという考えも必要です。

ポイント1 : 行く時期を分散化する

ーーそうなると、何に気をつけて旅行したらいいでしょう?

まずは、行く時期を皆で分散化するとよいでしょう

お盆や正月の帰省ラッシュなどで、一斉に人が動くのは感染拡大のリスクです。行く時期が重ならないように、みんなで調整してずらしてほしいと思っています。国もそうした呼びかけをそろそろしてもよいのではないでしょうか。

既に我々は経験していますが、毎年1月の2週目にインフルエンザ流行はピークを迎えていました。これはお正月の帰省の影響が多いと考えられています。

12月は子どもたちの間でインフルエンザが流行しているのですが、これがクリスマスから年末の休みに入ると、感染者の年代がどんどん上がります。大人にうつって、そこから高齢者にうつる。

人の動きや接触によって感染は拡大します。今年の年末もお盆の時期もそうですが、あまり一斉に移動しないでと言われることを想定しておいた方がいい。

お盆やお正月にどうしても行かなければいけない人は早めに計画しましょう。どうしても行かなければいけない人を優先しましょう。

住む場所と帰省先が流行していないなら、混まない時期を見てサッと行ってサッと帰るのは一番リスクが少なそうです

ポイント2 : 旅行1〜2週間前からハイリスクな行動を取らない

おそらく都市から地方に行く人が多いと思います。地域のリスクと個人のリスクがありますが、地域のリスクは新規感染者が直近1~2週間でどれぐらい出ているかでわかります。

地域での流行がみられると、「○○地域の人は出てくるな」「○○地域には行くな」という声が聞かれるようになります。

地域での流行というのは、「孤発例」と呼ばれる感染経路不明者が多い状況のことを指します。特に、高齢者などの孤発例があると地域での流行が起きている可能性が高まってきます。

しかし、その地域の人のすべてが感染リスクがあるかというとそうではありません。個人的に対策をしていれば、感染リスクは低くできます。そういう人たちの移動も含めて一律にだめとするのではなく、安全に行ける方法を今後は考えなければいけないと思います。

つまり、出発する1〜2週間前にハイリスクな行動をできるだけ取らないことが大事です。

出発の1~2週間前から熱を毎日測って、症状も確認して記録しておく健康ダイアリーをつけておくといいと思います。こうした真面目な対応をしている人の移動が制限されるようなことがないようにしていかないといけません。

今後そうしたアプリも作られればいいなと思っています。

ポイント3 :飛行機で行くような旅行、海外旅行はなるべく避ける

ーー海外旅行はどうでしょうか?

海外旅行はやはりこの1年は、不要不急のものは難しいと考えた方がよいと思います。人の移動があると、感染拡大のリスクはどうしても増します。

世の中には不要不急でなく、ビジネスや介護、見舞いなどで今、どうしても行かなければいけない人もいる。その人を優先してあげてほしい。

でも、行った先で万が一、発症すると帰って来られなくなる可能性があります。帰りの飛行機にしばらく乗れなくなりますからね。離島などは難しいでしょう。

また、海外だと医療費がものすごくかかる可能性があります。

流行地であれば、向こうでもらってきて日本に持ち込む可能性もあります。

できればこの1年ぐらいは様子を見てほしいと思います。

ーー海外に行くとしたら、医療費をカバーする旅行保険に入っておいた方がいいですね。

必須でしょう。そもそも保険が新型コロナにきくのかどうかもわかりません。どこまでの医療費がカバーされるのか事前に確かめた方がいいと思います。

ポイント4 : 旅行の種類も考える

ーー夏の旅行ですと、海や山や川など屋外で遊ぶことも多いですね。換気はいいかなと思うのですが、こういう旅行なら感染のリスクは低いのでは?

もちろん一律に旅行は危険だというわけではありません。旅行の種類を考えて、感染リスクを下げるという考え方もありだと思います。

Mint Images / Getty Images

例えば、家族だけで車で移動して、現地に行って、キャンプやホテルで家族だけで過ごして帰ってくる、という行動は感染リスクは低いです。

一方で、行った先で不特定多数の人と交流して帰ってくるような旅行はリスクが高くなるでしょう。例えば音楽フェスなどはリスクが高いと言えそうです。そういう旅行は、より注意してもらわなければなりません。

車で行って、万が一、現地で具合が悪くなったとしてもドライブして3〜4時間で帰ることができる距離ならば、行っても問題はないと思うのです。

ーー4月の流行時には、自覚症状がない若者がハイリスクな高齢者に感染させたらまずいということで、帰省もやめましょうと呼びかけられていました。今度の夏はどうでしょう? まだオンライン帰省が必要ですか?

すでに、都市から地方に戻って、現地で発症したという事例があります。「自分だけは大丈夫」と思ったり、すでに予定があったり、チケットが解約できなかったりするとは思います。

しかし、現地に迷惑をかけたり、大事な家族で特に高齢の人に感染させたりする可能性があります。

中長期を見据えて、親世代や祖父母世代とオンラインで顔をみて話せるよう設定してあげるために、気をつけて一度帰省することも必要かもしれません。

専門家会議

4月22日、ゴールデンウィークを前に専門家会議が出した「人との接触を8割減らす、10のポイント」。筆頭に「ビデオ通話でオンライン帰省」が呼びかけられた

ーー自覚症状のない若者が高齢者にうつすリスクはGWの時と変わらないですね。

リスクはゼロになりません。

でも、人にうつすリスクは、まず行く人がどこに住んでいてどういう仕事をしているのかにも左右されます。

世の中で今、感染リスクが高いのは医療従事者です。接待を伴う飲食店など、不特定多数と接する仕事の人もリスクが高いでしょう。

しかし、そういう人は逆に人並み以上に感染に注意しているはずです。もう少し個別にリスクを考えて判断しないといけません。帰省先で会う人に重症化のリスクがあるかどうかも考慮しなければいけません。

ポイント5 : 観光地ではできるだけ距離を空け、3密を避ける

ーー様々な観光地がありますが、観光の際に気をつけるべきことはありますか?

日本であれば、全国どこでも多くの人はマスクをしているでしょうし、人とは1から2mの距離を空けて、1m内で15分以上マスク無しで喋るようなことをしなければ、感染リスクはそう高くないと思います。

海水浴や山登りなどは換気も良く、感染のリスクは低いでしょうし、例えば、美術館や博物館などでクラスターが発生するとはとても思えないのですよね。感染リスクがあるとすれば、声を出すような場所で人の交流が多いところでしょうね。

ーー黙って見学するだけでしょうしね。

例えば東京スカイツリーのようなところでも距離を空けて、他人同士がマスクをしていて、お互いそんなに喋らなければ、手洗いだけすれば感染リスクは少ないと思います。

ーー遊園地やディズニーランドも再開していますね。叫ぶといえば叫ぶ乗り物があるかもしれません。

ジェットコースターでキャーと叫んで、後ろの席の人に飛沫が飛んだらどうするんだという疑問が出そうですね。

「あなたはどうするのですか?」と問われたら、そのときしかチャンスがなくて自分の体調は悪くなければそうした場所には行くかもしれません。

私自身は、ダイヤモンドプリンセス号でも仕事をさせていただいたように、自分を感染から守る手段を知っているからとも思いますが、適時手洗いをしてマスクをすればある程度リスクは回避できるかもしれません。

しかし、家族はどうですかね。あとは、そのときの感染拡大状況と、他の人たちがどう行動しているかによって決めるでしょうね。

いずれにせよ、多くの人が声を出して3密と言われているようなところは、あえていかないようにします。やはり、「リスクの高いところには近づかない」が正しいと自分では思っています。

ポイント6 : 屋内イベントは5つの条件をチェック

ーー屋内イベントはあまり行かないようにしていますか?

屋内のイベントは比較的感染リスクが高いということで慎重な対応が議論されています。

屋内イベントの感染リスクを評価するには以下の5つの条件を見る必要があります。これらが重なれば重なるほど感染リスクが増します。

  1. ファンの間での交流(不特定も含む)などがあるのか
  2. 踊るなどして観客の呼吸が増したりするのか
  3. 歌ったりして飛沫が増す環境があるのか
  4. 飲食や飲酒はあるのか
  5. 人の都道府県の移動はあるのか


特に、不特定多数のファンが交流するようなイベントはリスクが高くなります。また、その場でみんなで踊ったり、歌ったりすること、さらには飲食や飲酒など数が増えれば増えるほど感染拡大のリスクは上がります。

例えば、クラシックコンサートのようなものですと、あまり上記は当てはまりません。お互いにマスクをして、あまりお話をしなければ、周りに飛沫を飛ばす可能性、吸い込む可能性もかなり低くはなると思います。

定員に対する人数(収容率)を50%まで下げる必要はないのではないかと私は考えています。

ただ、こうしたコンサートでも隣や前後への飛沫はまったくないわけではありません。時々咳をする人をどうするかといった課題もあります。

また緊急事態宣言のような自粛の要請が出た場合は、コンサートを開催すべきかどうかといったことも考えなければいけません。急にキャンセルすると返金をしなくてはいけませんし、場所のキャンセル代など大きな負担になります。

飲食や特に飲酒を伴う会合はいわゆる3密プラスアルファの要因として、注意が必要です。

屋内イベントではないですが、屋内での法事やお葬式などでも家庭クラスターが発生しています。中止はしなくてもよいですがこうした場でも感染対策は必要です。

ポイント7 : 地元再発見、近距離の旅行から

ーー移動はリスクと思われてきましたが、旅行も考えて行けばリスクを高めずに楽しめそうですね。

行ってもいいかなと思うのは、近距離の旅行です。また、「地元再発見」じゃないですけれども、近距離で、何かあったらすぐ帰って来られるぐらいの短い旅行はいいと思います。

海水浴の季節も近いです。ある程度距離がお互いにとれるなら感染リスクは低いかとは思います。もちろんその人が健康であることが大前提です。

行った先で具合が悪くなった場合、近くならすぐ帰れますが、飛行機でしか行けないような遠いところは帰れなくなるリスクがあります。

ーー暑い季節ですが、夏の旅行、旅先での体調管理はどうしたらいいと思いますか?

私が旅行に行くなら念のため程度に体温計を持っていくかもしれないですね。熱が出そうになったら、いち早く家に帰るでしょう。旅先で医療機関を受診して入院となったら困りますから。

ーー体調管理するためにハメは外さないほうがいいのでしょうね。暑い中歩き回りすぎて熱中症になるとか、旅先で暴飲暴食して体調が悪いとならないように。

特にこの1年は慎重に過ごしたほうがいいと思います。楽しいイベントは楽しいまま帰ってきたほうがいい。健康第一で旅行を楽しんでほしいです。

ーー最後に旅行を楽しみたい人たちに一言お願いします。

旅行といっても、その内容によってリスクは変わります。感染するリスクと感染させるリスクがあります。それは、今いる地域の流行状況と個人の過去1週間から2週間の行動によってリスクが決まります。

旅行といっても不要不急のものから、楽しみのために行くものまで様々です。介護などどうしても行かなければ行けない人は、社会として優先させてあげたい。その場合、旅行に行く人は早めに計画をたてて、時期を分散化して行ってほしい。多くの人が移動する時期はずらすことです。

企業側も、従業員に分散して休みを取らせてあげる配慮がこの1年は必要です。

ただし、体調確認しながら恐る恐る行ったとしても、感染はゼロにはならないでしょう。感染した人を責めることのないようにしてほしいです。

新しい生活様式は自分を守り、周りを守る思いやりに満ちた行動様式です。たまたま感染した人がいても自分を守れるようにすればいいのです。

私もあなたも何年かの間にいつかどこかできっと感染します。

そういう病気なのですからお互いに守り合う文化を作ることが必要です。新型コロナと共存する時代、互いに思いやりを持って行動することが旅行においても求められるのだと思います。

【和田耕治(わだ・こうじ)】国際医療福祉大学国際医療協力部長、医学部公衆衛生学教授

2000年、産業医科大学卒業。2012年、北里大学医学部公衆衛生学准教授、2013年、国立国際医療研究センター国際医療協力局医師、2017年、JICAチョーライ病院向け管理運営能力強化プロジェクトチーフアドバイザーを経て、2018年より現職。専門は、公衆衛生、産業保健、健康危機管理、感染症、疫学。

『企業のための新型コロナウイルス対策マニュアル』(東洋経済新報社)を6月11日に出版。

Contact Naoko Iwanaga at naoko.iwanaga@buzzfeed.com.

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