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正月返上で、家族にも会えず働く医療者がいる。だから、せめて…尾身会長が心から願うこと

政府の「新型コロナウイルス感染症対策分科会」は12月11日、特に流行が著しい地域について、「勝負の3週間」後も歯止めがかからない場合は、Go Toトラベルの一時停止や時短営業の繰り上げなどの対策強化を求めました。

政府の「新型コロナウイルス感染症対策分科会」が12月11日開かれ、特に流行が著しい地域について、「勝負の3週間」後にどうなるか、3つの想定シナリオを示した。

感染者が高止まりしたり、さらに増えたりして流行に歯止めがかからない場合は、「Go Toトラベル」事業等の一時停止や飲食店などの時間短縮営業を午後8時などにまで繰り上げることなど、さらなる対策強化を求める提言を出した。

また、感染者や重症者の増加で負担が重くなっている医療機関で退職者が相次いでいることなどに触れ、「強力な、今までとは違うレベルの財政的な支援を」と経済的な支援強化を求めた。

分科会後に会見した尾身茂会長は、「都道府県は今まで以上にリーダーシップを発揮して先手を打ち、国は都道府県が迅速な意思決定を行えるよう後押しをしていただきたい」と呼びかけた。

医療機関、保健所余裕なし 

尾身会長はまず、分科会の専門家の現状認識として、以下の表を示し、対策を強化する必要を述べた。

  • 医療機関:通常の医療とコロナの医療の両立が困難になっている
  • 都市部を中心とした保健所:後ろ向きのクラスター調査を行う余裕がない
  • 国民の多く:行動自粛を求められることに辟易している
  • 事業者:対策の早期の緩和を望んでいる


感染拡大地域で3つのシナリオ 何をすべきか?

その現状認識の上で、現在、流行や医療機関の逼迫が著しくなり、流行状況の4段階評価で上から2番目の「ステージ3」になっている北海道、東京、大阪などの都道府県について、様々な対策を打った「勝負の3週間」後にどうなるか、3つの想定シナリオを示した。

自治体によって対策を打ち始めた時期が異なるため、勝負の3週間の終了時期にはズレがあるが、概ね12月16日から17日あたりだとし

  • シナリオ1:感染減少地域
  • シナリオ2:感染高止まり地域
  • シナリオ3:感染拡大継続地域

のシナリオに分けて、なすべき対策を提言した。

シナリオ1:感染減少地域は?

まずは、新規感染者の報告数も減り、感染が下火になるシナリオ1だ。

引き続き、ステージ2の水準まで引き下げるように対策の手を止めないよう求めた上で、

若年層や50代の中年層が都道府県をまたいで移動し、二次感染を広げる割合や数が多いことから、この世代に対する効果的な情報発信を求めた。

飲食店などの時短営業要請については、医療の逼迫具合も見ながら、国と都道府県が連携し、継続するかどうか総合的に判断するとした。

シナリオ2:感染高止まり地域は?

次に報告数が高止まりし、医療体制や保健所なども引き続き重い負担が続く地域については、「対策のさらなる強化が必要」とし、その理由をこう述べた。


「この地域は一見、(新規報告数が)平行になっているようで、悪くはなっていないからいいんじゃないかと思われるかもしれません。しかし、かなり強い対策を3週間しているにもかかわらず高止まり状態になっているということは、今までの対策が十分効果を上げていないということを意味しているのだと考えています」

「求められる対策がしっかりと短期間にできれば、理論上、3週間ぐらいすると下火になるんです。3週間感染対策を打っても高止まりということは、何か足りない、もっとやらなくてはならないということを意味する。高止まりということは安心材料ではなく、心配材料と考えた方がいい

その上で、

  • 営業時間短縮要請を推進:午後8時や午後9時などの前倒しを検討
  • テレワークや休暇の分散取得推進
  • イベント開催要件の厳格化
  • 社会経済圏域を越えた往来の自粛要請:Go To トラベル事業等の一時停止
  • 医療機関や保健所の負荷への対応

など、飲食店などの時短営業の時間繰り上げや、Go Toトラベル事業の一時停止など、さらなる対策強化を求めた。

シナリオ3:感染拡大継続地域は?

最後に、報告数が継続して拡大する地域については「いわゆるワーストケース」とした上で、「ここまでくると人の動きや接触機会のさらなる逓減策が必要」と、特に強い対策をうつ必要があることを示した。


具体的には、以下のような対策強化を提言した。

  • 営業時間短縮要請の強化
  • テレワーク目標を設定(例えば5割)
  • ・イベント開催要件の厳格化
  • 県境を越えた移動の自粛
  • ・医療提供体制・保健所機能のさらなる強化


これまでにない医療者への財政支援を

尾身会長が、シナリオ2のところで特に強調したのは、流行に歯止めがかからないシナリオ2やシナリオ3の地域で疲弊する医療・介護事業者への経済的な支援の必要性だ。

「みなさん疲弊して限界になっている。国からのいろんな財政的なサポートが出ていますが、医療関係者の人はお金のためというより使命感で働いている。一生懸命、身を粉にして働いて、仕事で忙しくなって、自分は感染しているかもしれないという思いもある。他の人や家族に会うことも、もちろん帰省も控えている」

「そういう中で多くの医療関係者がボーナスも低くなっている。危険手当も十分ではない。国も大型な予算を作っていただいて、今までも政府には色々とやっていただいていますが、今まで通りの延長ではなかなか難しくなっている」

「もちろんお金だけで医療関係者は頑張っていない。でも少なくともお金ぐらいは...。今、これだけ予算を増やそうとしているのですから、100パーセント納得するような額を出すことは難しい。だけど、今のままでは医療関係者は、自分たちがサポートを受けているという感じがないと思います。強力な今までとは別のレベルの財政支援をぜひ。これはかなり強い意見でした」

具体的にどのような支援策を取るかは国が考えることだとし、看護師などで退職や日常生活での差別が相次いでいることに触れ、

「医療関係者はすでに頑張っているのに、正月休みも全部病院を休むことはない。それをさらにやっていただくには最低限、経済的な支援をやることは分科会の総意です」と強い口調で述べた。