「生きた化石」と言われるカブトガニ。背面全体が広く背甲で覆われており、特徴的な「尾剣」と呼ばれるしっぽ(尾節)をピロンと伸ばした姿はなんとも不思議な魅力があふれる生物です。
そんなカブトガニに関する意外な豆知識が約3万件の「いいね」を集めるなど話題になっています。
その豆知識を披露したのは、岡山県笠岡市の笠岡市立カブトガニ博物館(@horseshoecrab_m)。世界で唯一のカブトガニをテーマとした博物館です。
X(旧Twitter)で1月14日、「体を曲げたカブトガニを真っ直ぐにしたい! そんなお悩みを持つあなた!」と呼びかけて動画を添付しました。
動画を再生すると、すでに背中をこちら側に向けて丸まったカブトガニの姿が。図鑑などで見る硬くて真っすぐな姿とは違い、とても柔軟に曲がっています。とってもかわいい。
そんなカブトガニの中央にある白い部分。丸まったことで露出した場所をやさし~くふにふにとなでるスタッフ。すると……?
優しく、優しく、ふにふに
丸まっていたカブトガニが、みるみるうちにピンとなりました。この知識を知っておけば、いざという時にカブトガニを真っすぐにできますね。
真っすぐになりました。見慣れたカブトガニだ!
「前体と後体の間の白いところは心臓が通っていてカブトガニの弱点になっています」「そこを優しくふにふにするとこの通り!」「今日からあなたもカブトガニ使いの一員です」とカブトガニ博物館は解説しています。
最初は柔らかいおなか側を守ろうとしたカブトガニでしたが、弱点の心臓付近を触られたことで、今度はこちらを守ろうとして体を伸ばした模様です。
博物館お墨付きのカブトガニを真っすぐにする方法。あまりにもピンポイント過ぎるライフハックにSNSでは、
💬「ありがとう、解決したよ…(使う)機会がねぇわっ」
💬 「カブトガニってこんな動きするんですね」
💬 「そんな悩みがあっただなんて気づけなくてごめん」
💬 「ちょうど目の前のカブトガニをまっすぐにしたかったんだ。助かった」
と大ウケです。
また現役漁師とみられる人からは「漁でカブトガニがかかってしまったときに、曲がったまま帰すのが申し訳ないと思っていたので助かった」という声も。ちゃんとライフハックとして役に立っています!
なでるのをやめると、また丸まってしまいました
カブトガニ博物館にお話をうかがいました
──「体を曲げたカブトガニをまっすぐにする方法」は、カブトガニ博物館の職員の方が発見したのでしょうか? それとも、もともと知識として受け継がれてきたものなのでしょうか?
それはもちろん、人類がカブトガニと出会った太古の昔から知識として受け継がれてきたものだと考えています。
真面目に回答すると、カブトガニの防御反応を利用しただけの方法なので、過去にカブトガニの研究を行った人が発見したのか、はたまた海辺で見つけたカブトガニを観察していた一般の人が発見したのか、どなたが発見してここまで受け継がれてきたのかはわかりかねるというのが正直なところです。私は先輩学芸員と館長から教わりました。
──「ふにふにする」場所の触感は、どのようなものでしょうか?
触感の近いものについて学芸員内で協議を行ったところ、「スマートフォン用タッチペンの丸いところ」「室内飼いの猫の肉球」「大きめの魚の目玉」との意見が出ました。少し張りがあって柔らかいというような感じです。
──触ってみたいです! なぜ、カブトガニは体を曲げるのでしょうか? 弱点を露出させているのは、信頼の証なのでしょうか?
あの状況で体を曲げた理由としては、「全身を丸めて防御姿勢を取ろうとした」だと考えられます。撮影が始まる直前に“海水の入った入れ物から取り出されてタイルの上におかれる”といった動作を挟みましたので、カブトガニとしては体を丸めて腹側の弱点である鰓書(※)を隠し、防御をしたつもりだったのでしょう。
カブトガニは学習するほどの脳を持たないため、どれだけ懸命に世話をしても信頼の証を見せてもらえるなんてことは起こらないと思います……。
※鰓書(えらしょ)=蓋板に守られている呼吸器官。
──「ピンポイントすぎる知識だけど、いつか使う機会があるといいな」といったコメントなど、投稿を見た人からは興味が沸いたという反応が多く寄せられていました。今のお気持ちはいかがでしょうか?
ピンポイントすぎる知識がいつか日常的な知識になるように、カブトガニの保護・繁殖により一層励んでいきたいと思いました。いつかまた、昔のようにカブトガニが日常の風景の一つとなるように頑張ってまいります。
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体を丸めるという行動は、ひっくり返ってしまった時に身を守るための行動でした。普段あまり目にする機会のないカブトガニの意外な姿と、丸まってしまった理由に、SNSでは「防御のために体を丸めると弱点があらわになるとはなんと不憫な」「な、なんでそんな大事な臓器を隙間に持ってきたんだ!!」といった声も。
知れば知るほど不思議な古代生物・カブトガニ。笠岡市立カブトガニ博物館では、より詳しい展示や実際に生きているカブトガニの姿が見られます。この機会に見に行ってみると、新しい発見があるかもしれません。