• electionjp badge

「投票するのに1万円かかる」人がいること、知っていますか?

海外に暮らす日本人が投票をする制度「在外選挙」。大使館などの在外公館に直接行くか、郵便や国際宅配便で投票用紙を送付するふたつの方法があるがハードルは高く、インターネット投票の導入が議論されている。

投票するのに1万円かかる。泊まりがけで投票に行く。投票するのに片道数時間かかるーー。そんな人たちがいること、ご存知ですか?

「困ってることは、たくさんあります」

そうBuzzFeed Newsの取材に語るのは、「海外有権者ネットワークNY」の竹永浩之さん(53)だ。

海外に暮らす日本人が投票をする制度「在外選挙」。大使館などの在外公館に直接行くか、郵便や国際宅配便で投票用紙を送付するふたつの方法がある。

しかし、そのハードルは決して高くはない。竹永さんはいう。

「 国によると思うのですが、アメリカだと安全に速く送ろうと思えば、投票用紙請求と投票用紙郵送の2回を合わせて1万円は超えると思います」

費用面だけではない。郵便や宅配のシステムが日本ほど高度ではなく、到着が遅れてしまったり、そもそも届かなかったりすることがあるという。

「日本に住んでる『郵便はキチンと届くもの』と思いがちですが、他の国ではぜんぜんそんなことないんですね。遅れて当たり前、みたいな国が実際多いようです」

実際、今回の選挙でもある男性の「一票が無駄になった」というツイートが話題を呼んでいた。機械が住所を誤認したせいで郵送ができずに間に合わなかった、というケースだった。

「往復500キロドライブ」も

「郵便投票のスピードや確実性に関しては、滞在国の郵便システム頼り、という部分が最大の問題だと思いますし、私たちにも日本政府にも改善はできません。基本的にはどうしようもない」

それ以外にも、不便は少なくない。

海外で投票するために必要な「在外選挙人登録」には数ヶ月かかるが、そのことを知らずに間に合わなくなってしまうケースもある。

郵送ではなく直接投票しようにも、在外公館が遠すぎるために片道数時間、あるいは泊まりがけて投票に行く人もいる。

さらに、最高裁判所裁判官の国民審査ができないという問題点もある。これについては、2019年5月にニューヨークに暮らす映画作家・想田和弘さんらが起こした裁判で、東京地裁が違憲判決を下している。

Twitter上にも「一週間以上かかった」「往復500キロドライブ」「間に合わない」などという様々な声が相次いで上がっている。

ネット投票は2022年から?

こうした問題点ゆえに、在外選挙の投票率は決して高くはない。

18歳以上の在外邦人は100万人以上いるが、2017年の衆院選では21%だった。竹永さんは言う。

「在外選挙の郵便投票はあまりにもハードルが高すぎます。日本政府が導入を目指している在外選挙のネット投票をどうしても実現してもらいたい」

「それに、公告活動が地域のフリーペーパーへの掲載中心という問題点もあります。現在、海外有権者にとっての最大の日本語メディアはネットです。そのネット上での在外選挙に関する公告活動があまりにも少ない。公告の場を紙からネットにシフトしてほしいです」

総務省は、マイナンバーカードを使った投票システムの実証実験を今年度中にも行う予定だ。2022年の次回参院選の導入を目指している。

ただし、マイナンバーカードは、導入された2015年10月5日時点以前に国外に転出し、日本国内に住民票がない人には番号が与えられていない。このため、長期在住者は日本に一度住民票を戻す必要が出てくるなどの課題もある。

それでも、カードを持っている人の利便性は向上するはずだ。

「海外有権者にとって、日本の政治に関われる機会は限られてます。そう考えると、在外投票は直接的に関われる貴重な機会です。国民は選挙によって国の形を決めていくわけですから、海外にいてもそのプロセスに参加したいですし、国民である限り、参加できて当然だと考えています」

海外有権者ネットワークではこうした問題点をこれまでも政府に訴えてきたほか、ニューヨーク支部では、海外有権者の投票サポート活動も行なっているという。詳細はTwitterから。