厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会(会長=脇田隆字・国立感染症研究所所長)が2月10日開かれ、5〜11歳の子ども用ワクチン(ファイザー社)について、公費でうてる「特例臨時接種」とし、接種勧奨することが承認された。
一方、保護者が子どもにうたせるよう必要な努力を促す「努力義務」を課すことについては、現時点では見送られた。
妊婦に対する努力義務は科学的知見が不足しているということでこれまで外されていたが、必要な知見が積み上がったとして努力義務とすることが承認された。
公費でうてる「特例臨時接種」とすることを了承
会議では、日本におけるこの年代の子どもの感染状況について報告された。
厚労省は、5〜11歳が陽性者全体に占める割合が、日本でも徐々に大きくなっている現状を報告。
また5〜11歳で肺炎以上の重い症状の報告数も増えていることが、国立感染症研究所感染症疫学センター長の鈴木基委員によって示された。
さらに鈴木委員は、12歳以上でワクチンを2回以上うった場合、肺炎以上の重い症状の報告の割合が半分程度に低くなっているデータも示した。
ただし感染者の報告・管理システム「HER-SYS」の登録では、この年代の重症化率はデルタ流行時で0.2%、オミクロン流行時で0.08%と、他の年代よりもかなり低くなっていることを示す資料も出された。
以上の知見を踏まえて、厚労省はこの年代に対するファイザー社の子ども用ワクチンを、公費でうてる「特例臨時接種」に位置づけることを分科会に諮り、満場一致で了承された。
「接種勧奨」はするが、「努力義務」は見送り
一方、保護者に対して子どもにうたせるよう必要な努力をするよう促す「努力義務」については賛否が分かれている。
このため、厚労省は、
- 小児におけるオミクロンの感染状況(感染者、重症化の動向)がいまだ確定的でないこと
- オミクロンについては、小児の発症予防効果・重症化予防効果に関するエビデンスが必ずしも十分ではないこと
を理由として、12歳未満について「接種の勧奨」はするものの、「努力義務」の対象とはしないことを諮り、今後の科学的知見を踏まえて改めて議論することとしてはどうかと提案した。
接種の勧奨をすれば、自治体から対象者に接種券や予診票を送り、接種することが促される。一方、「努力義務」が課されなければ、役所からの強制と受け止められかねないニュアンスが薄れ、より「受けたい人が受ける」個人の判断を尊重する姿勢が強調される。
これに対し、ほとんどの委員は事務局案に賛同し、了承した。
ただし委員らからは、以下のように注文する意見が出された。
「安全性、有効性についての情報をわかりやすく伝え、情報を十分知った上で決断ができる環境の整備を」
「接種の時に保護者が仕事を休みやすくするなど、受けたい人には積極的に受けられるような環境を整えることを国などから改めてアナウンスを」
「接種勧奨はかけるが努力義務は課さない、ことの意味について丁寧な説明が必要」
妊婦への「努力義務」は了承
一方、データが不十分としてこれまで適用除外とされていた妊婦への努力義務についても、安全性や有効性に対する必要な知見が蓄積したとして、改めて努力義務を課すことが了承された。
ブレイクスルー感染後の3回目接種 3ヶ月の間隔で
さらにオミクロンの流行で、2回目接種後の感染「ブレイクスルー感染」も増加している。このブレイクスルー感染をした後の3回目接種については、海外の状況も踏まえて、暫定的に3ヶ月の間隔とする案が了承された。
5〜11歳のワクチン 高い発症予防効果、低い副反応
5〜11歳のワクチンの有効性について、米国の臨床試験では90.7%という高い発症予防効果が示されている。
ファイザー社の臨床試験では注射した部分の痛みや腫れ、発熱や倦怠感などの副反応は見られるものの、重い副反応や心筋炎は見られていない。
米国の接種後の健康調査(V-safe)でも、12〜15歳よりも副反応の頻度は少なく、「VAERS(予防接種安全性監視システム)」でも5〜11歳の男子の心筋炎は12〜15歳、16〜17歳の男子よりも報告率が低いことが示されている。
ただ、健康な子どもはもともと新型コロナに感染しても重症化するリスクが低いことから、どの程度の強さで勧めるかは専門家の中でも意見が分かれていた。
海外(2月1日時点)では、米国、カナダ、フランス、イスラエル、EUではこの年代の接種を推奨し、英国、ドイツ、WHOは重症化リスクの高い子どもに限って推奨している。