• covid19jp badge
  • medicaljp badge

5〜11歳のコロナワクチン 「基礎疾患のある子どもには推奨するが...」小児科学会と小児科医会が緊急提言

5〜11歳に対するコロナワクチンについて、日本小児科学会と日本小児科医会が緊急提言を出しました。基礎疾患のある子どもには推奨しつつ、「努力義務」を課すことについては慎重な姿勢を見せ、接種の同調圧力を加えないよう注意喚起しました。

日本小児科学会日本小児科医会は1月19日、5〜11歳の新型コロナワクチンについてそれぞれ緊急提言を行い、記者会見を開いた。

子どもは感染しても無症状や軽症であることが多い一方、副反応が一定割合で見られることから、重症化リスクの高い基礎疾患のある子どもへの接種は推奨しつつも、接種に「努力義務」を課すことには慎重な姿勢を見せた。

また、12歳以上のワクチンと5〜11歳のワクチンは異なる製剤であるため、間違えてうたないように、接種の日にちや会場を分けるなど安全な体制を準備するよう求めた。

厚労省は5〜11歳向けに、mRNAの量が12歳以上用の3分の1となるファイザー社製ワクチンを、20日に特例承認する見込み。政府は3月にも接種を始めるとしている。

この年代の接種に「努力義務」を課すかどうかも焦点の一つとなっている。

日本小児科学会「5~11歳小児への新型コロナワクチン接種に対する考え方

日本小児科医会「5歳~11歳の新型コロナウイルスワクチン接種にあたって

小児科学会の提言 基礎疾患のある子どもには推奨

日本小児科学会の提言「5~11歳小児への新型コロナワクチン接種に対する考え方」では、国内の5~11歳の感染者は大多数が軽症であるものの、今後、感染者数が増加した場合には、ワクチン未接種の子どもが占める割合が増え、中等症や重症例が増えることが予想されると現状を分析。

効果については、海外では、5~11歳の小児に対する発症予防効果が90%以上と報告されているものの、新しい変異ウイルス(オミクロン株など)への有効性を示すデータは十分に得られていないと評価した。

一方、副反応については、「5~11歳の小児では16~25歳の人と比べて一般的に接種後の副反応症状の出現頻度は低かった」とした。

その上でまず、子どもを新型コロナから守るためには、周囲の成人へのワクチン接種が重要と提言。

また、基礎疾患のある子どもについては重症化リスクが高いことから「接種を勧めることが非常に重要だ」説明し、「本人の健康状況をよく把握している主治医と養育者との間で、接種後の体調管理などを事前に相談することが望ましい」とした。

接種が推奨される基礎疾患としては、


  • 慢性の呼吸不全
  • 重度の神経学的障害を持つ子
  • チアノーゼがある先天性の心臓疾患
  • ダウン症
  • 小児がんや、その治療のために免疫の力が落ちている子
  • 重度の発達障害
  • 肥満児
  • 慢性の腎不全
  • 肝臓障害
  • 先天性の代謝疾患
  • コントロールの悪い糖尿病


などの病気を持つ子どもが、主に想定されるとしている。

また、健康な子どもの接種についても、「12歳以上の健康な子どもへのワクチン接種と同様に意義がある」としたが、発症予防などのメリットと副反応などのデメリットを本人と養育者が十分に理解して、接種の際や後にもきめ細やかな対応が必要とした。

接種にあたっては、12歳以上用のワクチンと5~11歳用のワクチンは、製剤も希釈方法も接種量も異なることから、取り扱いに細心の注意が必要と呼び掛けた。

日本小児科医会は接種方法について細かく提言

開業医が中心となる日本小児科医会の提言では、ワクチンを接種する際の具体的な注意点について細かく触れた。

医会も、子どもでは重症化することが稀なことから、「小児期の新型コロナウイルス感染症においてのワクチン接種の意義は成人・高齢者への接種と同等ではないといえる」と評価。

一方で感染すると、他者にうつすリスクが増え、10日以上の行動制限など生活に困難が生じることから、「具体的な接種方法について十分な議論と準備の上で実施することが求められる」と慎重な姿勢を見せた。

12歳以上とは別のワクチンを使うことから、「ワクチンの接種回数、溶解・充填などの準備、接種量確認などの各場面で間違いを防ぐために慎重な作業が求められる」と注意を呼びかけた。

また、基礎疾患がある子どもについては、普段診ている医療機関での接種を求めつつ、コロナ対応で予防接種までできない場合の対応を考えていかなければならないとしている。

その上で、集団接種会場では5歳~11歳用のワクチンのみを扱うことを徹底し、保護者同伴で、接種医はワクチンのメリット・デメリットを含めた説明を行うことなどを求めた。

個別接種でも、12歳以降のワクチンを含めた他のワクチンとは接種週・曜日・時間帯などを完全に区別し、間違いを起こさない接種環境を準備するよう求めた。

副反応については、かかりつけ医が対応することを求めている。

「努力義務」を課すことについては、日本小児科医会の峯眞人・公衆衛生委員会担当理事は、「未だにこの年齢層への接種の安全性等に関する十分な情報やデータが揃っていないこと、接種計画、接種体制などの詳細が議論されていないことなどを考えると『努力義務』とすることには慎重さが求められていい」との姿勢を明らかにした。

「接種の同調圧力を加えるな」

小児科学会は、体が小さい5 〜11歳に安全に筋肉注射をうつためのマニュアルを作っており、近く公表する。

努力義務を課すことについて、学会の森内理事は、学会は医学的知見に基づいた推奨度合いを提示するだけで、学会が決めることではないとした上で、

「努力義務がつくかつかないかにかかわらず、このワクチンでは公費接種にしてほしい。妊婦への接種と同様、経済的負担や何かあったときの負担に差をつけないような采配が可能だと思うので、学会として厚労省や政府に訴えたい」と同様の取り扱いを求めた。

また基礎疾患のある子どもについては、「海外でも亡くなっている子どもの統計を見ると、かなりの数を基礎疾患のある子が占めている。そういう子どもたちの接種はできるだけ早くしていただきたい。3月よりも早くできるのであれば、その子たちにとって朗報」と前倒し接種も求めている。

森内理事は最後に、「(子どもにとって)今のこのワクチンはメリットがデメリットを圧倒的に上回るようなものではなく、オミクロンになって感染予防効果は落ちてきている。集団免疫を作るために、より多くの人が打つべきだという同調圧力をかけるようなものでは現時点ではなくなっている」と強調。

「あくまでも個人の重症化を防ぐワクチンなので、決して変な同調圧力を加えたり、接種していない子どもや養育者がいじめられたり、非難されたりすることがないように丁寧な説明や環境作りをしていくことが必要だ」と注意喚起した。

さらに、「ワクチンの感染予防効果がそこまで強いものではなくなっているのであれば、ワクチンを接種した後でも引き続き感染予防対策は取っていかなければいけないときちんと説明しておく必要がある」と訴えた。