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「医療機関にマスクを」「社会的弱者に支援を」 新型コロナで困っている人のために専門家有志が寄付と助成先を募集

新型コロナウイルス感染症の拡大を防ぐための活動を支援しようと、専門家有志の会が基金を設立し、寄付と助成先の募集を始めました。

新型コロナウイルス感染症の拡大が止まらない。

この勢いをなんとか食い止めようと、専門家の有志が「新型コロナウイルス感染症:拡大防止活動基金」(発起人代表・小坂健・東北大学国際歯科保健学分野教授)を4月3日設立し、寄付と基金の助成先の募集を始めた。

医療機関になかなか行き渡らないマスクや手袋、ガウンなどの医療用防護具を届ける新しい仕組み作りや、社会的な孤立が心配されている子どもや高齢者、低所得者らの支援など、新型コロナの対策に新しい視点で取り組む個人や団体の活動に助成する。

READYFOR株式会社の代表取締役CEOの米良はるかさんも発起人の一人で、同社のクラウドファンディングサービスを使って、4期に分けて寄付を募る。寄付控除も受けられる。

BuzzFeed Japan Medicalは、有志の会発起人代表の小坂さんに狙いなどを聞いた。小坂さんは、厚生労働省の対策づくりにも関わっているが、この活動は個人として行なっている。

基金のサイトはこちら。第1期の締め切りは4月10日。

国の支援で行き届かないところに新しいアイディアを

ーーどういう目的で作られたのですか?

新型コロナウイルスが流行して、色々な問題が起きていますね。

医療機関にマスクが行き渡らない問題や休校になって家にいる子どもや社会的弱者の支援など色々あるのですが、国ができることは限られています。

アイディアはあるし、自分も何か支援したいのだけれども、資金がなくてできないという人を応援したいというのがこの基金の狙いです。

ウイルスが敵なのですが、対応しなければいけないのは人であって、うつしてしまうのも人です。それに対処するには人が協力しないと難しい。

もちろん国の財政支出が必要ですが、それでも届かない場合があるし、届くまで時間がかかることがあります。

こういう基金で機動的に、素早く必要なところに資金を届ける。あるいは、新しいアイディアがあれば、それをどんどん活用していきたいのです。

ーー民間の力を活用したいということですね。

あるいは若い人の力を期待しています。ワクチンや治療薬を作るのには、世界的な大企業の資金や、国の助成がたくさんつく。そうではないところで、みんなが一歩踏み出せないために困っているところに活動資金を届けたいのです。

マスクなどの防護具の流通、社会的弱者の支援などに

ーー具体的にはこの基金はどういう活動への助成を考えているのですか?

治療や予防の研究・開発、マスクや医療器具供給の支援、感染症対応する人材への支援、子どもや高齢者、社会的弱者を支援する活動への支援という4本柱をたてていますが、これ以外の活動でも必要だと思えば柔軟に助成していきたい。

例えば、マスクは国内で月産7億枚まで増やしたと言われていますが、医療機関には届いていないわけです。マスクを作るのに国が助成するのは当然として、流通がうまくいっていないのであれば、新しいアイディアで解決してほしい。

または、日本にいる外国人労働者が劣悪な環境で働かされていれば、そこで集団感染が起きてしまうかもしれません。そういう環境を改善することで、感染を減らせる可能性があります。

長引く休校でストレスがたまっている子どものケアも必要でしょうし、ひとり親に支援することが必要なこともあるでしょう。

機動的にお金を使って、一つ一つ解決していくことが必要です。

治療の開発などには桁違いの費用がかかるので、それはあまり優先事項ではないでしょう。保健所や医療機関、介護施設の人件費というのも、人件費そのものではなく、必要な人材を集めるための仕組み作りなど、すぐ目に見える取り組みに助成することになると思います。

例えば、宮城県では、県庁の保健師が少ないので、地域や企業にいる保健師さんをリクルートしたり、OGやOBをリクルートしたりしています。

ただ、それもお金の問題や制度の問題で迅速には進めにくいので、そういう課題を突き崩すアイディアに助成したいのです。

どのような流れで進めるのか?

ーー目標金額などはあるのですか?

総額1億円程度を目指したいです。どれぐらい寄付が集まるかはわかりませんが、同時に基金の助成先も募り、専門家有志の会が審査をして、この活動に必要だと選んだ相手に、50万から1000万円程度を振り分ける予定です。

最初の寄付は10日に締め切り、15日に決定して、17日には給付する予定です。みなさんから預かった寄付は、14日以内に助成先に届くようにします。とにかく今、困っている人に迅速に支援が届くように、機動的に運営します。

審査の過程も透明にし、どこに助成したか、どういう成果が出たかも公表していきます。

ーーこのように迅速に支援するというのは、それほど問題が逼迫しているということなのですね。

うちの大学の学生を見ても、遠隔で指導していますが、新入生は友達ができない。

みんなに強い不安感が広がっています。大々的な経済政策を打つのも必要ですが、今報道を見ていても、不安な話ばかりで、それが増幅されています。少しでも解消するためには、一つ一つ小さな課題でも解決していくことが必要で、そのための仕掛けを作りたい。

今までは国が方針を決めて、国のお金を待つという流れが多かったわけです。国頼みですね。それも大事ですが、自分たちでもできることがあるのではないかという発想です。

昔、アメリカのCDC(疾病管理予防センター)やWHO(世界保健機関)でインフルエンザ対策をしていたケイジ・フクダから聞いたのですが、香港で新型インフルエンザ発生の連絡があった時に、すぐ現地に飛んだそうです。

一方、私が国立感染症研究所にいた時、台湾で新しいウイルスによってバタバタ子どもが亡くなっていて派遣を要請されたのですが、国交がないからと止められて行けなかった。

現場が一番事情をわかっていて、危機管理は現場の人たちに自律的な権限があって、すぐ対応できる体制でなければ回りません。

日本のようなシステムだと、どんどん上に決裁を上げていき、一番現場をわかっていない人が決断することになる。このシステムは危機管理に向かないのです。そういう問題を見るにつけ、現場で問題に気づいた人が何かを始める一歩を後押ししたかったのです。

既存のシステムではできないことをどんどんやっていこうという意思表明でもあります。

医療の専門家以外も広く賛同者を募る

ーーなぜ医療の専門家だけが集まっているのでしょう。

今後はもっと現場に近い人、介護の人や逆に介護を受ける人でもいい、IT分野に長けた人、メディアの人、様々な人に入ってもらって、様々な知見を得ながら活動を育てていきたいと思います。

ーー7月2日まで4期に渡って寄付を募って、助成していくのですね。

4、5、6、7月に分けて助成し、助成先も7月2日まで募集します。その間に国で大規模な財政支援策が打ち出されれば、助成の方向性も変えていくかもしれませんが、今のところはそのようなスケジュールで考えています。スピード感を持って運用するために、細かく期間を分けて助成します。

東日本大震災の時もそうでしたが、数年後に数十万寄付が届いても、今すぐの10万円の方がよほど価値があるというのはよくある話です。明日ではなくて、今支援が欲しい人に届けることをしたいです。

心はあるけど支援方法がわからない人、お金はないけれどアイディアはある人へ

ーー新型コロナの流行に対して何かしたいけれど、やり方がわからないという人はこういう寄付があるといいでしょうね。

そうなんです。そういう人にぜひご協力いただきたいです。

さらに、お金はないけどアイディアはあるし、動きたいという人に助成先に応募してもらって、解決につながる仕掛けにしたいと願っています。

古くから活動しているNPOだけでなく、これまで考えもつかなかったような新しいアイディアがほしい。

そういう人たちと、何か支援したいけれど何もできないでいる人たちをつなぐ。そんな未来につながる基金にしたいと思っています。

新型コロナウイルス感染症:拡大防止活動基金はこちら。