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ワクチン接種6割が前向き、4割にためらい 情報判断に自信のない人ほど接種に消極的に

新型コロナワクチンの接種についての調査で、6割は接種に前向きなものの、4割がためらいを抱いていることがわかりました。7割が副反応に不安を抱き、あふれる情報を正しく判断できる自信がない人ほどためらう傾向にあります。

新型コロナウイルスのワクチンを接種したいか、7月半ばに首都圏の市民に尋ねたところ、約4割が「もう少し様子をみたい」「接種したくない」などためらいの気持ちを持っていることが、国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授の和田耕治さんらの調査でわかった。

接種をためらう理由として、7割が「副反応が心配だから」を挙げていた。

調査した和田さんは、「ワクチン接種率を底上げするためには、それぞれの世代や性別の特徴を見ながら、インセンティブや情報の伝え方をみんなで考えていかなければならない」と話している。

6割が前向き、4割がためらい 「副反応が心配だから」が7割

調査は7月13日から15日までの3日間、1都3県(神奈川、千葉、埼玉)、20代から60代の市民(男女)を対象にweb調査の形式で行われた。3129人の回答があった。

このうち新型コロナ感染症のような症状が出て、PCR検査を受けた人は195人で6. 2%。新型コロナ感染症と診断を受けた人は22人で0.7%だった。

知り合い(メールや電話で連絡が取れる人)で、新型コロナウイルス感染症に感染した人がいるかという問いには、551人(17.6%)が「いる」と答えた。

ワクチン接種について尋ねたところ、「できるだけ早く接種したい・すでに1度以上接種した」と、接種に積極的な人が最も多く、1794人(57.3)だった。

一方、「もう少し様子をみたい」が746人(23.8%)、「接種したくない」が268人(8.6%)、「あまり接種をしたいと思わない」が263人(8.4%)と、接種にためらいを見せる人は合計1277人、40.8%に上った。

さらに、このためらいを見せた1277人に理由を尋ねると、「予防接種後に、何らかの副反応が心配だから」が最も多く、910人で71.3%だった。

「新型コロナ感染症の予防接種の効果を信じていないから」(7.0%)、「注射が嫌いだから」(6.3%)、「感染しても重症にならないと思うから」(3.1%)がそれに続いた。

女性、特に若い女性でためらいが強い

年代別、性別で見ると、「もう少し様子をみたい」「接種したくない」が20代、30代の女性で6割近くを占め、40代の女性も「もう少し様子をみたい」「接種したくない」の合計が半分を占める。

男性でも20代では半分がためらいを見せている。

また、女性ではほぼ全ての年代で8割近い人が「何らかの副反応が心配」を選んでおり、女性で特に副反応への不安を抱えている人が多いことがわかる。

和田さんと共に解析したニッセイ基礎研究所研究員の村松容子さんはこう考える。

「女性は不安というものにセンサーが鋭いところがあるので、この調査以外でもおそらく女性の不安は強いのだと思う。特に若い女性は、予防接種で家族の意見を聞く傾向があるため、直接若い女性に働きかけるよりは、親が接種を推奨されるとか、親の副反応の状況を見ながら自分も決めるとか、親がどう対応するか経験してから自分もうつとか経験してから自分もうつとかした方が、気が楽に受けられるのではないか」

効果の信頼感は高いものの...中長期の副反応に不安

また、新型コロナワクチンについての印象や、ワクチンに関する情報を読み解く力についても聞いた。

ワクチンの効果については「そう思う」「ややそう思う」と答える人が7割いて、肯定的な人が多い。

ワクチン接種にためらいがある人のうち、半数はワクチンの効果を信頼していた。多くの人が救われていると思う人も54%に上った。

一方で、ワクチンの安全性について信頼しているかという問いには、「そう思う」「ややそう思う」が57.9%となり、「あまりそう思わない」「そう思わない」が4割を超える。

ただワクチンで多くの人が救われていると思うか聞くと、68.1%の人が「強くそう思う」「まあそう思う」と肯定的な意見を述べた。

そして、接種をためらう人の88.1%は、現時点では明らかでない中長期的な副反応が心配だと答えている。

また、「政府(国)の予防接種に関する推奨や判断を信頼していますか」という問いに対しては、「強くそう思う」「まあそう思う」が合計37. 3%で、「どちらでもない」(36.5%)と拮抗している。

「あまりそう思わない」(16.4%)「全くそう思わない」(9.8%)と、政府の判断に否定的な回答が計26. 2%と4分の1以上に上った。

和田さんは「政府の信頼性はワクチン接種に大きく関係してくるのですが、その影響からワクチンに反発があるのかもしれません」と話す。

情報の判断に自信が持てない人はためらう傾向

さらに、

「もし必要になったら、病気や健康に関連した新型コロナウイルスのワクチンについての情報を自分自身で探したり利用したりすることができると思いますか」

「新聞、本、テレビ、インターネットなど、いろいろな情報源から新型コロナウイルスのワクチンについての情報を集められる」

「たくさんある情報の中から、自分の求める新型コロナウイルスのワクチンについての情報を選び出せる」

「新型コロナウイルスのワクチンについての情報がどの程度信頼できるかを判断できる」

「新型コロナウイルスのワクチンについての情報をもとに健康改善のための計画や行動を決めることができる」

と情報を正しく読み解く力を尋ねる問いには、「どちらでもない」「あまりそう思わない」「全くそう思わない」を選ぶ人が36.3%から61.4%に上り、情報を判断する力に自信が持てないと考えている人が数多くいた。

そして情報を読み解く力に自信がない人ほど、接種に消極的である傾向も明らかになっている。

和田さんは「『最後は自分で判断してください』ということは正しいのですが、もう少し『接種した方がいいよ』と勧めてあげないと、決めきれずに時間だけ経ってしまうのはもったいない。意思決定をどう支援するかが課題ですが、集団接種ではなく個別接種の場で丁寧に説明したり、接種の前に看護師が丁寧に説明したりするなどしかないと思います」と丁寧なコミニュケーションの必要性を指摘した。

信頼する情報源は「医師、看護師などの医療従事者」

さらに、「予防接種をするかしないかについて決定する際に、最も信頼している情報源」を尋ねたところ、最も多かったのは「医師、看護師などの医療従事者」で39.4%だった。

「どれでもない」が23.0%と次に多く、政府や自治体などの行政機関(10.7%)を上回る。

和田さんは「医療界はあらゆる診療科で医師や看護師が患者さんにワクチン接種したかどうか尋ねて、まだの方には地域で接種できるところを紹介するような『総力戦』でもやるしかないだろうと思います」と話す。

接種した人の前向きな声かけ、インセンティブも

また、高齢者と接する仕事をしていたり、インフルエンザの接種をする人は、コロナワクチンも接種する傾向が見られた。

さらに、接種した知り合いが身近にいると、自身も接種する傾向が64%まで上がっていた。知り合いがいない人では約36%だった。

以上のような結果から、和田さんは接種にためらいを感じている人に対する勧め方についてこう提案する。

「風疹のワクチンでもワクチンを成人の年代にやる場合、知り合いが接種していることが一番接種に促すことがわかっていました。今回の調査でも7割を超える人が『誰か知り合いが接種した』と答ているので、接種して実際どうだったか、副反応をどう乗り越えたかも話題にしながら、いろんな人との対話の中で意思決定につながることができれば」

「接種をした人が、接種に関する体験を語っていただいて、できれば周りにポジティブな声かけをしていただきたい。しかし、『接種したくない』という意見があった場合に対立はしないようにしていただく必要はあります」

その上で、若い世代では実際に副反応が多いこともあって体験の共有だけでは進まないとして、これからワクチン接種する若い世代、特にためらいが強い女性の対策についてはこう述べた。

「このワクチンを接種すると何らかの生活の利益があるよというインセンティブも含めた施策も一緒にやっていきながら、一人でも多くの方が冬を迎える前に接種を進める環境づくりを考えなければなりません。インセンティブも不公平感につながらないように、みんなで方法を考えていきたい」

この調査では「知り合いに新型コロナに感染した人がいる」ことは、接種行動に強い影響を与えていないこともわかっている。