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日本小児科学会 5〜17歳のすべての子どもに新型コロナワクチンを「推奨」と変更

日本小児科学会は、健康な子どもについて積極的には勧めてこなかった新型コロナワクチンについて、「5〜17歳のすべての小児に新型コロナワクチン接種を推奨します」という推奨に変更しました。有効性や安全性のデータが蓄積し、7波で子どもの重症者が増えていることが背景にあると言います。

日本小児科学会は8月10日、健康な子ども(5〜11歳)に関しては積極的に勧めてこなかった新型コロナワクチンについて、「5~17 歳のすべての小児に新型コロナワクチン接種を推奨します」という表現に変更した。

1月19日に出した緊急提言「5~11歳小児への新型コロナワクチン接種に対する考え方」では、基礎疾患のある子どもに対しては「重症化を防ぐことが期待されます」、健康な子どもに対しては「意義があると考えています」とするにとどまっていた。

今回の変更の理由について、同学会は「小児における COVID-19 の重症化予防に寄与することが確認されたことをふまえ、メリット(発症予防や重症化予防等)がデメリット(副反応等)を更に大きく上回ると判断」と述べている。

厚生労働省の予防接種・ワクチン分科会も同月8日、これまで予防接種法で定める「努力義務」の対象外となっていた5〜11歳のワクチンについて、有効性や安全性の知見が蓄積されたとして、努力義務を課すことを決めている。

有効性、安全性のデータが蓄積

同学会はオミクロンによる第7波の子供への影響について、「小児患者数の急増に伴い、以前は少数であった重症例と死亡例が増加しています」と指摘。

大人と比べて、子どもの呼吸不全は比較的まれではあるものの、オミクロン以降、「小児特有の疾患であるクループ症候群、熱性けいれんが増加し、脳症、心筋炎などの重症例も報告されています」と深刻な症状に至る子どもも出てきていることを示した。

その上で、当初は子どものワクチンがオミクロンに対してどれぐらいの効果があるかわからなかったが、世界各国からの大規模な研究成果が蓄積され、「オミクロン株を含めた重症化予防効果が40〜80%程度認められることが確認されました」と有効性を示す科学的根拠が蓄積されてきたことを説明した。

そして、安全性についても、「12〜17 歳における副反応の発生率は、若年成人と同等であり、5〜11 歳における副反応はより軽い傾向が確認されています」と国内でデータが出てきていることを示した。

ただし、特に10〜20代の男性でリスクの高い副反応「心筋炎・心膜炎」については、以下の注意を付け加えた。

「接種後数日以内に胸痛、息切れ(呼吸困難)、動悸、むくみなどの心筋炎・心膜炎を疑う症状が現れた場合は、すぐに医療機関を受診し、 新型コロナワクチンを受けたことを伝えるよう指導してください」

ちなみに厚労省の副反応検討部会の報告によると、5〜11歳でワクチン接種7日以内に心筋炎が疑われた発症頻度は、1回目で100万回あたり2.9回、2回目で3.1回、心膜炎は1回目で100万回あたり2.1回だった(2回目は報告なし)。

重症化して亡くなる子どもを減らしたい

官邸が出している新型コロナワクチンの年齢別接種実績によると、5〜11歳は8月8日現在、1回目接種で18.9%、2回目接種で17%と、75〜100%近くまで接種している他の年代と比べると極端に低いままだ。

この年代の接種率の低さについて、同学会予防接種・感染対策委員会担当理事の齋藤昭彦氏(新潟大学小児科教授)は「この年齢層に最初に接種が始まった時に、5〜11歳のお子さんは極めて軽症である、あるいは無症状である、かかっても大丈夫なのだという概念が非常に広がっていたことがある」と分析。

「しかし、7波を迎え、患者数が増えて重症者が増えている。5〜11歳でも重症者が増え、中には命を落とされる患者もいる。そういう患者が増えている中で、子どもたちを守るために我々のできることがなかなかない中、ワクチン接種は、我々が重症化予防のために働きかけることができる唯一の方法だろうということから推奨を変えた」

そして、「この年齢層のワクチンを接種する推奨を出して、少しでも接種率を高めていきたい。それが我々の推奨を出す一つの理由になる。厚労省からも努力義務が加わったことで、さらに接種率が上昇することが期待されるところだ」と説明している。

ただし、あくまでも重症化予防が目的で、全体の感染者を抑える集団免疫を作ることを目的としているわけではないことを強調した。

「今、重症化している患者を少しでも少なくしたいのが願いです。全体の感染者数をコントロールするのは難しい。ワクチンの感染予防効果は長続きしない中で、社会全体の感染者を少なくするために子どもたちに接種して食い止めようというのは、乱暴な考え方だと思う」

「私自身も、現場で健康な小学生のお子さんが感染し、脳症を併発し、亡くなられる患者さんを経験しています。そこでの保護者の言葉は『もしワクチンを接種していたらこんなことにならなかったのではないか』です。重症化しているのはまず未接種の人です。そういう患者を一人でも少なくしたいという議論であって、社会全体への効果については議論していない」

そして保護者に対しては、こう呼びかけた。「子どものほとんどは軽症だが、中には重症化して命を落とすこともある。それを防ぐのがワクチンであり、周りの大人たちも適切な回数のワクチンを接種する必要がある」と呼びかけた。