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「人生で一番悲惨なことは、酷い目に遭うことではなくて、一人で苦しむこと」 なぜつながりが大事なのか、精神科界のトシちゃん、マッチに聞いてみた

コロナ禍で誰もが不安を抱えている日々、どうやったらうまくやり過ごせるのでしょうか。精神科医の仲良しコンビ、トシちゃんこと松本俊彦さんとマッチこと市来真彦さんが、みんなのモヤモヤに答えました。

新型コロナウイルスの流行が長引き、心が疲れてしまった人も多いでしょう。元々、精神疾患や生きづらさを抱えている人はなおさらつらい日々を過ごしているのではないでしょうか?

そんな人たちに向けて、精神科医がなんとか対処していく方法を伝える対談、「コロナ孤立で人とつながれない! どう生きていくのか考えるが1月30日にオンラインで開かれました。

Naoko Iwanaga / BuzzFeed

友人同士でもある二人の対談は、気楽な感じで行われました

NPO法人「地域精神保健福祉機構・コンボ」が毎月、寄席のように楽しく開くメンタルヘルス講座「こんぼ亭」のイベントです。亭主を務める精神科医の市来真彦さんと松本俊彦さんが、コロナ禍でもめげずに生きていくためのアドバイスを語り合いました。

互いを「マッチ」「トシちゃん」と呼び合いながら進められたこの対談、全4回で詳しくお伝え致します。

なぜ「つながり」が大事なんですか?

市来 私が2代目亭主になってから1周年です。その記念じゃないですけれども、私の古くからの友人でもあり、「ジャニーズ時代の同僚」という風に言われているのですけれども、松本俊彦さんはトシちゃん、私は市来真彦ですからマッチ。こういう間柄なんです。

今、みなさん笑えてますか? 笑えてないと非常に危ない状況ですので(苦笑)、ぜひ笑っていただきたいと思います。

国立精神医療研究センター精神保健研究所、薬物依存研究部部長である松本俊彦さん。友達でもありながら、実は偉い人なんですねえ。偉いのがいいかどうかわからないですけれども。

今日のこんぼ亭は初の試みとして、みなさんたちから事前に受けた質問をフリップに書いて、それについてお話して参ります。

Naoko Iwanaga / BuzzFeed

松本さんはZoomの背景を飛行機の座席にして登場

トシちゃん、その様子だと、どこかから帰国されて飛行機の中で14日間の待機状態をさせられているんですか?

松本 そうですね。不要不急の外出をしてしまったので機内から(笑)。

市来 まず一つ目のご質問です。「なぜ『つながり』が大事なんですか?と質問されると自信を持ってうまく答えることができません。トシちゃんや皆さんはなんて答えますか?」。支援者の方からいただきました。いかがですか?

松本 真面目に答えるのと、自分の印象で答えるのと分けて話したいと思います。僕は主に依存症の治療を専門としているのですけれども、依存症の治療に関してどのような治療が効果があるのか調べた比較研究があります。

実はどれもそれほど差がない。一番大事なのは、いろんな治療法があるけれど、どれでも自分が気に入った治療法をとると長く続くということです。途中でお酒や薬を使いながらでもいいから、諦めずに長くつながっていると長期的にはいい結果になることがわかっています。

また、利用する社会資源が多くなればなるほど、病院だけじゃなくて民間のリハビリ施設や自助グループなど、数を多く使うほどいいとされています。

そういう意味では、結果を出すことよりも、とにかく腐らずにつながり続けていくのが大事だなと思っているんです。これは真面目な、学術的な話です。

診察室の外での出会いで良くなる 支援者も仲間を

次に自分の印象で話をします。

これまで出会って治療を担当してきた患者さんたちの中には、良くなった人もいれば悪くなった人もいます。良くなった人たちを見ると、診察室の中の自分とのやり取りがきっかけになった人はあまり思い浮かばないのです。

診療も大事なのですが、診察室の外でいろんな友達を作ったり、リアルな人間関係で出会ったりする中で風向きが一気に変わるなあという気がしています。

そういう意味では、そんな出会いがあるところまでなんとか生かしておくのが自分の役割なのかなと思うこともあります。

また、これは支援者である自分に関してですが、やはり仲間がいないで孤立無援で、ひとりぼっちで治療していると、変な治療をしたり、やらなくてもいいことをやってガックリしたりすることが多いです。

治療に関して愚痴を言ったり、一緒にチームを組んでやったり、仲間がいるとうまくいくような気がします。

そうすると治療を受けている側も、治療を提供する側も、やはりつながりが大事です。ひとりぼっちはまずいぞと思います。

人生で一番悲惨なことは、酷い目に遭うことではなくて、一人で苦しむことなんじゃないかなと思います。

そういうことを一番端的に示す言葉が「つながり」ということなのかなと思います。それで大事だと思っているんです。どうですかねマッチ?(笑)

市来 トシちゃんがそんなに真面目な話をするのを久しぶりに聞きました(笑)。そういうつながりが大事という考えを私も同じように持っています。

我々(精神科医の仲間)も、「地下組織」と呼ぶ秘密結社を作って、定期的に怪しい人同士でお話をしているんです。

コロナでその集まりが対面でできなくなって、集まり後の合法的な薬物であるアルコールを摂取しながら話すこともできなくなっています。それでも何もやらないよりは、Zoomなどでやるのはいいのかなと個人的に考えています。

「孤独も大事」はその通り でも必要な時に愚痴ったり頼れたりする人を

市来 トシちゃんは日頃から、依存症は孤立の病であり、人とのつながりが大切と言っていますね。

私も統合失調症を専門に診療していますが、孤立ということ自体が病かもしれないし、孤立をしないようになれば、それが良くなる第一歩なのかなと考えていますね。

ですので、「つながりが大事」という言葉はその通りで、治りたいと言いながら引きこもっている場合、自分でできる取り組みはつながりを作りにいくことです。それができていないことは、残念だなと思っています。

私たちこういった場でつながりを提供させていただき、それにみなさんがアクセスして、自分たちで見に来ていただくことがつながりの第一歩なのじゃないかなと感じています。

松本 ちなみに僕は「孤立」とは言うのですが、決して「孤独」とは言っていないのです。「孤独な時間も大事じゃないか」と言われると、大事だよねと思うし、引きこもる自由も大事だと思います。

ただ、必要があった時にすぐに愚痴ったり頼ったりする人がいるのが、つながりがある状況なのかなと思います。そこは自分で取捨選択できると思います。

リモートの交流で工夫できることは?

市来 では2つめのご質問です。また匿名の支援者さんからです。「電話やZoomでは『つながりを感じる』という点で対面にはかなわない部分があると感じています。何か工夫できることはありますか?」という質問です。

松本 これは難しいですよね。僕も日頃感じていることです。これまでリアルな関係でずっとつながりのあった人たちとの関係なら、電話やZoomでもつながりを維持することはできると思っています。

でも初対面の人だと、正直、ちょっとよくわからないです。Zoomで会合したはずなのに、リアルで会うとまた改めて挨拶が始まったり、本人だと気づかなかったりすることもあります。

Naoko Iwanaga / BuzzFeed

やはりリモートは対面には勝てないが......

そこはリアルには負けるところなのかなと思っています。オンラインでは初対面でリアルと同じような効果を出すのは正直難しいのではないかなと思います。

時々、製薬会社のMR(医薬情報担当者)さんが「担当が変わるので後任を紹介させていただきます」と挨拶してきます。それを最近、Zoomでやるのですが、かわいそうに、新人の社員がパワーポイントを作って、自分の趣味とか家族構成などを画面共有して教えてくれるのですが、それでも覚えないですからね。

工夫は難しいです。せめて家のWi-Fiの環境は良くしておいた方がいいですよね。環境が悪いと、画面が止まったり、音声が途切れ途切れになったり、呂律が急に回らなくなったりしますね。Wi-Fiの環境を良くしてください。

マッチは何か工夫する方法はありますか?

市来 学生さんたちにZoomで講義するのがすごくやりづらくて仕方なかったんです。何かできることないかなと思っていたら、たまたまNHKの「ためしてガッテン」という番組で、それがテーマの放送がありました。

面白い実験をしていて、参加者の人がうなずいていると話をしている人がとても話しやすい。助手さんを画面に置いて、その人がずっと先生の話にうなずいていると先生は話しやすくなるのです。

そういう工夫は話しやすさにはつながるかなと思います。

松本 それはわかります。画面のリアクションは大事ですよね。ウェビナーで講演していると、聴講している人たちの顔が見えません。1時間を超える講演だと、話しながら眠くなるのです。うたた寝するのを堪えながら話しています。だから顔を出した方がいいですよね。

市来 それからZoomの限界として、自分が相手の顔を見ようとすると画面を見る。自分の目線を相手に合わせるにはカメラを見なければなりません。画面を見ると目が合わない状態になりますね。それが話しづらい原因の一つではないかと思います。

だから時にカメラに視線を移したりして、相手に対してこちらが話しやすい状況を作ってあげる工夫をすることもつながりを作りやすくするのではないかと思います。

松本 たまに自助グループのオープン・スピーカーズ・ミーティングに潜り込ませてもらうことがあるのですが、タブレットをテーブルの上に置いて参加している人がいるのです。鼻の穴ばかり見えるんですね。タブレットで参加される方はちゃんと立てた方がいいね(笑)。

漠然とした不安、どう考えたらいい?

市来 次は子ども・若者の支援者からの質問です。「コロナ以降、漠然とした不安を抱えている方が多いです。コロナのように解決の難しい問題をどのように一緒に考えていけばいいでしょうか」。支援者のよっちゃんさんです。

松本 よっちゃんが来て、マッチ、トシちゃんと3人揃いましたね(笑)。

Naoko Iwanaga / BuzzFeed

これは難しいね。確かに若い患者さんは漠然とした不安を抱えています。でも不安なんだけど、おっさんから見ると、漠然と不機嫌なんだよね。確かにこれは寄り添うのが難しいなと思ったり、腫れ物に触るような感じになって遠慮する感じにもなる。

ただ、一番まずかったなと思うのは、不安を突き止めようとして、あれこれ質問しすぎちゃって詰問調になったり、不機嫌で塞ぎ込んでいるのを「いい加減にしろ」と叱るような感じになったりしました。

これはまずかっただろうと思っています。

むしろ、「だよね」という感じで、そこに関してあまり突っ込まない。「まあみんな今不安だしね」「うまく言葉で表現できないよね」と突っ込まないことも大事かなと最近は思うようになりました。

「不機嫌さと付き合う」、ですかね。

市来 3月から4月、5月は「コロナうつ」という言葉が出てきて、あの頃はセンスないなと思って聞いていました。僕はその頃、うつの人はあまり診ませんでした。一部、以前うつ病だった人でちゃんと治療していなかった人が再発する状況はありました。

4月、5月はまさによっちゃんが言うように「漠然とした不安」がテーマだったと思います。

その後、6月、7月の初診の外来で増えてきたのは、幻覚や妄想です。純粋なうつは、自殺者の増加も含めて、経済的な問題などある程度ストレスが溜まっていって、バケツから水が溢れ出るかのような形で出てきている印象を持っています。

トシちゃんはどうですか?

「不安」や「不満」は生ゴミのように溜めずに出す つながりの中で

松本 4月、5月あたりは僕も不安だったんですよね。漠然と。

一番落ち着いたのは、同じように「不安だよね」と言っている人たちと不安について、お先真っ暗なことについて語り合うことです。それが一番しっくりくるんですね。

無理に終わった後のこと、アフターコロナのことを考えるのもつらかった。

夏ぐらいになってきて、僕らのところで問題になったのは、やはり依存症の再発でした。持続化給付金などが出始めて、みんなそれで白い粉を買って経済回したりし始めちゃった(笑)。

ここから先は困った問題になっていったのですが、4月、5月は異様な雰囲気でしたね。

市来 私の病院でも、コロナの患者さんを診療していて、最近はまさに支援者である医者とか看護師さんが疲れています。カラダの疲労とかココロの疲労もそうなんですが、「不安」から、今は「不満」になっている。そんなことを今、感じています。

先ほどおっしゃっていた不安をつながりの中で共有し合う。生ゴミじゃないけれども出す。必ず生ゴミはまた出てくるんだけど、溜めないで出して捨てていくことが大事なのかなと思います。

不満も出てくるのはしょうがないところがあります。それも同じように出す。生ゴミの日は水曜と金曜で、不満を出す日は月曜日と木曜日という形で、不安も不満もつながりの中で出し合う。解決しなくても。「解決しないから出してもしょうがない」じゃなくて、出すことが大事なのかなと思います。

市来真彦さん提供

クリスマスや七夕の時の外来の市来真彦さんの衣装。再診の患者にだけこの姿で登場する。多くの患者は笑うが、具合の悪い患者は無反応。それで病状を診ている。「笑いはコミュニケーションツールというのが私の持論です」

松本 まさにそうだと思います。酷い目に遭うことではなく、一人で苦しむことだと先ほども言いましたが、みんなで互いに文句を言いまくるというのがすごくいいと僕は思っています。

市来 今、まさに言いたい気持ちがいっぱいあるんだけど(笑)。病院の職員や幹部が見ていないことを願います。

松本 (笑)

(続く)

【松本俊彦(まつもと・としひこ)】国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所 薬物依存研究部長、薬物依存症センター センター長

1993年、佐賀医科大学卒業。2004年に国立精神・神経センター(現国立精神・神経医療研究センター)精神保健研究所司法精神医学研究部室長に就任。以後、自殺予防総合対策センター副センター長などを経て、2015年より現職。日本精神救急学会理事、日本社会精神医学会理事。

『薬物依存とアディクション精神医学』(金剛出版)、『自傷・自殺する子どもたち』(合同出版)『アルコールとうつ・自殺』(岩波書店)、『自分を傷つけずにはいられない』(講談社)、『よくわかるSMARPP——あなたにもできる薬物依存者支援』(金剛出版)、『薬物依存症』(ちくま新書)など著書多数。

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【市来真彦(いちき・まさひこ)】東京医科大学学生・職員 健康サポートセンター センター長、東京医科大学精神医学分野准教授

1992年千葉大学医学部卒業、2005年11月より東京医科大学精神医学講座・講師、東京医科大学霞ヶ浦病院精神神経科科長、2019年11月より現職。2020年7月より特定非営利活動法人 地域精神保健福祉機構・コンボ理事。

日本社会精神医学会理事、日本臨床死生学会理事、日本臨床音楽研究会理事、日本産業精神保健学会代議員、日本抗加齢医学会評議員、日本自殺予防学会評議員、日本うつ病学会評議員、日本不安症学会評議員、日本笑い学会元関東支部長、現・笑いの講師団・講師、など。


Contact Naoko Iwanaga at naoko.iwanaga@buzzfeed.com.

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